108.世界へのアプローチとシークレットアナウンス
「世界への影響?」
「ああ。ソーイチも心当たる出来事があるだろ?」
「そやな〜。まずプレイヤー数が多いことで発生した依頼書作成や食糧不足解消のお願いやろ?それとプレイヤー用に新聞の要約販売、後はまだ決まってないけど農業プレイヤー増加によって発生しそうな種不足解消の為の【種化】スキルを使う依頼が出るとは聞いてるな」
「メチャクチャ遭遇してるっすね!」
「確かにソーイチが遭遇したこれらの依頼やお願いはプレイヤーの行動により生まれたものと言えるでしょう」
「ですね!その度に影響がどうとかって議題は上がってた気がします」
俺が今日までに出会ってきた出来事を羅列していくと、メンバー達から称賛と納得の声が上がる。
「このゲームは従来より遥かに高性能のAIを導入した影響で、ガチガチに決まり切った世界ではなくプレイヤーの行動によって未来が選択される世界だと考えられる」
「はぇ〜、スゴいですね〜。でもプレイヤーの行動で変わる世界ってゲームとして自由度が高くて面白いな〜って感想以上の事が思いつかないんですけど」
話の重要性についてイマイチついていけないのかコメカミを撫でながらモチョが質問する。
「純粋にゲームを楽しむだけなら自由度に驚きつつも素直にプレイするのもアリだろう。だがMJOは賞金付きのゲームであり、俺達はプロゲーマーチームなんだ。だったら漫然と楽しむだけって訳にはいかないんだよ」
「ただ感心するのではなく、ライバル達に差をつける何かを探し出す必要があるんですね」
ユサタクの説明から何かを察したゼロが感心したように相槌を打つ。
「まあ俺が思いつくのは、世界観や町中の噂話を収集して発生する特別クエストを予測、そこからプレイヤーが殺到した時に更に何が起きるかもセットで先読みしていく方法だけだがな」
「農家プレイヤー増加で起きた【大収穫】みたいなクエストを、今度は事前に予測・準備する方法ですね」
ユサタクが言う世界へのアプローチを身近なケースで例に挙げるアマネ。
「なるほどな〜。拡大した農地の管理や睡眠時間の確保も視野に入れなあかんこのタイミングで【大収穫】を受注したんは、その流れの情報を手に入れる為なんやな」
「ええ!?さっきまでのグダってる説明だけで目的がわかったんっすか?」
「頑張って説明したのに酷いな!?」
やっと目的を理解し、本来の疑問であった【大収穫】クエ受注の真相を口にすると、難解な説明でオーバーヒート寸前のセキライから思わず暴言にも近い本音が飛び出てしまう。
「ははは、確かにぐだぐだやったな。今回の【大収穫】クエはプレイヤーの影響で発生したってユサタクは考えてる訳やろ?【大収穫】クエを受注する事で、そも仮説が合ってるのか?と住民達がどう考えてクエスト発生に踏み切ったのか?の2つの情報を関係者から手に入れるんがユサタクの目的ってわけや」
「その通り!さすがソーイチ、俺のことわかってるんだな!」
「急なだる絡みやめ〜や。でも、たかがクエスト1つで仮説検証や世界の流れってわかるか?」
理由はわかったが、イマイチ有効な策には思えないので、そこにツッコミを入れる。
「正直このクエスト1つで仮説の確定などは到底無理だと思う。だが今回受注した【大収穫】はウチに対しての信頼度が一番高い農業ギルドが発注しているクエストだ。だったらクエスト進行中に関係者から情報をたっぷり集めれそうだと思わないか?」
「う〜ん、たしかに他のギルドで出された依頼よりは受付さんやギルド農地の管理人さんは答えてくれそうやな」
「リーダーの仮説の補強って意味では【大収穫】クエが最適みたいですね」
行き当たりばったりではなく、一応の考えがあると知れて一安心する一同。そして全てを語り切ったユサタクはこのミーティングを終わらせる為に語り始める。
「以上が今回受注した理由だ。みんなには苦労をかけるが情報収集やクエストの進行、それと俺の思いついた方法以外で世界へアプローチ出来るアイデアが思いついたら、俺かクランチャットでの報告を頼む」
「「「はい!!」」」
「ありがとう。それでは5日目のミーティングを終了する。6日目以降は人手がバラバラになるし、数日はミーティング無し、その期間中は定期的にクランチャットの確認をよろしく!というわけでお疲れ様でした!」
「「「お疲れ様でした!!!」」」
ユサタクの締めの言葉で長かったミーティングは終わりを告げた。
「はあ〜。今回のミーティングはちょっと長かったな〜」
「ですね。正直世界への影響うんぬんの話は良くわからなかったです」
「確かに予測に予測を重ねた感はあったしモチョの言う事も一理あるな。でもこの世界が俺達の行動でどう変化していくのか、一作家としてはめっちゃ興味深かったわ」
「ははは、確かにネタになりそうですね」
「お話中すいません。ソーイチ時間大丈夫ですか?」
モチョとミーティングの感想を語り合っていると、後ろからゼロが話しかけてきた。その声に内心驚きつつも時間を確認すると、
「時間って・・・あっ!」
「ど、どうしたんですか!?」
「今って俺のテレビデビューの放映中やん!」
俺の人生初のインタビュー出演回の放送開始時刻を過ぎていたのだ。
「ああ!?もう半分くらい過ぎてそうですし、インタビューシーン終わってるかも!」
「マジか!まだ間に合うかわからんけど、これで落ちるわ!」
「お疲れ様です!私も直ぐに観にいきます!」
モチョに別れを告げログアウトのボタンを押そうとしたその瞬間、
-シークレットクエスト【アースの町解放】の受注者が200名に到達致しましたので、ゲーム内掲示板にて専用スレッドをご用意しました。是非とも交流などにご活用くださいませ-
と、アナウンスが鳴り響く。
「ええ!?」
「ゲーム内掲示板ですか・・・。内容的に対象者以外はこのアナウンス聞く事ができたのでしょうか?」
「このタイミング!?落ちる間際に気になるアナウンスやめてや!?」
突如鳴り響いたアナウンスに騒然とするメンバー達。そんな中、
「ストップ!あくまでスレッドが出来ただけだし慌てるな。内容の確認や書き込みは俺がやっておくから、みんなはログアウト含め予定通り進めてくれ」
ユサタクの一喝で鎮まる。
俺はその言葉を信じてログアウトし、5日目を終えたのだった。
tips
シークレットアナウンス
今回ラストで流れたアナウンス。
これはアナウンス対象者にのみ聞こえるように設定されている。
次回は12月21日(土)午前6時に更新予定です。
(12/20追記:月曜日から風邪を拗らせてしまったので、次回の更新を12月28日(土)午前6時に延期致します。
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