97.戦闘職ギルドと訓練所
「まず、戦闘職ギルドについてご説明します。まあ、基本的なシステムは生産職ギルドと同様、クエストをクリアしてBGPを稼ぎランクを上げる、これだけなんですよね」
「なんや、ポイントの名前が違うだけか。他と違いすぎたら混乱するし、合理的ではあるけど新鮮さが無いな〜」
説明が始まったのは良いが、雑なスタートに仕方ないとはいえ少しガッカリ。
「勿論違う所もございます。小さいのだとクエスト内容が魔物の討伐メインになっております。そして目玉が訓練所の存在ですね」
「へぇ〜。聞いた事ないんやけど、どんな施設なん?」
初めて聞くワードについて聞き返すと、グラントは少し気落ちした感じで返答する。
「やはり、知名度は低いみたいですね・・・。渡り人等は基本的にフィールドでの実践を主流としていて、訓練所を使ってる方は全然いないんですよ〜」
「確かにウチのクラン内では聞いた記憶無いな〜。どんな施設なん?」
「訓練所はCランク以上の冒険者から、戦い方やスキルの活用法まで様々な事を学ぶ事ができる施設なんです」
「ちょっと地味やけど有用そうな施設やん。実践派が殆どとはいえ、なんで人気ないんやろ」
「それは訓練を受けるには事前予約が必要なのと、経験値が獲得できないってデメリットがあるからですね」
「ああ〜。渡り人はレベル上げが大好きやからな〜。面倒くさい上に経験値入らん訓練所より、フィールドで魔物と戦うの選ぶか」
訓練所のデメリットのデカさに不人気の理由を理解できた。だが、グラントは負けじと訓練所のメリットについて話し始める。
「確かに経験値は入りません。その代わり、訓練所内ではSTやMPが使い放題ですし、正しい型を学ぶ事で新たなアーツやスキルが発現する可能性もあるんです!ですので冒険者を続けて行くなら絶対に通うべきなんですよ!」
「そりゃ凄いな!」
賞金レースを勝ち抜いていくには、通常以外の戦闘手段が増えるメリットはかなり大きい。
「う〜ん。今日は無理やけど近いうちに絶対行くから値段だけ教えて」
「かしこまりました。1コマ2時間の訓練で、Cランク冒険者なら1万ゴールド、Bランク冒険者なら5万ゴールドお呼びするのに掛かります」
「高っ!この世界に来たばかりの渡り人にはそこまでのお金ないって」
「そうですよね〜。でもお呼びするのに掛かるお値段なので複数名で参加すれば、人数で割り勘する事も出来ますよ」
「例えばCランク冒険者の訓練に10人で参加した場合、1回1,000ゴールドか。それならいけるかな?」
「まあ、人数が揃わなければ掛かる費用も大きいですけどね」
「クラン入ってるしそこは大丈夫やと思う。他に何かある?」
グラントはそう言うが、クランに所属している身からすれば、人数はどうにでもなりそうだ。俺は近い内に参加希望者をクラン内で募る事を心に決めつつ新たな情報を求める。
「そうですね〜。後は、訓練所は予約したギルドのジョブをセットしていないと参加出来ませんので、そこだけは注意してくださいね」
「そりゃそうか。人数集めちょっとだけハードル上がりそうやけど、なんとかなるやろ」
「予約日時が24時間以上後の場合は、あそこの掲示板に貼り出して参加者を募ることも出来るので、ぜひ活用して下さい」
「そんなシステムもあるんか!それやったら募集でも参加でも両方活用させてもらうわ」
人数問題が解消できそうなシステムを聞き、やっていけそうで安心できた。
「以上が訓練所の使い方というか、戦闘職ギルド独自のシステムになります。ランクを上げれば更に出来る事は増えますので、頑張ってくださいね」
「了解。頑張るわ」
少し長くなったら、戦闘職ギルド全般でのシステムの説明が終わった。長く話すぎて喉が渇いたのか、グラントは水を一飲みした後、次の説明に移る。
「それでは、次は付与魔術師についての説明になります。失礼ですがソーイチさんは最初の付与魔術は何を選択しましたか?」
「え?選択って何?」
「付与魔術師になる場合、6つのステータスから2つの付与魔術を選べますよね?」
「うん??」
全く覚えの無い情報を聞かされ頭にハテナマークが浮かぶと、それを見たグラントにも同じものが浮かんだ。
tips
訓練所
現役のCランク以上の冒険者による戦闘訓練が受けられる施設。この中ではSTやMPが減らない代わりに経験値やスキルの熟練度は一切入手する事ができない。
その代わり、新たなアーツやスキルが入手できる可能性がある。それ以外にも高ランク冒険者に訓練してもらう事で人脈を広げることも可能である。
そのため、駆け出し冒険者は通常の依頼や街中でのバイトで資金を稼ぎ、訓練所に通うのが王道パターンとなっている。
次回は6月8日(土)午前6時に更新予定です。
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