第13話 カムバック
第2章スタートです。
魔界オメガにある大きな城、その訓練用広場に異世界から帰ってきたばかりの2人の男がいた。どうやら無事に元の世界へと帰ることが出来たようだ。
「無事に戻ってきたな」
1年で1日か、1日でおおよそ4分。約25分ほどこの世界にいなかったことになる。
「念のため、一度魔卿どもを集めて何か異常がなかったか確認しよう」
「御意」
レオルドが消える。シンも協議室へと向かう。広場をでて、角を曲がった先にある協議室へと続く廊下で、脇道から少女が飛びついてきた。
「おにい! 会いたかったのじゃ」
「シヴァか、久しぶりだな」
シンは、その飛びついてきた少女を片腕で抱く。
「久しぶり? 今朝あったぞ?」
不思議そうな顔をするシヴァ
「時間の流れが違うところに行っていてな」
「そうなのか?」
魔族はシンの非現実さを理解しているので、基本的になにを言われても驚かない。魔卿は尚更、シンの言うことには驚かない。
「それより、今から緊急で会議を開く。俺のいない間に何かなかったか確認をする」
「了解したのじゃ!」
シンはシヴァを抱えたまま協議室へと向かう。重いドアを開けば、そこには既にレオルドと他の魔卿3人が集まっていた。
「待たせたな。シヴァ、座れ」
「了解なのじゃ!」
その少女は他の魔卿と同じ席に座った。
「急に集めて申し訳ない。俺とレオルドが25分ほどこの世界からいなくなってな。その間に何かなかったか?」
「特になにもなかったぞ」
そう答えたのは、細身だが筋肉がしっかりと付いている頭に角の生えた男だった。態度がでかい。
「サタンか、貴様にはなにも聞いていない」
「相変わらずつれねーやつだな」
どかっと背もたれに待たれかかる。
「私も特にはないヨ。人間側も特に動きは見せてないヨ」
次に答えたのはスタイルのいい、いかにも大人の女という感じの雰囲気を出す人物だ。
「そうか。ベルゼブブ、引き続き魔界オメガの政は任せる」
「わかったヨ」
「私も特にはなにもありませんでした」
白髪の男が答える。
「ルシファーか。わかった」
「ワシもなにもなかったぞ! あ、強いて言うならさっき試作品が暴走して城の外壁が吹き飛んだのじゃ。」
一緒に連れてきた少女シヴァが答える。この少女も魔卿だ。他に類を見ないほどの天才発明家で、その技術を最大限活かすために魔卿の一角に入れた。魔器具に関する知識は群を抜いているが、まだ精神が未熟な1面がある。
「それはなにもなかったとは言わんぞ。会議が終わり次第修理しろ」
「了解したのじゃ!」
元気に返事をする。返事だけはいいシヴァ。
「もう一つ聞きたいことがある。神と言うものを知っているか?」
「「「知ってる」」」
ルシファー以外の声が揃う。
「この世界にもう神はいません」
「どういうことだ? 詳しく説明しろ」
ルシファーはこの中で一番長く生きている。先先代より魔皇に使えていると聞いた。
「神族は数百年前、魔皇様のお父上にあたる先代様が滅しました」
「なぜだ?」
「まだ人間がほとんど大陸を支配していた時代、神が私たちの前に現れ、魔族を滅ぼそうとしました。しかし、その当時、歴代最強と言われていた魔皇様のお父上がそれを阻止し、さらには追い討ちをかけ根絶やしにしたのです」
「そうなのか」
「ワシも神から魔族に転生したんだぞ!」
シヴァが元気よく手を上げる。
「そうか」
シンは落ち着いた様子で返事をした。
「なぜ驚かないのじゃ?」
驚くと思っていたのだろう。不思議そうな顔をしている
「逆になにに驚けばいいのだ?」
「確かにそうなのじゃ」
「恨みがあって魔族に復讐するなどと言い出そうがお前らでは俺には勝てんからな」
「「「確かに」」」
ルシファーを除く魔卿の声が重なった
「以上だ。これからも魔界のことはお前たち4人に全て任せる」
それで緊急会議は終わった。各々が協議室から立ち去る。
「ルシファー、少しいいか」
シンが部屋から出ようとしていたルシファーを引き止める
「はい」
部屋を出ようとしていたルシファーはさっと向きを変え、こちらを向く。
「お前は異世界に召喚されたことはあるか」
「はい」
「あるのか。それはいつだ」
「先代様がこの世界の神を滅した後のことです」
「なるほど、お前だけか?」
「いえ、先に行ったのは先代様です。その後、先代様が私を召喚するようあちらの神に」
「そうなのか」
父上も俺と同じことをしたというのか。世界なら他にもたくさんあるはずだ。その中の一つのこのガルメニア世界、しかもそこの魔皇を二代に渡って召喚する、さらには同じ行動をするという偶然があるのか? 神が滅んだことに関係があるのか? ダメだ。何もわからん。だが、気になることだ。
「そう言えば父上について何も知らなかったな、長く使えているお前ならわかるだろう」
「先代様は、既に死んでおります」
「どういうことだ」
「先代様は異世界に召喚され、私とともに各地に発生していた魔王を討伐していきました。しかし、最後の一匹を討伐する直前に姿を消したのです。その後、私の元に2人の赤子とともに手紙が届きました。『この子らの名はシンとレオルド。俺の子だ。ルシファー後のことは頼んだ。オメガに無事連れて帰り、立派に育ててくれ』と書かれたものでした。私は混乱を防ぐ為、魔界に戻った後、『神との戦いの際に、自らを犠牲にしてこの子たちを守った』と、そう魔族に伝えました。なので先代様は死んだことになっているのです」
「まだ死んだとは限らんということか。その世界の神の名はなんと言った?」
「『ファルア』と、そう言っていました」
「ファルアか。そうか。すまないがもう1度あちらの世界へ行ってくる」
「どうなされたのですか?」
「父上に会いたくなった。それだけだ」
立ち去ろうとしたその時ルシファーに声をかけられ振り返る。
「魔皇様、レオルド様とご兄弟だということをご存知だったのですか?」
「いや」
「ならば、どうして驚かれないのですか?」
「あいつは人とは違うものが見えているようでな。まだよく口を聞いていた頃、剣を交える時にそれっぽいことを言っていた。今その言葉の意味が理解できた」
「なんとおっしゃっていたのですか?」
「『半分同じ』だ」
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