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116.娯楽本からのAI作品の未来考察

今回登場するAI作品系の解説は作者のイメージを基礎に執筆しております。

差違はあると思いますが、そこはフィクションとして楽しんでいただけたら幸いです。

モチョの転移により再びギルド農地に戻った俺は、邪魔にならなさそうな場所に【木漏れ日の安楽椅子】を設置する。


「これからは宣言通りにまったり読書と洒落込むんやけど、モチョはどうする?」

「そうですね・・・。そうだ!ソーイチさんの果樹園の収穫、やっちゃって良いですか?」


「ああ、そろそろ1回目の収穫時間やっけ?別にええよ」

「ありがとうございます!これで私のレシピにスイーツ系が追加されそうです!」


「ええやん。じゃあ試作品できたらちょーだい」

「もちろんオーケーです。アイデアは頭の中に溜まりまくってるんで、収穫でき次第すぐお渡ししちゃいますよ!」


「じゃあ楽しみに待ってるわ」

「ええ。待ってて下さいね!」

そう言うと、モチョは光に包まれながら目の前からいなくなった。おそらくは俺の農地で収穫可能になるのを今か今かと待ち侘びるのであろう。


「楽しみ増えたし、それまで読書と洒落込むかね」

そう呟いた俺は図書館で借りた本の中から娯楽用の1冊を手に取った。


タイトルは【一夜の奇跡】

読み進めた印象としては、おそらくシンデレラをモチーフにした作品なのだろう。だが所々で登場する物の名称が違っており、上手くMJOの世界に馴染ませた作品という印象だ。


1時間後、全てを読み終えた俺は読後の満足感に浸りながらも

(どこにもマーク無いな〜。流石にゲーム内の本はAI作っぽいな)

という感想を抱いていた。


AI作品といえばどこか無機質だったり、展開や文法が無茶苦茶とのイメージだったのは昔の話だ。

AIの進歩と共にそのクオリティもどんどん上がり、今では見分ける事がとても難しくなっている。

そこで【H(ヒューマン)マーク】という、著者が実在の人物だと示すマークが考案されたのだが、この作品にはどこにもそのマークは付いていなかった。


(マーク無しで作品提供って線もあるかもしれんけど、流石にMJO程のビッグタイトルでそんな無欲な作家もおらんよな〜)


この規模のゲームに作品を提供してノンクレジットというのは、有名・無名に関係なくありえないだろう。


(まあ、ノアの町だけでも蔵書が4桁はあるしほとんどがAI作品になるか)


一通りの考察を終えた俺は、改めて【一夜の奇跡】を読み直し、

(今回の作品はパロディーの割合強いし、キーワードを入れて出力したオーソドックスなAI作品やな)

という感想に至る。


多分だがサービス開始に伴い、大量の本を用意する為に、オーソドックスな手法で本を生み出してきたのだろう。


こうしてメタ的な思考を広げつつも、次の本に手をのばす。そのタイミングで

(そういえばMJOって個々のNPCにも超高度なAI入ってるよな。実際プレイしてても人間と変わらん思考力を持ってると思うし。その住民が本書いたら、従来のAI作品とは別次元の作品が生まれるんちゃうか!?)

という疑問が頭に浮かんだ。


『人間は考える葦である』とは昔のお偉いさんが『人間』を表現した一文である。だが現在のAIは己で考える能力を持ち、最先端のAIを使用するMJOでは更に人間性まで手に入れつつある。

そんな人間味あふれるAIからは、人間が意図しないAIの意志で生まれる作品もあるかもしれない。


(マジか!?AIって頑張ればそこまで行くもんなんか!?同業者としてめっちゃヤバく感じるけど、読書家としては、どんな作品が生み出されるのか好奇心が抑えられへん!)


沸々と湧いてくる相反した感情を抑えきれず、気がつけば傍に置かれていたサイドテーブルに向かい一心不乱に自分の情熱を書き連ねる。


(これって宇宙とか異世界とか世界(ハコ)だけ用意して、後はAIの自主性に任せたら、その世界特有の本が無限に出来るんちゃう!?これに人間には無理なレベルの時間加速を組み合わせたら!?ヤバい、ヤバすぎるやろ!?)


作家としての危機感と読書家としてのワクワク感を白紙の紙に叩きつける事30分、10枚を超える紙束を生み出したところで、やっと現実へと戻ることが出来た。


(ふぅ〜。久々に興奮する題材に出会えたせいか、筆が止まらんかった。当初の目的のまったりとは真逆になってもうたけど、良い気分転換にはなったわ)

休養とはいえない熱意で書き上げた原稿を前に苦笑いを浮かべるが、物書きの魂に従いペンを動かした一時はただ休む以上の満足感を得る事が出来た。


(正直MJOの住民と触れ合ってなかったら、この思考も得ることはなかったかもな〜。改めてこのゲームやって良かったわ)

ゲームを始めてまだリアルで24時間も経っていないが、MJOをプレイする中で自分の価値観のステージが一段上がる感覚を感じたソーイチであった。


tips

Hマーク(ヒューマンマーク)

AI技術の浸透により、AI作品も商業ベースに乗るようになった事で採用された。

書籍等ではHマークの横に著者名が記される。

ゲーム内での書物の場合は世界観をなるべく壊さないようにHマークのみとなっているが、Hマークをタッチすると著者名がポップするようになっている。



ゲームプレイヤーではなく、作家としてのソーイチが溢れ出たみたいですね。

次回からはゲームプレイヤーに戻るのでご安心ください。


次回は3月1日(土)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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