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第7話 パネル・・・。

~藤宮塔子視線~


△デパート化粧品売場前△


私は、一美ちゃんのパネルの前でフリーズしている。


風にたなびく艶のある髪

ちょっぴり背伸びした様なアイシャドー

それでいて大人を強調する真っ赤な口紅

まさに“少女から大人へ”とのキャッチコピーを体現したようだ。


「塔子ちゃん!」


「は、はい!」


「うふふっ、好きよね~、やっぱり! まぁ、分かるけどさ~」


我に返ると、恥ずかしくなった。

どれくらいフリーズしていたのかしら。

そこへ、店員さんが“さささっ”と近寄って来た。


「お客様。このパネル評判なんですよ~。良かったらこちらの商品お試しなさいますか?」


「こ、こ、このパネル、譲って下さい! お金ならいくらでも払いますから!

 何ならローンを組んででも!」


私は、無意識に店員さんの肩を掴み、力一杯力説していた。


「え、え~と、残念ながらこちらは非売品になっておりまして・・・」


「そこを何とか!」


「え、え~と、実はそうおっしゃるお客様が非常に多くてですね。特に男性のお客様から・・・、ですので、ご本人様の了解でも無い限りお譲りできないことにしております」


「ほ、ほ、本人の了解があれば良いのね! 絶対よ! ちょっと待ってて!」


私は、急いでスマホを取り出し・・・


「お客様! ご本人様をご存知なのですね!」


「 はい? だからちょっと待ってて! 直ぐに連絡・・・?」


「じ、実は・・・・・」


店員さんは、私の言葉を遮り神妙な面持ちで内輪話を語り出した。


~~~~~~~


店員さんの話では、一美ちゃんは一般のモニターモデルで、本当はポスター一枚を短期間掲示する程度であった。

ところが、このポスターが類を見ないほど好評で、売り上げも急増したことから、パネルにしてさらに目立つようにしたそうだ。

・・・・本人に無断で!


当初、事後報告で良いと軽く考えていたのだが、まさか電話番号が偽物で連絡できないとは思わなかったそうだ。

しかも、名前まで“鈴宮美冴”と偽名だった。

北村冴子、鈴木今日子、藤宮塔子

分かりやす過ぎだよ、一美ちゃん。営業第一課女子から取って付けたのね。


店側としては、事後報告の謝罪と、パネルの正式契約を結びたいと、、、

それに、近々本社から視察が来るそうで、場合によっては今後全国13店舗での採用もあり得るとか、、、。


私は、鈴木先輩と顔を見合わせた。


「う~ん、でも連絡先を勝手に教える訳には、、、」


「そこをなんとか! なんでしたらお二人様にも特典を!」


それを聞いた鈴木先輩は、キラキラお目々になって陥落。

う~ん、仕方ないか。

私から一美ちゃんに連絡している間に鈴木先輩と話を詰めて置くように言い、私は人気の少ない階段ホールへ移動した。


~~~~~~~~~~~~~


一美ちゃんの反応は、予想通り淡々としたものだった。

・事後報告の謝罪は不要。

・パネルの契約も任せる。

と、悪く言えば他人事で、自分の影響力を微塵も理解していそうにない。

おそらく、パネルどころか最初のポスターも見ていないわね。


「じゃ~、私が(仮)マネージャーで良いですね!」


と強引にマネージャーを買って出たが、「よろしく!」とこれまた素っ気ない返事だった。

本当に良いのね一美ちゃん!


「うふふっ」


私は、ほくそ笑み、心の中で妄想を拡大していった。


△△


話はトントン拍子に進み、一美ちゃんのパネルは全国デビューすることになった。

そして、その化粧品メーカーでは、一美ちゃんをメインモデルにした新ブランドが立ち上がるのだが、それはまた後の話。

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