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第6話 ヒホンにて・続

カンガルー型の魔物をほぼ完全に消滅させたシンは、母親らしき人物の元へ歩いていく。


「無事か?」


母親の姿を見ると、血だらけで右の二の腕から先がない。どうやら先の魔物に襲われているときに食いちぎられたようだ。出血も多く意識が朦朧としている。再生させてやりたいが魔族は再生能力が異常に高い故、回復魔法を必要としないので使えないものが多い。使えるものもいるが魔族の中でも神官的存在のやつのみだ。


「待っていろすぐに息子の元に連れてってやる」


返事はないが伝わってるはずだ。肩に担ぎあげる。とんだ時に衝撃が入らないよう母親らしき人物に障壁魔法をかける。1分後、宿が見えてきた地面へと降り、左手で扉を開ける


「帰ったぞ」


子供にこの姿は見せぬほうが良いだろうと思いあらかじめ中にあの少年が居ないことを探知で確認しておいた。2階の部屋いるようだ。


「おかえりシン、大丈夫だった?」


当たり前だ。そんなこと聞くな


「あぁ、それより母親を治してやれ」


母親を近くの台に静かに下ろす。マリアは母親の姿を見て一瞬驚いた顔をしたがすぐに駆け寄り魔法の準備を始めた。レオルドはこのような姿の人間を見ても眉ひとつ動かさない。


再生リジェネ


傷だらけだった身体が再生した。母親が意識を取り戻す。どうやら無事生きているようだ。母親はシンを見つけるとすぐ起き上がり


「先程はありがとうございました!」


と勢い良く頭を下げる。


「例なら貴様の息子に言うのだな。貴様の息子がここに助けを求めに来た。俺は手を貸しただけだ。息子なら2階の部屋で寝ているだろう。怪我をしていたがそこの女が治したはずだ」


淡々と述べる。ドタドタドタ、と階段を降りる音が聞こえた。少年が降りてきたようだ。


「かーちゃん! 良かった、生きてた。」


母親に抱きつく少年。母親は彼の頭を撫でる


「ありがとね、かーちゃんのために助けを呼んできてくれたんだね。」


しばらくその2人は抱き合っていた。これが親子というものなのか。俺には物心着いた頃には既に両親がいなかったので母親というものがどんな存在かわからない。レオルドもだ。じっと、抱き合う2人を見つめていると


「ありがとう! お兄さん!」


と、母親と手を繋いだ少年が言う


「あの、お礼をしたいと思いますので、なにか、、」


息子の手を握った母親が言う


「いらん」


人付き合いは苦手だ。誰かとワイワイ騒ぐなどしたこともなければしようとも思わん。それに別の理由もある


「でも、助けて貰ってお礼もしないとなると、」


「そこまで言うのであれば魔物に襲われた経緯を教えろ」


そこで詳しく母親とその息子に話を聞いた。なるほど、いきなり現れ、食材の買い出しで近くの市場に行こうとしていた矢先に襲われたというわけか。しかしあそこの周りには何も無かった。


「そうか、わかった。気をつけて帰るのだ」


話が終わり、親子を帰す。親子は席を立ち上がり深くお辞儀をして宿から出て行った。そして数秒後、


「…シン」


と、マリアが声をかけてくる


「あぁ、わかっている。あれは魔族だな」


マリアも気づいていたようだ。再生をかけた時であろう。再生は勝手に傷が癒えていくかのように見えるが実際は相手の魔力に直接干渉し、自然治癒力をあげているだけだ。死んでいれば使えない。


「わかってたんだ」


何やら複雑な顔をしているマリア


「あぁ」


「いつから気づいてたの?」


「この街に入る前に気配は察知していた」


街が見えた際に同時に魔力探知もかけておいた。その時反応があったのはあの2人だったのか。


「憶測の域を出ぬがさっきの話は嘘だろうな」


少年はともかく、母親は全身に深い傷を負っており片腕も無く、大量に血を流していた。そんな状態で生きられる人間はいない。突発的な魔王の出現と、先程の魔族、ファルア第4区域に現れた魔王は誰かが意図的に発生させたのやもしれぬ。マリアは暗い表情で黙っている


「おおよそ、人工的に魔王を発生させる実験か何かをしていたのだろう。それで魔力の制御に失敗して魔物が暴走。何とかその場を逃げた少年がちょうど門で暴れていた俺達を見つけ、助けを求めに来たという流れだろう」


1度、席につき仮説を立てる


「そんなに切羽詰まった状況ならなんですぐに話しかけてこなかったの?」


マリアも席につき腑に落ちないという表情でこちらを見てくる


「たぶん俺たちのことを探っていたのだろう。この世界じゃ見かけない格好をしているしな」


誰かにつけられている気配を感じてははいたが不意をつかれたところでやられることは無いと思い無視していた。たぶんレオルドもそうだろう。


「そうなんだ」


夕暮れ時までまだ時間がある。この当たりの店でも回るか。マリアがこの様子では調子が狂う。道中倒したサボテン型やサソリ型を売り、その金でなにか食い物でも買ってやろう。

ガタッと席を立つ。


「マリア、夕暮れまで時間がある。街を見て回るか」


この一言で一気にマリアの表情は明るくなった。わざわざ外に連れ出す必要もなかったか? まぁいい、こっちの世界の様子も見ておきたいしな。先程の戦闘で余分に魔力を放出し力の差を見せてけておいたから、街であの2人に襲われる心配もないだろう。


シンと、レオルド、そしてマリアの3人は宿を出た


「素材の買取所はどこにある?」


道中手にしていた棒を握り締めスキップしながら楽しそうに跳ねているマリアに問う。そういえば前にレオルドが勝手に棒を使ったとかなんとかで、怒られていたな。そんなに大事なのか? と思っているとマリアが答えた


「ギルドで取引できるわよ」


「そうか」


3人はギルドの方向へと歩いていく。聞けばこのヒホンはファルア第4区域で1番面積が広いらしい。東西に広がっている土地をひとつのギルドで管理するのは効率が悪いため東と西に1つずつ設置してあるようだ。俺たちは近い方の西側にあるギルドへと向かった。


「あ!  シン、もう問題は起こさないでよ」


何かを思い出したようにパッとこちらを向く。マラガのギルドでのことでも思い出したのだろう。


「ああ、安心しろ」


周りを様子を窺いながら答える。ここの土地の家は岩で作られたものが多いようだ。岩を積み重ねたり、大岩をくり抜いたような家が多い。


「安心できないんですけど?」


「しつこいぞマリア」


そうこうしているうちに西側のギルドについた。外装は街に合わせてあるようで、岩で作られていた。木の扉を押して中に入る。中の配置はマラガのギルドとほぼ同じだった。岩で作られているところ以外は。人もたくさんいる。俺たちは人混みの中を掻き分け窓口へと向かった。


「素材を売りたいのだが」


窓口の人間に話しかける。


「ギルドカードはお持ちでしょうか?」


「ない」


「それでしたら登録なさると買取価格が1割上乗せされますが、いかがいたしますか?」


ギルドカードというものがあるらしい。だが、当然俺には必要ない


「必要ない。素材だけ買い取ってくれ」


「承知いたしました。ではあちらの方に素材を出していただけますよう、お願いいたします」


と言い、小さめの倉庫に案内される。


「こちらにお売りしたい素材をおいてください」


俺は空間魔法陣を展開し素材を取り出していく。


ご覧いただきありがとうございました。


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