45話 仲間
ここはレイハルト領最西端の、名も無き町。木の杭で囲まれただけの小さな町だ。ノースウッドの森にほど近いこの町は、魔物狩る冒険者の溜まり場として、その門を広く開放していた。
ハガルはファリアスから逃れ、ここに辿り着いていた。ここなら金がなくとも、魔石で取り引きができるからだ。あの煩いキローガ坊ちゃんを寝かしつけるには、宿屋が必要だった。
ハガルは、慣れない空の旅で気を失ったキローガを2階のベットに放り込んでから、下の酒場でようやくゆっくりと腹ごしらえをしていた。
そこに、竜族委員会の奴らがやって来たのは、幸運以外の何物でもない。
「ダエグ!アルシズ!!」
「ハガルか!!いやぁ、良かった。落ち合えて!転移石が使えなくなってたんで、どうすっかなって途方に暮れてたんだ。お前がファリアスを追い出されたって噂を聞いてこの町で待ってて正解だったぜ」
そう言いながらハガルの前に座ったのは、長い白髪をした小男、アルシズだ。子供にしか見えないし、長いローブを羽織っていることもあり女にも見えなくは無いが、手に持つのは酒だ。
「まつたくだ!再会を喜ぼうではないか!」
その横で、嬉しそうに俺を見つめるのは、ダエグ、変革の竜だ。アルシズとは対照的に、よく鍛えられた体を見せつける様に、とりあえずと酒を頼んだ。
「他の奴らはどうした?」
俺は早速近状報告を促す。この町からは、我らの住処である美しい城が見えたはずだ。なのにそれが見当たらなかった。
人間どもは魔王城が無くなったと喜んでいたが、とんでもない。あの城には、こいつらだけじゃなくて、使えない竜族委員会のメンバーも何頭か眠っていたはずだ。
ダエグはきまり悪そうに水色の短髪を掻きむしった。
「その……どうしよもなかったんだ」
「俺たち、ハガルに言われた通り、フラン様の血を飲ませたんだぜ。そしたらオセルの奴、腹いせに城を壊しやがった。どんだけ性格が歪んでんだよ。他の奴らの事も考えろってんだ」
アルシズは不満そうに呻いた。アルシズは保護の竜だ。竜の身は守れても、城は守れなかったという訳だろう。でも、2人は俺の計画通りに動いてくれた様だ。
「城を造り、あの場所を守ってたのはオセルの力だ。奴は守護の竜だからな。壊れたって事は、奴は死んだんだろうよ!奴が自分から壊すとは考えられないからな」
笑いが込み上げてくる。
「伝統だの格式だのにこだわった城も、死ねば消えて無くなるんだぜ。自分の作りあげた城に押し潰されて死ぬとは笑えるな!」
「……本当にこれで良かったのか?」
死と聞いて、ダエグが自信なさげに目を泳がせる。
我ら竜はフラン様の落とし子だ。心配せずとも、フラン様の血を飲めばフラン様の元に還るだけだ。
……そう言い聞かせたのは俺だ。
だが実際、闇にまみれたフラン様の血に、そんな意思が宿る訳がない。
竜は、闇……魔を摂りすぎれば老化する。魔にまみれたフラン様の血液となれば、命はないだろう。
竜は互いを殺し合わない。だが、直接手を出さずとも、フラン様の血を飲ませる事は出来る。結果、どうなるか……俺たちはフラン様に祈ればいいだけだ。
「言ったろ?オセルはフラン様の元に還ったんだ。心配はいらないって!それに仕方がないだろ?竜王の証は24のルーン石がひとつになった物だ。それを無効化させるには、竜が最低でも1匹消えるしかないんだよ。オセルのお陰で、竜王の証を持った人間に、俺たち竜が、好き勝手指図されずにすむんだぜ。無駄な死じゃないはずだ」
「おう、そうか!これで竜の尊厳が保たれるなっ!」
ダエグは子供のように喜んだ。俺は単純なこいつらが大好きだ。
「でも、ひとつ気になるんだけどさ、イースは人間に殺されたんだろ?俺らが手を汚してまでオセルまで殺す必要はなかったんじゃないのか?」
アルシズが体を寄せて小声で話す。竜は人間ほど残忍ではない。自分のやった事に、恐れを抱くのは仕方のない事だ。俺は可愛い仲間に説明してやる事にした。
「いいか、俺は2度もウィンに追い返されたんだぜ。ウィンだけじゃない。レイハルトじゃあ、オセルにも妨害されて殺されかかった。奴らは竜よりも人間を選んだんだ。その意味が分かるか?」
2人は揃って首を振る。
「あのな、アホのライゾはともかくとして、アンスールは弱っちい人間が好きだから、竜よりも人間を守りたがるかもしれない。でもあの時いたのは、ウィンとオセルとスルトだ。奴らが人間の言う事を聞くとは思えない。竜王の証を持つ人間が力を使って、竜を動かしたに違いないんだ。ありゃどうみたって無理やり言うことを聞かされてるって感じだったね」
「ひでぇ!」
ダエグがテーブルをドンと叩き、煩い酒場が一瞬、静かになった。ダエグはなんでもねぇと手を振って俺に顔を寄せた。
「じゃ、竜王の証を持ってるミミって女が、竜王の証を使ったって事か……。イースは死んでなかったのか」
「竜は人間ごときにゃ殺られない。どっかで生きてるんだろうよ。でなきゃ、オセルだって、格式高い竜族委員会を、自分から抜ける訳がない。ミミに仲間になる事を強要されたに違いない」
「なるほど、だからウィンの所に行った時、話も聞かずに追い返されたのか!」
アルシズが眉を寄せている。……行ったのか。馬鹿だな。そんなん、追い返されるに決まってるだろ。昔からウィンが屋敷に入れるのはアンスールとオセルくらいなもんだったろ?
だが、俺の話を信じるのはいい事だ。
「そうだ、全部、竜王の証を持ったミミが、竜を利用してたんだ」
俺は真剣な顔で頷いた。
「けっ!ひでぇ話だな」
ダエグが床に唾を吐く。でも、アルシズが酒を注いでやれば、直ぐに機嫌が治る。
「でもこれで、竜王の証は無効になったんだろ?」
「あ、そうか!めでてぇな!」
2人は嬉しそうに酒を飲んだ。俺も作戦が上手くいって嬉しいよ。
「ああ!今頃そいつら皆、正気になってると思うぜ。だからさ、飯食って休んでから、カノの所に行こうぜ。もう苦しまなくていいって教えてやらないといけねぇからな!」
俺は仲間のコップに乾杯した。
カノが唯一気にしていた竜王の証。オセルが死んだ事でそれが無効になったと聞けば、もう彼女の生きる意味はなくなる。カノは喜んで自らフラン様の血を飲み干すだろう。
「……なあ、ハガル。こいつら誰だ?」
その時、ハガルの目の前に、ボサボサ頭が、ぬっと現れた。見れば、キローガ坊ちゃんじゃないか。
気が付いたのか。案外丈夫に出来てるな。
俺は立ち上がって、店員に席を1つ用意させた。
「キローガ!紹介するよ、ダエグとアルシズだ。で、こっちはキローガだ。一緒に飯でも食おうぜ。んで、しっかり休んだら、明日はフラン様に合わせてやるぜ!」
ファリアスを取られたのは誤算だったけど、魔物だらけの世界になれば、またすぐ取り戻せる。その時の為に、面倒だけどキローガは最後まで生かしておかなくちゃ。
ハガルはキローガのコップに酒を注いだ。
翌日、ハガルたちはフラン様の寝所を目指した。カノに会いに行く為だ。人間に騒がれたくない俺たちは、徒歩で丸一日かけてようやく竜の城跡に到着した。……なのに。
フラン様の寝所に繋がる洞窟には、道を塞ぐ様に、爺さんが住んでいた。
「ティール……お前、こんな所で何してんだ?」
狭い洞窟の中には、本だの鍋だのの日用品が、無造作に散らばっていた。爺さんになったティールは、そのど真ん中で、さも日常であるかのように年期の入った揺り椅子を揺らしていた。見れば、その奥にはベットまで置いてある。……どっから持ってきたんだ!?
爺さんは俺を見て、嬉しそうな顔をした。
「お!?お前は確か!!…………誰じゃっけ?」
可愛く首を傾げている。
「ハガルだよ!!」
耄碌したらしい。魔石を食べ過ぎたんだろう。ティールは、ふぉっ!と笑う。
「ああ、そうじゃったな、ハガル。こんな沢山の客人を連れて、ワシの家になんの用じゃ?」
キローガがたまらず前に出た。
「客人ってさ……俺の事、忘れたのかよ、マルス様よぉ!」
ティールはかつて、ファリアス城でマルスの名を語り、キローガに魔法指南をしていた。だが爺さんはポカンとしている。
「よく来たな……。……まあ座れ」
「絶対、覚えてねぇな……」
「ティール爺さん、いつの間にベットまで持って来たんだ?お前さんの家は、ファリアスの丘にある洞窟だったろ?」
ダエグが強行突破しようと重厚なベットに手をかける。ティールはよっこらしょと立ち上がり、それを片手で阻止した。さすが戦士の竜。爺さんになっても、力はダエグを超えるらしい。
「ああ?ダエグ。ワシの家はここじゃよ?」
言ってる事はボケ老人だがな。
「ダエグは覚えてんだ……」
「家は忘れたのにな……」
「あ!そういやワシ、ちと本を探しに戻ったんじゃが見つからんでの。確かこの辺りにあったはずなんじゃ。お前さんら、何処にいったか知らんか?」
家でもない場所でそれを探すのか?ハガルは、ため息をついた。
「爺さん、今は時間がないんだ。ほら、客人連れてるだろ?また今度探してやるから、そこどきな」
ハガルは適当に流しとこうと爺さんの肩を叩いた。なのに爺さんは、何故か俄然やる気になった。
「そりゃぁ本当か?」
「おうよ!だから、どけ!」
「本当に探してくれるんじゃろうな、ハガル。竜は1度言った約束は違えてはならんぞ」
「……なんだよ、急に」
「じゃワシ、お前について行く。約束を反故にされたら、かなわんからな!」
「マジか……」
それから俺たちは、爺さんのベットを動かし、狭い洞窟を抜けるた。そして、爺さんを連れてカラドコルグの溝を登り始めたんだが、これがかなりの苦行だった。
「知っておるか?このカラドコルグはのぉ。その昔、フラン様が天から落ちた時にふたつに割れてしまったと言われておっての……」
「爺さん、その話、もう3ループ目だ……」
ティール爺さんはひたすら1人で喋り続けていた。最初は適当に相打ちを打ってたが、ただでさえ険しい道のりだ。すぐに誰も口を開ける元気もなくなった。
「じゃ、城が出来た時の話をしてやろう。あの城はの、オセルがルーン城に感銘を受け、それ以上のモノを作ると言い出しての……」
「それ、もう5回は聞いたぜ……頼むから黙って登ってくれ。おい、キローガ、止まってんじゃねぇよ!」
見れば最後尾について来ていたキローガがかなり下に見えた。フラン様に会えるという餌につられてか、意外にも頑張っていたが、ここまでか……。
俺はダエグに目配せした。ダエグは膝を着いたキローガを抱えあげて登ってきた。
「風に飛ばされるかと思った……気力まで削がれちまって……もう動けねぇよ」
キローガの気持ちはよく分かる。だが、あと少しなんだ。
「また空を飛びてぇのか?」
「う……歩くよ……」
「空と言えばの、ワシがまだ生まれたての頃にの……」
「ダエグ、爺さんを落とせ」
「バカ言うな。爺さんは戦士の竜だ。死ぬのはこっちだぜ」
「……ワシはその時、空を見て悟ったんじゃ!ワシこそが、戦士の竜だと!」
「頼む!誰か!黙らせてくれ――!!」
それでもどうにかてっぺんまで登り、ようやくフラン様の寝所に入る事が出来た時には、本当に泣くかと思った。いや、実際アルシズとキローガは泣いていた。爺さんは疲れたのか、その場に座り込み、ようやく寝てくれそうだ。
フラン様の寝所は、相変わらずゴツゴツとした大きな氷の塊の様なクリスタルの結晶で覆われていて、寒々しい。その中央に、大きな家程ある闇の塊が蠢いていた。
「……誰?」
すぐにフラン様の纏った闇が引きちぎられ、小さな人の姿がキローガの前に出てきた。
以前見た時より纏う闇が濃くなっていて、その姿は赤い髪が辛うじて確認出来る程度。闇が重くのしかかっているようで、カノはその場で膝をついた。
良かった。それ以上近づかれては、こちらも闇に飲み込まれかねんからな。
「カノ、朗報だ。オセルがフラン様の血を飲んでくれたぞ!」
俺はなるべくカノを喜ばせるように声を弾ませた。
「……え?本当?オセルが?」
カノが顔を上げ、よろよろと立ち上がった。
「ああ。オセルはフラン様の元に還る事が出来たぞ!」
「まあ!そうなの?……ああ!なんて……素敵!」
カノが嬉しそうに両手を広げてこちらに歩いてくる。俺はその分、後ろに下がった。闇を纏った女を抱きしめる趣味はねぇからな。
カノもすぐに正気に戻った様で、悲しそうに自分の姿……黒いモヤのような闇を見つめた。俺はその時が来たのを感じた。
「カノ、もう苦しまなくていいぞ。お前もフラン様の元に還るといい」
カノは俯いたまま頷く。
「……そうね。貴方もそれを望んでいるのでしょ?もう私の相手をしなくてすむからね」
カノが顔を上げて笑った。その笑みは暗く、ゾッと背筋が凍った。
俺は腹を探られないように、微笑みを浮かべる。
「俺はお前の為を思って言っているんだぜ。皆に忘れられて取り残されるより、フラン様の元に還って、共に闇を払った方がいいじゃないか?」
「……そう……よね」
カノは少し怖気付いた表情をしている。俺は背中を押してやる事にした。
「フラン様の血は準備出来るか?」
「ええ。また、注ぐ物を頂戴」
俺は少し前に出て、前に渡したのよりも数段でかい瓶を3つ並べた。カノは眉を顰めたけど、これで喜ぶはずだ。俺は優しく笑いかけた。
「カノ、今回は前より沢山くれ。俺も含め、他の竜たちも、フラン様の元に還りたがるに違いないからな」
カノが消えれば、もう二度とフラン様の血は手に入らない。出来るだけ沢山の血が欲しかった。
「まあ!そうなの?……分かったわ、待ってて」
カノは嬉しそうに頷くと、闇に消えた。
「これが……フラン様だと?姿が見えないじゃないか」
カノが消え、大人しく様子を見ていたキローガが、恐る恐る俺に並んだ。人は闇を目の当たりにして、ようやく恐れを抱く。それを生むのが自身だと言うのに。
「フラン様はな、こんな風に、お前ら人間の生み出す闇に覆われているんだよ。闇を浄化する為にな。それをお前ら人間は、フラン様を魔王だ、討伐するべきだと騒ぎ立ててるんだ」
「おとぎ話だと思ってたぜ。でもさ、討伐を指示したのはカストロ公爵だろ?俺たちは言う事を聞いただけだ。関係ねぇ」
その時、ふわふわと黒い灰が舞い始めた。
「やばい。魔が剥がれたぞ!口を塞げ!」
聞かれたか……。辺りが暗くなり、風が何処からともなく吹いてくる。それは黒い灰を巻き上げ、外へと吐き出す。……地上に魔物の種が撒かれたな。
「貴方、そのせいで、どれだけの人間が苦しんだと思っているの?」
風が収まり、清浄な空気を吸い込んだ俺たちの前に再び姿を現したカノは、赤い怒気を纏っているように見えた。
「空気は闇に汚染され、魔物はとめどなく溢いている。それでも還元出来ない闇により、土はじきに死んでゆくでしょう。疫病が流行り、弱き者から命が失われる。そんな世界にしたのは、他の何物でもない、あなた達でしょ?」
隣でキローガが首を傾げた。
「はあ?俺たちが?んな訳ないだろ。今、魔を振り撒いたのはおまえじゃないか」
命知らずめ!キローガが余計な口を叩いた途端、カノが紅く燃え上がった。これは炎を吐くぞ!ハガルはキローガに飛び付いた。
「伏せろ!!」
「カノ……カノじゃないか!!なんじゃ、その姿は!?」
だが、炎のブレスが吐き出される寸前、すぐ横で影が動いた。いや、影じゃない。黒いローブが素早く動いたのだ。
「爺さん!?」
一瞬の事だった。
今まで大人しく見守っていた耄碌爺さんは、爺さんらしからぬスピードでカノに近づいたかと思えば、次の瞬間、俺たちの目の前から消えていた。
「「……え?」」
突如訪れた静寂に、俺たちは何が起きたのか理解出来なかった。
「……カノは?」
何が起きた?カノがいない。
……爺さんが連れて行ったのだ!!
実感と共に徐々に湧いてくるのは、怒りだった。
「お前ら!何でティールを連れて来たんだ!」
今まで隠れて様子を見ていたのか、クリスタルの影から仲間たちが姿を現した。
秘密の竜パースが、黒いボサボサの髪をかき混ぜて、行きどころのない怒りをぶつける。
「わしらがこんな陰険な場所でどれだけ我慢して、見張ってたって思ってんだ!キローガ、おめぇ!」
胸ぐらを捕まれ、揺すられた。だが、力の竜ソウェルの頭は俺の下にある。俺は思わず、そのツルリとした頭をペチンと叩いた。
「うるせえ!何で止めなかったんよっ!テメェら、その為に潜んでたんじゃねぇのかよ!」
「油断したに決まってるのじゃ!!」
ソウェルは悪びれもせず、胸を張った。このずんぐりとした体型。どんなに急いだとしても間に合わなかっただろう。俺は天を仰いだ。
「はぁ……転移石は使えなかったんじゃなかったのか?」
ティールも最初からアンスールの仲間だったって事か。アンスールめ。ライゾとスルトだけじゃなく、どれだけ仲間を集めたんだ?
「……クソっ!!やられた!!あのジジィ……」
全ては計画通り。そんな気がした。
「追うか?」
ソウェルが腕まくりするが、奴らの行く場所は知れている。ウィンの聖域だ。
敵地に勢いだけで乗り込むのは無謀というもの。ハガルは悔しさに唇を噛んだ。
だが、天は俺を見放してなかった。
「おい!ハガル。瓶が残ってるぞ!」
アルシズの声に顔を上げれば、フラン様の血が並々と注がれた瓶が2本。ポツンと置き去りにされているのが見えた。爺さんも全ては持って行けなかった様だ!
「ハハッ!なら、問題ねぇ!カノはくれてやれよ!」
「え?いいのか?」
「闇を敵地に送り込めたんだ。逆によくねぇ?フラン様程ではないけどさ、カノの闇も相当なもんだぜ。きっと今頃、爺さんも病んでるぜ!」
俺は瓶を拾い上げ、どす黒いフラン様の血液に蓋をした。
「ハガル、それより早くここを出よう。何か、闇が濃くなった気がする」
そう言うパースの横でキローガがバタリと倒れた。
「おう!」
俺はパースに頷くと、ダエグに目配せした。ダエグが具合の悪くなったキローガを抱えてくれる。
仲間っていいよな。
「竜族委員会が集結したんだ。そろそろ反撃に出るか」
俺たちはフラン様の寝所を急いで後にした。




