第15話 ストーリー序盤でチートキャラ当てたらそうなるよね
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『スライム。実は魔王倒せます。〜冒険者から舐められるスライムは超晩成型です〜』
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マリア神殿の仕事部屋。異世界転移に成功したシンとレオルドは、また魔王が現れたことを知り、討伐へと向かおうとしていた。
「え、エリーもいいんですか?」
「ああ、大丈夫だ。今回は別に急いでいる訳では無いからな」
シン、本当は何しに来たんだろ? いや嬉しいけど。私に会いに? じゃないわよね。シンが常識ハズレなのは、ヴリトラの一件でわかってたけど、異世界を行き来するなんてその名の通り神業よ。ミカエル様が知ったらどう思うだろう。
まぁいっか。(良くはない)
「じゃあ、行きましょうか!」
「マリア、お前が仕切るな」
またマリアがシンに突っかかろうとする。その後ろで。早速大量の荷物を手にしていたエリーが3人の様子を見て不安そうな顔をしている。
「あの、そんな薄着で大丈夫なのですか? メリージャは極寒の地ですよ?」
いつそんな大量の荷物を準備したのか。
「大丈夫よ! シンがいれば魔法障壁を張ってくれるから! あと、普通にその荷物は多すぎるわ。今日は日帰りだと思うから何もいらないわよ?」
「……日帰り? 魔王討伐? え、日帰りで倒せるものなのですか?」
亜種クラスでも最低で、勇者を召喚して討伐し終えるまでに1ヶ月はかかる。それを日帰りで、しかも遠足感覚でいるマリア。自分の常識がひっくり返される瞬間はなんとも言えない感情が生まれるものだ。エリーはそれを今味わっていた。
「おーい? ぽかんとしてどうしたの?」
「はっ、ちょっと理解が追いつかなかったもので、、、気が動転してました。」
「まぁ真面目に仕事してきたエリーから見たらそうなるよね」
ははは、と笑うマリア。実際この世界、ファルア第四区はミカエル様が総括している世界で1番危険度も引くく、今まで魔王が発生することもなかった。それ故なのか、マリアは魔王がどれくらい強いのか、どれくらいの勇者を召喚すればいいのか、等の討伐に必要不可欠なものを全く知らない。それに、初めての魔王討伐でチートキャラが来れば感覚がおかしくなるもの仕方ないのだろう。
「わ、わかりました。お願いします。」
「任せておけ」
前回の3人にエリーを加えた一行は、転移門を使い、メリージャに出た。
普通はいきなり敵の本拠地に行くなどありえない。しかし、今のマリアは『ストーリー序盤でチートキャラを当てた』時のような状態。『対策せずにボス特攻』これがマリアの『常識(当たり前)』になっている。
「ほんとに寒くないです!」
エリーが感動して、雪の上でジャンプしている。世界の危機だと言うのにこちらも危機感がない。似たもの同士だ。
「この辺りなのだろう? 前のように禍々しい雰囲気ではないな」
「確かに。でもまぁいいじゃない! 早く倒して帰りましょうよ」
魔力探知をかけているが魔王らしき反応はないな。
「……魔王は居ないようだぞ」
「え? そんなわけないわよ? ちゃんと確認したから」
「魔族は数人いるようだが、それらしき反応はない」
え? どういうことよ? 魔王がいない? そんなわけないわ。
「どういうこと?」
「この世界の女神であるお前にわからぬものが俺が分かるわけなかろう」
マリアは考え込む。確かにいたはず。なのに、ここに着てみると、いない? そんなことって。
「どうなされました?」
シンとレオルドはその声を聞いた瞬間、ばっ、と後ろを振り返った。後ろに立っていたのは背の小さな老人だった。黒いローブを身に纏っている。
その老人の登場に、焦っている男達がいた。シンとレオルドだ。
どういうことだ。魔力反応はなかった…。俺が気づかなかった? 俺の魔力探知の精度を持ってしても…? 他にも可能性はあるが、もし仮にそうであればこいつは只者ではない。
老人の問いにマリアが答える。
「ちょっと用事があってここに来たんですけど、見失っちゃってて」
かなりあやふやに答えている。民を心配させないという女神なりの気遣いなのだろう。
「何かを探しているということですな?」
その老人は食い気味に聞いてきた。
「ま、まぁ、はい。」
「もしかしたらそれはもうここには『いない』のかもしれませぬな」
…は? どういうことだ? マリアは用事を見失ったとは言ったがそれが生き物であるかのような発言はしてないぞ。
「そうかもしれないです。」
エリーとマリアはこの老人の言葉になんの不信感も覚えていないようだった。エリーは未だに雪で遊んでいる。
「フォッフォッフォ。では気おつけなされ『異端者』達よ」
老人は後ろを向き立ち去ろうとしていた。それをシンが呼び止める。
「おい、待て貴様。インソリュートスとはなんだ。それに貴様は何者だ」
振り返った老人の眉間には深い皺が刻まれていた。
「黙れ小僧。時が来ればわかるわ。わしは『知者』とでも言っておこうかのう」
そういうと老人の姿が消えた。魔力反応もない。どうやら転移でここに来たようだ。だがまた謎が増えた。
「あの人、変だったわね? この世界では転移は禁止されてるのに」
「そうですよね? エリーも思いました。」
「ソフィスト? と、インソリュートス? てなんなのかしら?」
「エリーも聞いた事ありません」
あれは只者ではない可能性がある。あの距離にいてあいつの強さがわからなかった。ソフィスト…か。嫌な予感がするな。
「レオルド」
「…御意」
2人は静かにアイコンタクトを取った。




