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120.【見習い記者】転職と遅刻ギリギリ

完全に不意打ちといえるタイミングで流れたアナウンスに頭の中が真っ白になりながらも、手は勝手に動き称号名の公表にNoを選択する。


《ソーイチ様がプレイヤーで初めて称号【〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇】を獲得致しました》


称号名は隠されたまま鳴り響くワールドアナウンスに、握手後からの俺の挙動を訝しんでいたアマネの目に驚きの感情が色づく。

ただ住民(NPC)であるルーカスにはワールドアナウンスなど聞きえる筈もなく、握手をしたまま空いた方の手をバタバタさせる俺を見て少し引き気味に事情を尋ねてきた。


「ソ、ソーイチ君?何か挙動が不安定なのだが、何かあったのかい?」

「す、すいません。社長と握手をした瞬間、天の声(アナウンス)で【名誉ノア・タイムス記者】の称号と【見習い記者】のジョブが解放されたと告げられまして・・・」

「なんと!!それは本当かね!?」

事情を聞いたルーカスは、喜び半分、驚き半分な声色で聞き返す。


「もしかして、この2つについてご存知ですか?」

「ジョブの方は我が社に就いてる者は沢山いるよ。ちなみに【司書】のジョブを所持した状態で、【メモ】スキルの一定以上の習熟、更には新聞社での貢献によって現れるジョブだね」


「おお、これって司書系統のジョブなんですね」

「そりゃあ知識を広める役割を持つ者は司書も記者も同じだからね」

「確かにそうですね」


「それより称号の方だが、そちらは生憎初見のものだね。ただ君が手に入れたタイミングや称号名から察するに、ノア・タイムス社長であるボクが認めた人間に与えられるのではないかと思うよ」

「なるほど。だったら世界からのお墨付きで社長に認められたみたいで照れますね」


ジョブの出現条件や称号獲得の法則の私見などの情報を忘れないように頭のメモに刻み込む。だが、それ以上にルーカス自身が俺の事を認めていると言う発言に俺は感動し、この事を心のメモへとしっかりと刻み込んだ。


「社長はジョブについては色々ご存知のようですので色々と聞いてみたいのですが、生憎私の予定が詰まっておりまして・・・。勝手な話で恐縮なのですが、日を改めて相談に来ても良いですか?」

「ああ、もちろん・・・。ってそうだ!ソーイチ君、君の【メモ】のレベルは幾つだい?」

YESの流れだったのだが、何かを思い出したのか唐突にスキルレベルについて尋ねられる。


「えっと、今日9に上がった所です」

「そうかい。それなら【メモ】のレベルが補正なしで上限に達した時に改めて来たまえ。そしたら【記者】関連の情報をみっちり教えてあげよう」

「ほ、本当ですか!?いつになるかわかりませんが、必ず伺いに参ります」

「ああ。楽しみに待っているよ」

そう言って鷹揚に笑いエールを送るルーカスの言葉を胸に刻み込んだ俺は、アマネを引き連れてノア・タイムスを後にするのだった。

「お疲れ様です。30分弱の間に色々ありましたね」

「ホンマにな。しかも目上の相手やから慣れてへん標準語でやり取りせなあかんし、肩も凝りまくりや」


「ふふ、標準語のソーイチさんも新鮮で素敵ですよ」

「もう!揶揄わんといて」

普段と比べてお堅い喋り方に苦労したと伝えるも、アマネに揶揄い混じりで褒められる。


「いいじゃないですか。って、それより待ち合わせ時間まで後少しですが、先に【見習い記者】に転職しに行かないと」

「せやな。ジョブ関連は転職して初めて初回特典のワールドアナウンス流れるし、そっち優先にせなあかんな」


「ええ、手間取ると待ち合わせに遅刻するかもしれませんが、【見習い記者】のジョブは情報屋の【オモイカネ】の面々なら血の涙を流して欲しがりそうです。きっと許してくれますよ」


「遅刻前提で考えるのはあかんけど、最悪この情報を詫びの品にするか」

「ですね!」

とはいえ少しでも遅刻の可能性を減らすべく、俺達は教会前へと転移、そして女神像の前に佇むクリスへ事情を簡単に説明し大急ぎで転職の手続きをお願いした。その結果、


《ソーイチ様がプレイヤーで初めて見習い記者に転職いたしました》

MJOの世界に新たなジョブの誕生を知らせるワールドアナウンスが響き渡った。


(おっしゃ!って喜んでる場合じゃないな。急いで農地に戻らな)

「クリスさん、今回も転職でお世話になりました。忙しなくてすいませんけど、これで失礼します」

「ええ。次来られた時はゆっくりお茶でも楽しみましょうね」

「ええ、お菓子持参してお邪魔します!」

微笑みながら見守るクリスを背に、俺達は大急ぎで待ち合わせ場所のホームへと転移を行った。

「ふぅ〜。時間3分前、マジでギリギリやったな」

「ですね。ほら、モチョや護衛の2人はもう到着してるようですよ」

アマネの言葉に当たりを見回すと、確かにモチョや【オモイカネ】のメンバーであるプロスと黒百合の姿が見えた。

俺は挨拶のために歩いて向かうと、それ以上の勢いでプロスがこちらへと走り寄ってきた。


「遅くなって悪かっ・・・」

「ソーイチさん!今のアナウンス連打ってなんだったんですか!?【見習い記者】とやらが関係あるんですか!?」


新情報に興奮が止まらない【オモイカネ】の副リーダーのプロス。理性が焼き切れたのか、こちらの謝罪の言葉を塗り替える程の量の質問攻めが押し寄せてくる。

その濁流はもう1人の護衛の黒百合が頭を叩くまで止まることはなかった。

次回は3月29日(土)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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