1.ゲームへのお誘い
「「乾杯!!」」
グラスのなる音が部屋に響いた。
「『ファン学』完結おめでとう!10年以上頑張ってきた創一が2度のアニメ化を経て無事円満終了とは本当にめでたい!ビールが進むな」
ビールを流し込みながらも本当に嬉しそうな親友の遊佐拓也の言葉に
「ビール飲みたいだけちゃうんか?でも、祝ってくれてありがと」
とつい照れながらも返す。
「それで、物部創一先生、次回作の構想とかあったりする?」
「無理!『ファン学』には俺の全てを注ぎ込んでもうネタも情熱も空っぽや。これが燃え尽き症候群ってやつなんかな」
グラスに残ったビールを飲み干しながら答えた。
「マジか。じゃあしばらくはリフレッシュ休暇か?」
「そやな〜、最低1年はネタと休憩かな。いっそ世界旅行でも行くのもありかもな」
その言葉に少し考えながら拓也がある提案をしてきた。
「それなら来月から始まる『MJO』やらないか?」
「MJO?ああ、『ミックスジョブオンライン』か。ニュースとかで見かけるけど面白いんか?」
「面白い。難易度は高めではあるけど五感完全再現と中身入ってるとしか思えないNPC、街も作り込んでて超リアルだし何より業界初の体感時間が8倍になるのも魅力的だな。」
「ふむ」
「賞金も有りで、それが高額かつ期間が1年としっかり区切られてるから、俺みたいなプロゲーマーにとっても本当にありがたい」
「1年で8年分遊べるし、プレイヤー達の生活がかかったガチプレイも見れそうやし、格好のネタ集めに出来そうやな」
「だろ?ちょうどウチのサポートチームに欠員が出て余ってるからやってみないか?」
「それって拓也の『ユーザータクティクス』の一員としてプレイするってこと?」
「いや、個人でプレイして問題ないよ。ただ、もし良い情報とかゲット出来たらコソッと教えてくれたらなって」
チラチラっとわざとらしく見ながら言う拓也。
「それくらいやったらええか」
「良かった!それじゃあ明日ゲーム機持って行くわ」
「じゃあ夕方くらいに持ってきて」
「りょーかい、じゃあ、創一の参加も決まった事だし飲み直すか!」
そして俺と拓也はMJOについて終電間際まで語り合った。
tips
『ファン学』
正式名称は『ファンタスティック・アカデミー」でジャンルは学園ファンタジーもの。全20巻と2度のアニメ化もされており創一を人気ラノベ作家に押し上げた名作で10代から30代まで人気の作品となっている。