98.アーツ選択と【魔力付与】
暫く2人で悩んでいたが、ハッとしたグラントが資料を凄い勢いで読み始める。その後お目当ての情報が見つかったのか、少し顔色を悪くしながら語り出した。
「どうやら渡り人達が、生来のジョブではなく新たに付与魔術師に転職された場合、ステータス画面で初期魔術を選択しなければいけないようです」
「そうなん?」
「ええ。こちらの勉強不足で回答が遅れてしまい申し訳ございません」
「ド忘れは誰にでもあるし気にせんでええよ」
慰めの言葉をかけると安心したのか、グラントに笑顔が戻る。
「それで、ステータス画面での選択って何すればええの?」
「今から解説いたしますので、それに沿って実際にやってみましょうか」
「了解。その方が理解し易そうや」
「まずはステータス画面を開き、アーツの部分に注目して下さい」
「オッケー。ステータスオープンっと」
指示通り、ステータス画面を開きアーツの所に注目する。
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アーツ 見習い晴耕雨読:消費MP0・ST5/ 見習い付与魔術師:消費MP5/ メモ:消費MP0/ コピー:消費MP3/ 2枚刷り:消費MP5/ 3枚刷り:消費MP7 / 4枚刷り:消費MP9/ 種化:消費ST5
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「その中で、見習い付与魔術師というアーツの部分に触れて下さい」
「オッケーってうぉ!?」
言われるがまま【見習い付与魔術師】のアーツにタッチするとシステムウインドウが目の前に立ち上がる。
そこには、
ーこれより、アーツ【見習い付与魔術師】の初期設定を行います。STR・INT・AIG・DEX・DEF・LUKの中から2種類の初級ステータス付与魔術を選択して下さいー
と書かれていた。
「選択画面が出てきましたか?」
「あ、ああ。6つの中から2種類選んでって出たわ」
「良かった〜。マニュアル通り表示されるんですね」
「あれ?言い方的に今回のケース初めてなん?」
「ええ。渡り人の方々と我々ではステータスの見え方が違うので、ここにあるマニュアルが合ってるか心配だったんですよ」
「う〜ん。違う見え方やのに説明できるマニュアルは気になるけど、先に魔術選択やな。これって選んだら他のはずっと選べなくなるん?」
「いえ、レベルが上がるごとに使える種類が増えていき、見習い卒業とともに6種類全ての初級付与魔術が使えるようになります」
「じゃあ、畑仕事で使うSTRとDEXでええか」
すぐに全種類のバフを覚えられるということなので、農業に関係する2種類のアーツを選択した。
するとアーツ欄から【見習い付与魔術師】がなくなり、代わりに【STRアップ】と【DEXアップ】に置き換わった。
「よし!STRとDEXのアーツ覚えれたで」
「おめでとうございます!ソーイチさんは戦闘アーツは初めての取得だと思いますが、使い方はわかりますか?」
「【コピー】みたいにアーツ名叫ぶんで合ってる?」
「それでも可能なのですが、渡り人には別のやり方もあるみたいですよ」
「へぇ〜。それってどうやんの?」
「このマニュアルによると、ステータス欄のアーツ名に触れると、発動するためのワードを設定出来るそうです」
「ふむふむ。オリジナルっぽい名前でアーツ使えるんか」
「ただ、3文字以上にしないといけないのと・・・」
「うん?3文字以上いるんとなんなん?」
「ひ、卑猥なワードは使用出来ないみたいです」
グラントが顔を赤らめながら消え去りそうな声で説明する。
「す、すまん。セクハラじみた質問やったな」
「いえ。気にしないで下さい。説明はギルド職員の仕事ですから。それより続けましょう。お好みのアーツ名を登録したら後は、フィールドや街中問わずに使う事をお勧めします」
「レベル上げる為やな」
「それもありますが、いっぱい使えば新たなアーツを覚えるかも知れませんよ?」
「マジか!?じゃあお勧め通りバンバン使ってくわ」
「ふふっ。頑張って下さいね」
張り切る俺に応援してくれるグラント。その後少しの注意事項を受けた後付与魔術師の説明は終わった。
「お疲れ様です。ソーイチさんは早速依頼受けますか?」
「う〜ん。それより【魔力付与】ってスキルの講習あるって聞いたんやけど、見習いでも受けれるん?」
「ああ。そのスキルなら需要が大きいのでEランク冒険者なら誰でも受講可能です」
「じゃあ、一番早い時間とお値段教えて」
「少々お待ちください。一番早いのですと12時なので後30分くらいです。それと受講料1,000ゴールドになります」
「じゃあ早速予約お願い」
そう言って俺は1,000ゴールド差し出した。
「では登録してまいります。この試験は受講者の練度によりMPが10〜110かかります。もしMPが心許ない場合は売店に初級MPポーションを販売しておりますので、ご活用ください」
「ありがとう。じゃあ開始まであっこのソファーでゆっくりしとくわ」
予約の為に受付の奥に向かうグラントを眺めた後、ギルド備え付けのソファーに座り残りMPを確認する。
(残り46か。ポーション余ってるし1本飲んでから、じ〜と自然回復待つかね)
待ち時間の使い方を決めた俺はポーションを飲みきり目を瞑る。暇つぶしにクランコールのログを眺めていると、情報販売前の最終確認などが行われていた。
俺は邪魔しないように、そのドタバタ具合を見守っていると、グラントから講習開始の呼びかけが聞こえてきたのだった。
tips
付与魔術の初回選択
【見習い付与魔術師】を初めてセットした際、同名のアーツをタッチすると習得できる初級付与魔術を2種類覚える事ができる。
ただし、この仕様は渡り人だけの仕様であり、現地人は転職した時にランダムで2種類覚える(一応、これまでの行動で役に立ちそうなアーツを優先的に覚えやすくはなっている)
今回登場したマニュアルはβテスト時(本編の1年くらい前)に【オモイカネ】の協力により作成されたものである。
次回は6月10日(月)午前6時に更新予定です。
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