119.ルーカス社長からの呼び出しと一つに区切り
【瞑想】実験のアレコレが決まり、少し談笑をした後、モチョとユサタクは畑仕事をする為に2人は席を立った。1人になった俺は、カップに残った紅茶を一気に飲みほすと、待ち合わせまでの時間潰しをどうしようかと考える。
(あと3時間ちょいか〜。まず1冊だけ本読んで、その後に回復分を畑仕事と充電に回したらええ時間になるかな?)
こうして大雑把な予定を頭の中で組み立てた俺は読書を楽しんだり、回復したMP・STを使い魔力電池の充電や畑仕事に勤しんだりしていた。
だが考えていた予定を一通り消化し、時刻を確認すると、
(う〜ん、待ち合わせまで1時間ちょいか・・・。もう1冊読めん事もないけど、時間に追われながら読むのも忙しないよな)
と、中途半端な時間の余裕がまだ残っており、逆に何をするか迷う事となった。
ピピッ!
そんな俺を神様は見ていたのだろうか?暇になった俺にアマネからコールが入る。
『ソーイチさん、今大丈夫ですか?』
『1時間ほど手持ち無沙汰になったところや。なんか用事でもあるん?』
『実は先ほどウチのクランの売店にノア・タイムスの社長さんが来られたのです。それで何やらソーイチさんにお伝えしたい事があるとの事です』
『マジで!?一体なんやろ?』
『それは私にも・・・。ソーイチさん、今ギルド農地ですよね?私新聞社にも登録済みなので、良かったら送り迎えしますけど』
『ええの?地味に遠いからマジで助かるわ』
こうして俺は迎えにきたアマネと共にルーカス社長の待つノア・タイムスへと転移した。
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「ソーイチ君にアマネ君、急に呼び出して悪いね」
「いえ、ノア・タイムスさんには色々お世話になってますし気にせんといてください。それより俺に伝えたい事があると聞いたんですけど」
お互いの挨拶もそこそこに、さっそく本題は何かを尋ねる。
「実はね、【渡り人語】のスキルを取得した社員がいると以前伝えたと思うんだけど、彼らのスキルレベルが予想以上に早く上がってね。少数部数の発行なら明日からでも始める事が出来そうなんだ」
「おお!それはおめでとうございます。俺も明日から数日間、元の世界に戻る予定でしたので丁度いいかもです」
「そうだったのか!それは良いタイミングだったね」
「ですね。それより渡り人用の新聞開始って事は、俺が執筆している要約の販売は終わりですかね」
「新聞と要約では需要が違うし、今まで通りの販売価格なら続けてもらっても大丈夫だよ」
「本当ですか!?それなら俺達は今までの半分くらいの部数を販売していこうかと思います」
「半分に減らすのかい?今まで通りの部数でも我々的に問題ないのだが」
いきなり売る量を半分に減らすと宣言した俺に対し、心配そうに問いかけるルーカス。
「正直言いますと、朝からポーション飲みながらの【コピー】はしんどいと思ってたんです。ですので、これからは部数を絞って発行していこうと思います。アマネ、それでええよな」
「販売縮小の件、了解です。後はよろしければ、渡り人用新聞の開始を私達の売店で宣伝しましょうか?」
「ええ!?それはありがたいんだけど良いのかい。正直金欠気味だし広告料あまり出せないよ?」
「こちらから言い出したんで無料で結構です」
「タダって・・・。何故そこまでしてくれるんだい?」
「そりゃ1週間弱とはいえ、ノア・タイムスさんにはお世話になりましたからね」
「そうそう、要約を【コピー】しまくったおかげで、【見習い司書】からのランクアップもかなり早まったし」
ルーカスは俺達の事を聖人か何かのように感じているようだが、お世話になってるのはお互い様であるし、渡り人用新聞の宣伝くらいはやってあげたいのだ。
「そこまで思ってくれてたなんて感動したよ!」
「そこまで喜んでくれたのならこちらも嬉しいですよ」
「何か別のものでお返ししたいんだが・・・。そうだ!アマネ君、良かったら君達の売店でノア・タイムスを売ってみないかい?」
「商品が増えるのは私達も助かりますけど、ノア・タイムスさんは配達メインだったと記憶してるのですが」
「今まではそうだね。ただ今回のターゲットである渡り人は常にこの世界にいるとは限らないし、持ち家比率も低いよね」
「確かに」
「ああ〜。だから配達とは別に、売店を追加で用意するという訳ですね」
「ああ。そして渡り人にアピールするなら、既に要約を販売してる君達の売店がベストだと思うんだよね」
「言われてみればその通りですね」
確かにまだゲーム内時間で10日も経過してない現状、農家プレイヤーか一部のトップ層くらいしか住居は持っていないだろう。そんな状況で配達オンリーでやっていくには買い手が少なすぎる。
だからこそ、知名度や取り引きの実績もある俺達に任せるのは理にかなっているし、ウチにとってもプレイヤー・住民問わず、新聞社との繋がりをアピール出来るのは大きい。
「で、どうだい?お礼も兼ねてるし、費用方面でも優遇するよ」
「う〜ん。お気遣いはとてもありがたいのですが、話が大きくなりすぎて私だけじゃ決めかねます。一度クランメンバー達と相談したいのですが、お時間頂いてもよろしいですか?」
「もちろんさ!」
「では、本日中にお返事しますので、よろしくお願いします」
「ああ。良い返事を期待しているよ」
美味しい条件なので、すぐにオッケーを出すと思っていたのだが、アマネの慎重さには感心する。ルーカスもそう考えたのか、簡単な契約条件をメモにまとめ、嬉しそうに渡したのだった。
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「いや〜、長くなっちゃってごめんね」
「いえ、興味深いお話や契約など勉強になりました」
「ははは、契約の成否は関係なく、何かあったら是非とも我が社を頼ってくれたまえ」
「ありがとうございます」
その言葉と共に固い握手を互いに交わしていると、
ー派生職【見習い記者】が解放されましたー
ー称号【名誉ノア・タイムス記者】を取得しました。報酬としてMPが5ポイント上昇します。
また、この称号はプレイヤーでは初めての獲得になりますが、称号名は公表しますか?ー
と、新ジョブと称号獲得を告げるアナウンスが頭に鳴り響いた。
次回は3月22日(土)午前6時に更新予定です。
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