93.小テストと連続ゲット
「それではソーイチさん、スキルボードに向かって両手をついて祈りを捧げて下さい」
最後の準備を終えた俺は、ディーアに導かれるままスキルボードの前に立ち、両手を触れさせながら祈り始める。
ースキルボード【種化】に10MPを捧げますか?ー
と言うシステムアナウンスが流れたので、【はい】を選ぶと体から何か抜け出る感覚を覚えた。
ーそれでは【種化】取得の為のテストを開始しますー
更なるシステムアナウンスが流れた後、頭の中に【種化】についての小テストが浮かび上がる。
テスト上部に注意事項が書いてあったので読み上げていくと、今回は記述方式で全10問のテストであり、間違えた問題数×10MPが取得する為に必要になる仕様のようだ。
(まさかのテスト。確かにこれやったら理解度に合わせて注ぎ込むMPも変わるわな。でも直前に詰め込んだおかげでなんとかいけそうや)
最後の見直しが効いたのか、スルスルと問題を解いていく。幸いひっかけ問題もなかったので、あっという間に全ての解答欄を埋める事が出来た。
ミスが無いか2回見直しをした後、テスト下部にある終了ボタンを押して採点を待つ。すると突如得点板が頭に浮かび、大袈裟なドラムロールと共に点数が表示され、無事に全問正解で終えることができた。
ーテストの結果間違いがゼロだった為、追加MPは無しです。【種化】取得いたしますか?ー
と言う問いかけに、もちろん【はい】を選択。
すると、
ー【種化】を取得しましたー
とシステムアナウンスが流れた。
スキルを習得した俺は目を開き、スキルが獲得出来ているかステータスを見ていく。
無事【種化】が載っているのを確認した俺は、見守っていたディーアに声を弾ませながら取得出来たと報告した。
「やったで!しっかりスキルゲットできたわ」
「おめでとうございます!」
「ありがとう!これも最後の見直しと自力で要約して、スキルへの知識を深めたおかげかな?」
「だと思います。資料を見て直ぐに必要な部分を抽出した上でまとめる、それも短時間に仕上げるなんて司書としての才能溢れてますね」
おべっかを全く感じさせないディーアの褒め言葉に思わず照れてしまう。恥ずかしくなった俺は誤魔化すように、
「じゃ、じゃあスキル覚えれたし受付に戻るわ。今日は講習担当してくれてありがとう」
「こちらこそ。また別のスキル講習でお会いできるのを楽しみにしてます」
お礼と別れの挨拶をした後、アレンの待つ受付へ向かった。
「お帰りなさい。その様子だと無事習得出来たみたいですね」
「もちろんや!もう新スキルゲットでテンションアゲアゲや。このままの勢いで【耕す】スキルも覚えたいんやけどいける?」
「はい。そう言われると思って準備はすでに出来てます」
「アレン最高!マジでありがとう!」
「どういたしまして。実地試験でのスキル講習はこちらのアイテムを装備した上で、ギルド農地へ向かって下さい」
そう言ってアレンは一本の鍬を差し出した。
「【修練の鍬】と言う農具なのですが、これを装備した状態で手動で畑を耕すと、経験値は入らない代わりに通常の半分の回数で【耕す】スキルが手に入るんですよ」
「マジか!手動やと時間かかるから、それが半分って大分楽になるな!」
「もう試した事はあるんですね」
「ああ。全ての作業は何度か手動でやってみて時間を測ったんや」
「まあ。肉体労働をデータ化するなんて、情報の番人たる【司書】らしい取り組み方ですね」
「ははは。そこまで大袈裟な事じゃ無いけどな」
「そんなソーイチさんに朗報です。講習以前に手動で行った分も実績としてカウントされてます。それと【農家】をセットすればジョブ補正でさらに回数も少なくなりますよ」
「ええやん!大分楽に出来そうやし、今からダッシュで行ってくるわ!」
講習場所のギルド農地に急いで向う。
あっという間に到着した俺は、管理小屋で暇そうにしていたペーターに講習開始する為話しかける。
「ペーター。【耕す】のスキル講習受けに来たで」
「おお。昨日ぶりだな。スキル講習ってことは見習い卒業したんだな」
「ああ。昨日卒業してん。それよりどこを耕せばええんや?」
「【耕す】のスキル講習なら向かって右端の農地だ。俺が監督するし案内するよ」
そう言って講習場所まで案内してくれた。
「こほん。それではスキル講習を始める。と言ってもひたすら耕していくだけだな」
「そやな。重労働やけどやっていくか〜」
「ふむ。今は他の受講者はいないしサービスするか」
ペーターはそう言うと、俺に向かって何かの魔法を放つ。
「眩し!いきなりなんなん?」
「すまん、すまん。今かけたのは上級付与魔術なんだが、力が湧いてこないか?」
「上級!?言われてみれば力が漲ってるけど」
「だろう?手動での作業はステータスも重要だからな。効果が切れないうちに試してみてくれ」
「おう!」
湧き上がる力を鍬に込めて畑を耕す。すると以前は1地区当たり15分もかかったのが、3分ほどで耕す事が出来た。
「効果やばいな!初めて畑仕事した時、15分かかったのに3分て・・・」
「初めてって事は、その時のSTRとDEXの数値はGかFだろう?今は成長やバフ込みでC〜Bになってるはずだぞ」
「マジで!?もしかして一時的とはいえ渡り人の中でもステータスNo.1ちゃうか?」
「かもな。それより、この魔術は効果時間15分なんだ。スキル取得まで付き合うが無駄話での浪費はやめてくれよ」
「わかった!頑張るわ」
ペーターから発破をかけられた俺は、一心不乱に農地を耕していく。途中、付与魔術の効果が切れそうなタイミングもあったが、それを実感する前に再度かけ直してくれた。
そんな作業を繰り返す事1時間、ついに本日2つ目のスキル【耕す】を手に入れる事が出来たのだった。
tips
小テストの一部抜粋
Q:【種化】スキルを使う事で、経験値を入手できるジョブを2つ答えよ。
A:錬金術師・農家
Q:【種化】を使える作物の条件を答えよ。
A:基本野菜
Q:【種化】を使う際の消費STはいくつか?
A:5
次回は5月31日(金)午前6時に更新予定です。
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