128:結果報告と黒百合の秘密
「ただいまです、リーダー。今回もソーイチさんがやりましたよ!」
「称号もPPもたっぷりゲットしてきたで!」
帰宅早々、ねぎらいの言葉をかけるユサタクに対し、俺達は少し照れながらも目的達成とワールドアナウンス連打を誇る。
「そうか!アナウンスを聞いたから、探索大成功したのはわかってたんだが、直接聞くと感慨深いな」
「ははは。でも、ぶっちゃけ俺が凄いんじゃなくて、プロス達や【オモイカネ】のサポート力のおかげやけどな」
「すごかったんですよ!モンスターは私達に経験値が入るように立ち回りながらの瞬殺ですし、見つからないシンボルを、データを駆使して見つけ出したり。お二人とも護衛としても情報屋としてもサイコーでした!」
「それに新スキルの検証とはいえ、初級MPポーションまで奢ってくれてマジで感謝やで」
俺とモチョは如何にプロスと黒百合がサポートしてくれたのか、ユサタクに熱弁する。
「マジか!?護衛だけのつもりで頼んだのに、そこまでしてくれるとは・・・。これはポーション代とプラスα分の報酬を増やさないとバチが当たるな」
「いやいや!?増額なんて不要ですよ!」
「そうね。ポーションはソーイチさんの新アーツの検証データと交換だからいらないわ。それに出発前に【見習い記者】の情報の一部も教えてくれたもの。こちらこそ、これ以上貰ったらバチが当たるわ」
「はぁ〜。互いに成果を譲りあって何が何やら。とりあえず確認も兼ねて、今日の成果や冒険譚を聞かせてくれ」
「おうよ。まずは【見習い記者】がレベル3になった時に・・・」
ユサタクから本日の成果報告のリクエストを受けた俺は、ジョブや称号・シンボル関連など重要情報に関しては道中のメモを合わせて正確に、フィールドでの戦闘や苦労・プロス達の活躍については少しドラマチックに脚色し報告をした。
「出現情報からのシンボル発見か。ソーイチの話は少し大袈裟に盛ってるようだが、本当にプロス達あっての成果のようだな。リーダーとして改めて言わせてもらう。ありがとう」
「うひゃぁっ!頭上げて!お願いします」
「そうよ、助かったのは私達もよ!」
改めて頭を下げるユサタクに、あたふたする2人。その様子をあえてスルーし、話をシンボル争奪戦に話題を変える。
「それより解放特典の称号はヤバいな。付け替えできるかはわからんが、シンボルを最初に解放するやつは転移枠が増えるのと大差ないぞ」
「ですよね〜。一応、明日の朝一に検証してから即販売の予定ですし、昼頃にはシンボル探索隊が組まれるかもしれません」
「はやっ!?さすが情報屋、売り時は逃さんな」
「もちろんよ。それよりソーイチさん、【泉のシンボル】以外の情報って持ってない?」
「お高く買い取りますよ!」
「残念ながら、持ってないな〜。そっちこそ持ってないん?」
「ないですね〜。ただシンボルを解放した事で、何か変化が起きないかな〜とは期待してます」
「ゲーム的には称号を【シンボル解放者】にセットした上で聞き込みってのもアリかもね」
「あぁ〜、ゲームあるあるやな。俺も時間あったらやってみたいけど、もう寝る時間やし情報収集はそちらに譲るわ」
「だな。という訳で何かあったら売ってくれよ」
「了解です!お得意様価格でサービスしますよ!」
「ははは、期待してるよ」
シンボル関連のお話は、【オモイカネ】への丸投げで幕を閉じた。
その後は攻略関係なしの雑談に花を咲かせたのだが、ふとユサタクは不思議そうな顔で黒百合に尋ねる。
「そう言えば今日の黒百合はいつもと違うな」
「確かに他のゲームでご一緒した時は寡黙なキャラだったと思うんですが、キャラ変したんですか?」
「キャラ自体は今まで通りよ。ただ今日はソーイチさんと一緒だからね」
「え?どういう事?」
俺がいるだけで、寡黙なキャラが頼り甲斐のあるお姉さんにキャラ変するのが不思議で問い返す。
すると、
「ふふ、実は私、ソーイチさんの大・大・大ファンなのよ!」
「ええ!?そ、そうなん?」
と、黒百合は大きな声で大ファンだと宣言した。
「ええ。作品は小説・アニメ両方とも通常・限定両方買い揃え、掲示板では布教活動までするガチのファンよ。だから自分のキャラを投げ捨てて、ついついしゃべりすぎちゃったわ」
「確かに黒百合ちゃんって普段は無骨な無口キャラなのに、今日は現実みたいにいっぱい話してたもんね。変だなぁって内心思ってたけど納得しました」
「・・・というか掲示板で布教するガチのファン?それにお姉さん口調のその話し方はどこかで見たような・・・」
何か思いつくものがあったのだろうか?ユサタクがぶつぶつと呟く。
「そんなのどうでもいいじゃない。それより、ソーイチさんの護衛なら他の用事を投げ出してでも参加するから、またの依頼よろしくね」
「黒百合ちゃん、クランの仕事は投げないで〜〜〜」
「ははは。黒百合ちゃんの強さは折り紙付きやし、そっちが良いならまたお願いするわ」
「ええ、気軽に依頼してね」
「お、おう」
そう言ってフルフェイス型の兜を外し、素顔を晒した黒百合は俺にパチっとウインクをする。俺は突如美人さんのアピールにドギマギしてしまう。
「黒百合ちゃん、フェイスオフまでするとはやりますね〜」
「うぅ〜。ライバル登場でヤキモキしますぅ」
「もう、からかわないで!それより私達はこれで失礼するけど、最後にソーイチさん」
「どないしたん?」
「ぜ、ぜひ!サインお願いします!」
「あっ!私も欲しいです!」
「サ、サイン?正直さっきまで一緒に冒険してた戦友にサイン書くの、ちょっと気まずいんやけど・・・」
「ははは。良いじゃないか。今後は他のクランとも関わる機会も増えるし、こういう機会も増える。練習がてら書いてやれよ」
「そうですよ!あと、ついでに私もサイン欲しいです」
「あ、モチョさんズルい。私も欲しい!」
「俺にも書いてくれ〜〜!」
「あぁ〜!こうなったらとことんやるで。みんな色紙を持って並んでや!」
「「「「は〜い」」」」
こうしてキラキラした目でサインをねだる黒百合とプロス、そこにユサタクやモチョが囃し立て、更には商談を邪魔しないように離れて見ていた他のクランメンバーも手を挙げた為、野外での大サイン会が開かれたのだった。
次回は5月31日(土)午前6時に更新予定です。
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