第26話 魔界オメガにて
「ついてこい」
会議を終え、シヴァ以外の3人が魔卿が全員外へ出た後、シンがマリアへと声をかける。シヴァを抱いたまま椅子から立ち上がる。
「私にさしずしてんじゃないわよ!」
「いいからこい。人界に行くぞ」
マリアはしぶしぶといった様子で立ち上がった。そうして扉の外へ出た。4人で歩く。
「え? 対立してるんでしょ? いきなりいって大丈夫なの?」
「誰に言ってるんだ」
「あぁ、歴代最強だったわね」
「なぁ、お兄」
「なんだ?」
「その女が睨んでくるのじゃ」
マリアはシンに抱かれているシヴァを会議の時からずっと睨み続けていた。
「おい、シヴァを睨むな」
「だって!」
「だってもクソもあるか。やめろと言ったらやめろ」
「ぶー」
「なにがぶーだ」
「べー!」
「黙れ」
不本意ながらもマリアは睨むのを止めた。
「お兄、喉が乾いたのじゃ」
「そうか、では1度休憩しておくか」
シヴァの一言でシン達は一度シヴァの研究室によることになった。少し歩く。そして、おどろおどろしい部屋についた。機械やら、薬品やら、変な生物やらがそこら中に所狭しと並んでいる。
「やはりいつきてもシヴァの部屋は物騒なものばかりだな」
「気味が悪いわね…この部屋」
「じゃあ、お茶を準備するから待ってくれー」
そう言うとシヴァがシンの懐から軽快に飛び降りて奥の方へと走っていった。シンとマリアとレオルドの3人はソファに座る。
「狭いわね…」
仕方ない、なんせ2人用のソファに大の大人2人と中くらいの女神が座っているのだから。
っは! これってもしかして…抱っこのチャンス!? 今なら仕方あるまいとか言って膝の上にのせて、そのまま我慢できなくなったシンが私を…!!!!!???
「シン! 私を膝にのせる権利をあげるわ!」
そう言ってマリアは立ち上がった。そしてシンと向かい合う。
「断る」
「なによ! 狭いじゃない!! あの女の子だって抱っこしてたくせになんで私はしてくれないわけ!?」
「お前だから断っているのではない。シヴァだからのせているのだ。この意味がわかるか」
「わかったわ、もしかして私のこと好きだから触れることすら恥ずかしくてできないってことね」
「呆れて言葉もでぬ」
「いいじゃない! 私だって甘えたい時くらいあるっつーの!」
「甘えたければ甘えろ。ただし俺以外にな。」
そんな言い合いをしてるとシヴァが戻ってきた。手にはなにやらコップが一つ握られていた。
「これ飲んでみて欲しいのじゃ!」
飲んではいけないような色をした飲み物らしきものを差し出してきた。
「なんだ? これは」
「それは飲んでからのお楽しみなのじゃ!」
「これ絶対飲んじゃいけないって色してるわよ…私は嫌だから!」
「お前に飲ませるものはないのじゃ! 黙ってろ!」
「はー!! 私を女神様だと知ってのことかー!!」
またシヴァとマリアの睨み合いが始まった。
「はぁ、やめろ。鬱陶しい。これは俺がのむ。マリア、お前も黙っていろ。シヴァ、こっちにきなさい」
シヴァが俺の足の上に飛んでくる。
「これを飲めばいいのか?」
「そうじゃ! 全部!」
「シン! それ明らかに死ぬやつよ!」
マリアが止めようと声を荒げるがお構いなしに飲んだ。
「は…本当に飲んだ…!」
「まずい」
「それは仕方ないのじゃ」
飲んだ直後から全身が熱い。まるで炎に焼かれているようだ。しばらくして、急に視線が低くなり始めた。シヴァが大きくなっているのか…? いや違うな、俺が縮んでいるようだ。
「シンが…小さくなった…!?」
「どう言うことだ? シヴァ」
「こ、声も!!?」
「体を小さくする薬じゃ!」
「小さくと言うより幼児化してるように見えるけど…にしても…かわいい…」
マリアの目が変わる。獲物を狙う猛獣のような目つきだ。
「幼児化か…多少魔力は制限されているが問題ないだろう。いつ元に戻る」
「なんか…その姿でシンの口調って…なにこの気持ち!?」
「うるさいぞそこの女! んー試作じゃからよくわからんのじゃ」
「そうか。戻らぬものは仕方ないな、もし戦闘になればレオルドに任せろとしよう。もう喉は潤ったか?」
「おー!」
「それでは行くか。」
「ちょっと待って!」
「なんだ? 何か問題か?」
マリアが声を上げる。
「シンを抱っこさせて!」
「断る」
「…な。お願い!! もう一生のお願いだから!」
「断る」
マリアがぐんっと近寄ってきた。
「お願いします!」
――シン、抱っこくらいいいんじゃないか?幼児化してるんだし…




