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92.初めてのスキル講習

講習の為、アレンに案内されたのは、1パーティ分がやっと入れる小部屋だった。

そこには見覚えのない女性職員が教壇に立ち、ホワイトボードには既に【種化】の概要が書かれている。俺は資料が置かれている席に座った。


「では、ディーアさん。後はよろしくお願いします」

「はい。任せてください」

無事引き継ぎが終わったアレンは、受付の仕事に戻る為、部屋から退出していった。それを見送った後、ディーアと呼ばれた女性が自己紹介をし始めた。


「はじめまして、私は今回【種化】のスキル講習を担当しますディーアと申します。よろしくお願いします」

「ソーイチです。こちらこそよろしくお願いします」

「ふふ。農業ギルドの救世主にスキル講習が出来るなんて光栄です。1時間程ですが精一杯頑張ります!」

「持ち上げすぎやって。せっかく講師が頑張ってくれるんやし、こっちも真剣に受けさせてもらうわ」


初対面ではあるが、アレン達から話を聞いていたのか、親しみと尊敬の目線でこちらを見るディーア。その視線には、正直気恥ずかしさしか感じないが打ち解けたとポジティブに考える。

そんな考えは顔に出ていたのか、ディーアは咳払いをしてからスキル講習を開始した。


「では、今回はスキル【種化】の講習を始めるのですが、まずスキルの基本データから説明します。お手元の資料を一通り目を通して下さい」

俺は言われるがままに資料に目を通す。


【種化】 生産[農・錬]

消費ST5

獲得基礎経験値 5+スキルLv+α

基本野菜を種に変換するスキル。返還(変換)率は1つにつきスキルLv+4粒


他にも色々な事が書いてあったが、俺は重要な部分だけを抜き出し【メモ】していく。

その作業が終わったのを見計らい、ディーアは解説を始めた。


「とても分かり易くまとめれてますね。必要な部分は全てまとめられてるので、今回は質疑応答メインでいきますか」

「オッケー。じゃあまずスキルの横の記述ってどんな意味なん?」

「このスキルが戦闘系か生産系か、またどのスキルに対応してるか表したものです。

【種化】の場合は、生産系スキルであり、農家系と錬金術師系の2つのジョブに対応してるって意味になりますね」

「錬金術師にも対応してるんや!?」


「ええ。このスキルは物質を変換するものなので錬金術と相性が良いんですよ」

「なるほどな〜」

ディーアの説明を聞き、今後の転職先の候補に錬金術師を加えると共に、モチョにも【種化】は是非覚えてもらおうと画策する。


「スキルの性能とかは表記通りでええとして、対象が基本野菜ってなってるけど、どういう意味?」

「こちらはギルドで販売してる収穫可能時間が12時間と22時間の種限定に使用可能って意味です」

「やっぱそうか〜。これじゃあ原木とか果物の苗は勿論、友人が手に入れたミルキーアップルの種も量産出来へんって訳か」

レア作物量産への道のりはまだまだ険しい事を確認して少しテンションが下がる。


「ミルキーアップルの種手に入れた方いるんですね。あれってフェイクグラスの落とす種の中でもすごく珍しいのにすごいですね!」

「そこまでレアやったんか」

「ただお察しの通り、【種化】だけじゃ量産出来ませんね。でも、スキルレベルが最大になれば覚える事が出来る進化スキルで量産できる様になりますよ!」

「それはええな!じゃあ早めにスキルレベル上げるかな。ってアース解放の準備との兼ね合いあるし難しいか〜」

先への見通しは出来たが、【種化】を成長させる為の作物はシークレットクエストの納品で使うので、暫くは後回しになりそうな予感。


「種化は比較的早くスキルを上げれるのですが、種自体に需要は今は少ないですからね。解放してる農地が一気に埋まれば種の納品依頼が出るはずなのですが」

「それや!?」

「え?まだまだ空きばっかりですが、農地が埋まる心当たりあるんですか!?」


「ああ。今日の昼頃に【農家】の有用性などを渡り人に共有する予定でな。うちらの特性上、絶対に農地を買い求める筈なんや」

「本当ですか!?それなら急な種の需要に対応する為、特別依頼が出るかもしれませんね!」


農業ギルドの悩み解決とアース解放への足掛かりになる農地完売が現実に見えてきた。ディーアは興奮しながらも、【種化】の活躍の場を俺に教えてくれる。


「全体の向上はアース解放に役立つし、俺のスキルも上がるし一石二鳥や。まあ、納品する分が減るのは残念やけど」

「それなら金銭的な報酬は下がりますが、こちらで種用の作物を用意する様に提言しておきましょうか?」

「ええの!?納品とスキル上げ両方できるやん!」

俺にとって都合が良すぎる提案をするディーア。


「凄い食いつきですね。では今の案は上に伝えておきますね」

「ありがとう!よろしく頼むわ」

感謝の言葉を伝えるとディーアは一瞬微笑んだ後、咳払いをし講習を再開した。


「こほん。それでは質問の続きに戻りましょうか」

「せやな。と言っても重要なポイントは全部聞いたし追加質問は無いわ」

「わかりました。それではお待ちかねのスキル習得に移りましょうか!」

そう言って1枚の石板を取り出すディーア。そこには謎の文字と図形がびっしりと彫られていた。


「これって一体なんなん?言語系スキル3つ持ってるのに全く文字が読めへんのやけど」

「これは【スキルボード】、神様から賜った神具です。ちなみに彫られている文字は神字と言います」


「神字か、道理で読めへんはずや。それより名前的にこの石板に何かをすればスキルを習得できるって事であってる?」

「大正解です。石板に両手を触れた状態で、女神様に祈りを捧げながらMPを注ぎ込むことでスキルが習得できるんですよ」

「意外と簡単なんやな〜」

有用スキルがこんなに簡単に手に入る事に驚く。


「ただ、注ぎ込むMPはスキルの理解度によって増減します。なので、習得前にスキルの解説を行うんですよ」

「なるほど。ちょっと不安になってきたから念の為資料を読み直すわ」

「ふふふ。お待ちしてますので、ごゆっくりどうぞ」


最後の足掻きとばかりに資料とまとめたメモを見返す。10分後、

「よし!準備万端や」と宣言し、スキル習得を開始した。



tips

スキルボード

太古には先天的にしか獲得する手段の無かったスキルを、広く伝える為にスキルの神と生産の神が共同で作成した神具。

祈りながら両手で触れる事で、石板と自分を擬似的に同調させ、MPを流し込む事でスキル情報を体に刻み込む。

次回は5月29日(水)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界モノなら神字習得してスキル取り放題!とかやりたいところだけどゲームだから無理かな? 神字として確立されてるならなにかできることはありそうだけど……
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