110.擬似的なスキルレベル上限と本日のスキル講習開始
(おお!【メモ】レベル9来たああ!!確か初級スキルの上限って10やしボーナス込みで上限到達やん!?)
スキルのレベルアップのアナウンスを聞き、睡眠ボーナス込みとはいえ初めてのスキルレベルの上限到達にテンションがあがる。だが、
(あれ?そういえばボーナス込みとはいえスキルの上限になったけど、今からコピーする分ってスキルの熟練度に含まれるんかね?)
と、素朴な疑問が思い浮かんだ。
「アマネ〜、聞きたいことあるんやけど〜」
「はい、どうしました?」
俺の呼びかけに畑仕事を中断し振り返るアマネ。
「【メモ】スキルが上がってボーナス込みで上限になったんやけど、今から追加でコピーする分って本物のレベル10にレベルアップする為の熟練度貯まるん?」
そう問いかけると少し考えた末に返答があった。
「マスクデータなので断言は出来ないですが、ベータ版では検証の結果、貯まるようになっていたはずです」
「おお!数時間分とはいえ熟練度が無駄になるんは勿体無いしな。ちゃんと貯まるっぽいし安心したわ」
「あくまでベータ版では貯まるってだけですからね!違っても恨まないで下さいよ」
「そんな事で恨まんて。それより教えてくれてありがとう!」
「いえいえ。どういたしまして」
「じゃあ俺は講習の予約時間迫ってきたし、コピーに戻るわ」
「了解です。終わった分はポーション置いてた机の上に置いて下さいね」
「オッケー」
アマネにお礼を告げた俺は、覚えたてのスキル【5枚刷り】とポーションを駆使し、前半に作った紙束を超える勢いで量産し続けた。ただ流石に限界はあり、
「うっぷ。もう飲めへん。限界や!」
合計200枚を超える紙束を作り出す事には成功したが、体がポーションを受け付けなくなったので、コピー作業はギブアップとなった。
「お疲れ様です。時間もないでしょうし見本は私が持っていきますよ」
「おお!ええの?」
「もちろん、ウチの稼ぎ頭の為ですしね」
「ありがとう!じゃあ講習行ってくるわ」
「いってらっしゃい。講習場所ってギルド農地ですよね。それなら、私や他のメンバー達も後ほど合流します」
「そういえばクランクエストの場所と一緒か。じゃあ講習終わったら、追加でポーション飲んで残りの新聞渡すわ」
「ありがとうございます。これでソーイチさんのファン全員に新聞が届きそうですね」
「だったらええな。って時間やしこれで失礼」
そう言ってクランの農地を離れた俺は、転移とダッシュを駆使し、なんとか時間までに講習場所に到着した。
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「おはようソーイチ。いよいよスキル講習最終日だ。準備は出来てるか?」
「準備って、今回は早朝やし道具や場所はそっちの範囲やん。俺に出来るのは気持ちだけやで」
「あっ、そういえばそうだった。いつもはソーイチがギルドから農具レンタルって流れだし忘れてた」
「寝ぼけんといてや〜。せっかく俺はやる気モリモリで来たんやから」
「ははは。ま,まあ準備が出来てるなら問題ない。これから【苗植え】と【肥料散布】の講習を開始する」
ペーターは自分の勘違いを誤魔化す勢いで、最後のスキル講習の開始を宣言した。
「まずは【苗植え】からだな。ソーイチ、このベルトを装着した上でカゴをフックに掛けてくれ」
そう言って渡されたのは植物の蔓を束ねて作られたベルトと苗が詰まったカゴだった。
「カゴには50株分の苗が入ってる。とりあえず空になるまで植えてくれ」
「りょーかい。終わったら苗のおかわりどうするん?」
「同じように苗が入ったカゴを用意してるから、空のカゴを外して新しいのをフックに掛けてくれ」
「なるほど。補充分だけ別枠で準備してるんやな」
「ああ。その方が付け替えやすいし効率的だろ」
「そうやな」
ペーターの説明を聞きながらも農具をウエストポーチのように腰に巻きつけた。その後本番の苗植えを始める。
「今回はスムーズに作業できるよう最初の5地区分は植える場所に棒を立てかけてある。それを参考に1株ずつ丁寧に植えていってくれ」
「場所まで指定してくれるとかめっちゃ気が利いてるやん」
「褒めるなよ。褒めるならこっちの方で褒めてくれ」
そう言ってペーターは定番となった強力な付与魔術を俺にかけた。
「今回もありがとう!これでガンガン苗植えやってけるわ」
「苗植えは腰に来るから適度に伸ばせよ〜」
「オッケーや」
ペーターからの注意を聞きつつ、俺は苗植えを開始した。
苗植えは種蒔きと違い、1つの地区で5株だけ植えれば良いので単純な作業は少ない。だが、苗が倒れないように真っ直ぐ立てた上で土を被せる作業は思いの外時間と疲労が嵩む。
それでもペーターの強力な付与魔術によるバフやアドバイス通りに休憩しつつの作業のおかげで1時間弱で、
ー【苗植え】を取得しましたー
と、スキル獲得を告げるアナウンスが流れた。
「終わったで〜」
「おお、相変わらず渡り人のスキル取得は早いな!じゃあ疲れてるとこ悪いが、今から【肥料散布】もやるか」
「ええ〜。ちょっと休憩したいんやけど」
「【肥料散布】は今までで1番覚えるのが楽なんだがな〜」
「そうなん!?じゃあ休憩なしでええわ」
グッドニュースを聞いてテンションが上がった俺は苗植え用のベルトを外しながら答えた。
「ははは。現金だな」
「早く終わるに越した事ないしな。という訳で【肥料散布】用の農具プリーズ」
「はいよ」
そう言って渡されたのは【水撒き】の時に使うジョウロと同じものだった。
次回は1月18日(土)午前6時に更新予定です。
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