131.師弟システムとその効力
(よっしゃ、アナウンスゲット!これ聞くだけで残業が無駄じゃなかったって気分になるなぁ)
鳴り響くワールドアナウンスに浸りながら、入眠時間を後にずらした甲斐があったのだと、しみじみ湧いてくる喜びと安堵に胸を撫で下ろす。
そんな俺の姿を微笑ましそうに見つめるアレンは、祝福の言葉と共にカードを差し出す。
「Dランク、おめでとうございます。更新作業も終わりましたので、カードをご返却致しますね」
「ありがとう!」
俺はウキウキする心を抑えつつ、早速ギルドカードを確認する。
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NAME:ソーイチ
冒険者ランク E(1,150/5,000)
戦闘職ランク G(0/50)
生産職ランク D(5,110/20,000)
(登録ギルド:司書・農業・付与)
所属クラン:ユーザータクティクス (20/20名)
クランランク E(2,600/5000)
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(カードで確認したら、昇格したぞ〜って実感出てくるな・・・。って次のランクまでに必要なポイント上がりすぎやろ!?次のランクアップには今日までの3倍必要って・・・、ってあれ?逆に考えたらリアル3日後には次のランク行けるかもしれんって事か?)
ギルドカードを確認した俺は、まずはDランク達成について改めて喜び、その後次のステージまでの道のりを確認、その遠いようですぐに達成できそうな塩梅に少しホッとする。
ただ、いつまでも未来の話ばかり気を取られてはいられないとアレンに、
「ところで、Dランクになったら出来ることって何か増えるん?」
と、今回得たものについて尋ねる。
「よく聞いてくださいました。Dランクで解放される機能はスゴイですよ!」
「そ、そんなにすごいんか」
自信満々のアレンを見て、俺はゴクリと唾を飲み込む。
俺の反応に気を良くしたアレンは、
「ええ。Dランクからは、【師弟システム】が解放されるんです!」
明るい声で、その機能の名前の読み上げた。
「【師弟システム】!?なんか凄そうな名前やな。一体どんなシステムなん?」
俺はワクワクしながらメモを取り出す。
「ご説明しましょう。この【師弟システム】は、言葉通り誰かと師匠になったり、弟子入りすることができるようになる機能となっております」
「師匠に弟子か・・・。それって戦闘系のギルドにある訓練のやつとは違うん?」
「全然違いますね。訓練は数時間ほど師匠役から直接指導を受ける必要がございます。ですが【師弟システム】ですと、師匠や弟子に登録していれば、たとえ渡り人様が元の世界に帰っても、契約期間中は効果が持続するんです」
「ほぇ〜、えらいお手軽なシステムなんやね。で、肝心の効果はどうなん?」
「それはですね・・・」
そこからアレンは【師弟システム】について身振り手振りを織り交ぜて説明を始める。
少し長いのでその内容をまとめていくと・・・
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①Dランクの生産者はそれぞれ師匠と弟子を一人ずつ持つことが可能(対象者生産ランクD未満でも可能)
同じ人物と弟子・師匠の相互登録も可能
②期間は双方の合意により1日〜1週間契約が可能。契約解除後はゲーム内時間で12時間クールタイムを設けられており、その後は自由に再契約が可能
③弟子のメリット:契約中はスキル使用時に獲得出来る熟練度を、師匠のスキルレベルと同じ分獲得出来る。(大体スキルレベル差が1毎に2%程アップ)
※ただし弟子側が既に習得しているスキルに限定される。
④師匠のメリット:契約中に弟子が獲得したキャラ・ジョブ経験値の5%を入手(弟子側の獲得経験値は減少しない)
※ただし師匠側が持っていない系統のジョブ経験値は獲得不可
※同じ系統のジョブならジョブの上下は関係ない
EX:師匠が見習い農家、弟子が農家の場合、弟子が稼いだ農家のジョブ経験値の5%は、師匠の見習い農家に加算される
⑤師弟契約を結んでいた際、弟子が起こした行動について師匠側はその貢献度の一部が加算される
※ただし悪評も師匠に加算される為、弟子を選ぶ時は信頼できるか注意が必要!!
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(これ効果やばすぎやろ!師匠になったらオートで経験値入るし、弟子はスキル育成っていう地味にしんどい作業が2〜18%減るって効果がバグレベルやろ。しかも互いに師匠と弟子を登録も出来るとかペア狩りプレイヤーにもありがたいし・・・)
【師弟システム】、それは今までのレベル・スキル育成の常識を変えることになるかもしれない。
極端な話、現在MJO内で最もレベルの高いプレイヤーのアーサーの師匠に万が一なることが出来れば、何もしなくてもドンドン経験値は入ってくる。逆にスキルさえ持っていれば、そのスキルのトップ層の弟子になることで同じ水準までかなりショートカット出来る。
「マジで【師弟システム】ヤバすぎやな。これDランクで解放は流石に早すぎへん?」
「ははは、気持ちはわかります。ただソーイチさん含めた渡り人様達と比べて、私達の得られる経験値はかなり少ないので低ランクからでも成長できるように解放してるんですよ」
「ああ〜。成長率かなり差があるもんな。そりゃ早めに解放して全体を底上げする方が良いって訳か」
「それに弟子側をしっかり信頼してないと悪評もついちゃいますしノーリスクって訳でもないですしね」
「評判問題か・・・。もしかして【師弟制度】ってほとんど身内しか使ってないん?同じジョブのが効率良いっぽいし、家業の引き継ぎで利用すると便利っぽいし」
「一般の方はそういう使い方が多いですね。それ以外ですと冒険者や騎士の方々は所属するクランや騎士団内で結ぶケースが多いですね」
「あぁ、元から信頼してないと入れへんコミュニティでは、そういう使い方になるか」
システム一つ取ってみても色々な使い方や理屈があるのだと感心する。
「でも成長率の高いオレ達渡り人にとってはエグい効果っぽいし、それを先んじて使える様になったんはマジで嬉しいわ」
「確かに農業ギルドの受付としても、信頼できるソーイチさんが一番乗りというのは安心出来ますね!」
「そ、そう?じゃあ期待に応えられる様に、ドンドン弟子入り・師匠役になっていくで」
アレンからの信頼の言葉を受けた俺は、顔を仄かに赤らめながらもそう宣言するのであった。
次回は6月28日(土)午前6時に更新予定です。
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