表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/41

特別編 第1話 勇者帰還後のマリア

一章を早く切り上げてしまい、脚本が追いついていないので、固まるまで特別編をお楽しみください。

シンとレオルドが帰った後、マリアは1人ソファでうなだれていた。


 「あーーー。仕事をしなくてよかった至福の時がー。イケメン2人と一緒に旅できた最高の時間がー。」


 マリアは今、「恋人と別れた後に付き合っていたことを思い出すとなぜか綺麗な思い出しか出てこない」あの現象に陥っていた。


 「あああーーー。」


 「マリア様。いつまでそうしているつもりですか。後、仕事してないのはいつものことです。」


 マリアはシンとレオルドが帰還してからかれこれ2週間はうなだれていた。もちろん着替えなどの身だしなみはエリーがお世話しているので毎日きちんと整えられている。


 「だって、楽しかったんだもん!」


 ソファに顔を押しつけ足をバタバタとさせるマリア。


 「もう。召喚した者に情を移すなと昔あれほど言われてたじゃないですか!」


 エリーはマリアの服を引っ張ってソファから剥がそうとする。


 「知らない知らない知らない!」


 埒が明かない。何かいい方法はないかな。あっそうだ。


 「ミカエルs」


 「はいもう吹っ切れた〜。仕事仕事! 女神が召喚した勇者なんかに固執するわけないじゃない!」


 ばっとソファから起き上がり仕事机につく。この変わりようを見ればわかるように、ミカエル様は絶対なのだ。

 ミカエル様には絶対に逆らえない。人間より遥かに強い女神や、我々天使が束になって掛かろうとも、ミカエル様がその気になれば手も足も出なくなる。でも、ミカエル様は優しいし、みんながミカエル様を尊敬してる。だからそんな事は起こらない。


 それにしても、マリア様に対しては効果絶大すぎてなんだか悪い気がします。仕事してくれるのはいいんですけどね。


 「私が勇者なんかに、私が勇者なんかに、、、もうダメ! やっぱ無理!」


 そう言うと、マリア様はソファにまた蹲ってしまった。


 「もーー!!!」


 マリア様の元へと駆け寄り揺らす。


 「もう! マリア様! 本当に仕事やばいんですよ! やってください!」


 ソファから剥がそうと必死に引っ張る。


 「もう今は無理なの!」


 「今はって、いつもしないじゃないですか!」


 全然離れない。びくともしない。「ぐぬぬ。」 わあ! ぺち。

 急にマリアが起き上がり、エリーは尻餅をつく。


 「エリー。たまには遊びにいきましょうよ」


 「え。」


 急に? マリア様はまたソファに座った。

 

 「エリーもたまには息抜きが必要だと思うのよね。どうかな? たまには仕事のこと忘れて下界に降りて遊びましょうよ!」


 自分の事を気遣ってくれていると感じたエリーは一瞬だけ嬉しいと思ったが、ある違和感に気づく。

そう。その言葉は、本来天使が女神に対し気遣いで言うものであって、女神が言うというのはありえないのだ。 

 それに気づきムッとした表情になるエリー。


 「あれ? エリー?」


 「私がこうなった原因はマリア様のせいなんですからね?! それなのにをあたかも『いいこと言った』みたいな顔で言われると腹立つんですけど!」


 マリアを、ぽこぽこと叩く。


 「痛い痛い痛い! わかったわよ! 仕事するから! でも、エリーはいかないの?」


 そういうのはなんだか卑怯だと思うんですけど。少しもじもじとしながら答える。


 「い、いきますよ。そりゃ。」


 聞き方がずるいんですよ。本当に。


 「じゃ、決まりね!」


 そういうと勢いよく自分の寝室に走り去っていった。

 なんだろう。なんだかエリー、マリア様にいいように扱われてる気がする。マリア様がどたどたどた、と激しい音を鳴らしながら戻ってきた。


 「いくわよ!」


 戻ってきたマリアの姿に驚く。


 「ちょ、なんなんですかその荷物は!?」


 手には大量の荷物が抱えられていた。


 「女の子ならこれくらい普通じゃない?」


 「何日下界におりるつもりですか?!」


 「一週間だけど?」


 え?





ーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 〜特別編 エリーとマリーの下界旅行 ファルア王国にて〜


 「一週間も下界に降りるつもりですか?! ただでさえ仕事が溜まってるというのに!」


 「大丈夫よ! 2人でやればちょちょいのちょいだわ!」


 自信満々に言ってるけど、なぜ私もする前提なんですか。まあ、どうせしなくちゃいけなくなるんですけど。


 「わかりましたよ。」


 エリーは諦めて身支度をしに部屋へ向かった。洋服や歯磨きセットや、クシなどの旅に使う荷物をまとめる。


 「お待たせしました」


 エリーもいろんなものを持ち歩く癖があるのでマリアと変わらないくらいの大荷物になっていた。それをマリアは気にもしない。似たもの同士なのだ。


 「よし! それじゃ、出発!」


 2人は転移門をくぐる。そしてファルア王国に出た。たくさんの人が歩いている大通りのど真ん中に。


 「なんでこんな人の多いところに出るんですか! ここはまずいですよね?!」


 この世界では転移魔法が禁止されている。それを知っているエリーはまずい事をしたと思いあたふたしていた。


 「大丈夫だって! ギルドに国家予算2年分くらいの寄付したし、このくらいギルドからは何も言われないわよ」


 え? 


 「国家予算って。マリア様何をしたんですか。」


 国家予算という言葉を聞いて唖然とするエリー。


 「私は何もしてないわよ? ただ、シンとレオルドが道中にいた魔物片っ端から狩ってたのを、必要ないからって全部ヒホン東ギルドにただであげたの」


  「そうなんですか。魔王の出現の影響でただでさえギルドも手が出せずにいたのを、たった2人で。」


  「いや、やったのは殆どレオルドね。しかも全部傷がなかった」


 それを聞いて唖然とする。


 「あの化物たちを瞬殺。マリア様、なんて怪物を呼び出してしまったんですか。」


 衝撃的すぎてもうリアクションが追いつかない


 「魔物がそんな強くなってると思わなくてさー、ヒホンのギルド長の話と、シンが魔王で遊んでたのみてから気づいたよ」


 あははは、と笑うマリア。

 

 「マリア様が少しは仕事してたら、そんなことも事前に知ることが出来たんですよ。」


 ムスっとした表情でマリアを見る。


 「まあいいじゃない! 仕事のことはわすれて、旅行を楽しみましょ!」


 むー。元はと言えば仕事をしないマリア様のせいなのに。しかも、その言葉は女神から出てくるのはおかしいんですって!天使が、仕事を頑張ってる女神様に対して言うものですからね! もう諦めモードのエリー。


 「わかりました。」


 「じゃあ、今日はファルア王国で遊びましょう! そうね、まずは宿探し。あそこの宿に荷物を置いて出かけましょ」


 はしゃぐマリア。そしてそれについていくエリー。

 荷物をおいた2人は王国の繁華街へと向かった。


 「こない間にこんなにも変わっていたんですね」


 エリーはキョロキョロと周りを見渡す。エリーもマリアと一緒で単純なのである。先ほどの影は一切なく、もうワクワク気分だった。

 

 「そうよね〜」

 

 少し歩くと繁華街に到着した。エリーが何か見つけたのか、急に立ち止まる


 「わあ! これ綺麗! マリア様! みてください!」


 袖を引っ張りマリアを店の方まで連れていく。

 エリーもやっぱり見た目通りの子供なのね? 袖まで引っ張っちゃって、可愛い


 「これです!!」


 そういってエリーは商品を指さす。


 「おおー綺麗ね」


 そこには綺麗なスノードームが展示されていた。

 エリーはこれが欲しいのか〜。女の子って感じね


 「おじさん! これ2つ。 エリーはどのスノードームにする?」


 「え? マリア様お金持ってるんですか?」


 「当たり前よ」


 「じゃあ、これにします。」


 エリーはサイズが小さめのスノードームを選んだ。


 「はいよ。これはメリージャの景色を模してるんだよ」


 店のおじさんが説明してくれた。

 メリージャって確か、大陸から少し離れた場所にある孤島でしたよね? こんな綺麗な景色なんだ。買ってもらったスノードームを見つめていると。


 「エリー? いきたくなったでしょ?」


 マリアが顔を覗き込んでくる。


 「は、はい。少しだけ」


 「そうでしょ!! 明日行くわよ!」


 そんないきなり?! 

 そして、ふたりは店を離れた。


 「ところで、マリア様はなぜお金を持ってるんですか?」


 「ん? 持ってないと買い物出来ないじゃない? ん? ああ、シンにもらったのよ」


 「シンさん?」


 「そう、魔王倒した後にもう必要ないからって大袋2つ。だからお金に困ることはないわ! 存分に遊びましょう!」


 エリーはマリアがさらっと行った言葉に反応した。 大袋2つって、一般兵の2年分の給料じゃないですか。


 「そうなんですね、あの人たち魔族で魔王なのに優しいですよね」


 「わかるでしょ?! 私の気持ち! いなくなっちゃったら寂しいのよ」


 「わかりますけどあそこまで落ち込みませんよ」


 はあ、この女神様は、と呆れる。


 「いいのいいの。子供には分からなくて」 


 マリアが馬鹿にする。エリーは自分が子供っぽいことを極端に気にしている。


 「子供じゃありません!」


 むすっとした表情になるエリー。


 「よしよし」


 そういって頭を撫でるマリア。

 プクーとエリーの頬が膨れる。実は頭を撫でられるのは満更でもない気分だった。やはりエリーは子供なのだ。


 「だから子どもじゃありません! 子供扱いしないでください!!」


 「はいはいわかったわよ。あ、ほら、足湯って知ってる?」


 マリアがなだめる。エリーと一緒にいる時は少しだけお姉ちゃん気質になるマリア。

 足湯場が見えてきたのでエリーに聞いてみる。


 「はい。やったことありませんが。」


 初めて見るものに極端に興味を示すエリー。さっきまで怒っていたのにもうワクワクモードだ。


 「じゃーあれに浸かった後お昼にしましょう!」


 「はい!」


 足湯場につき、


 「えっと、マリア様、裸足で入るんですよね?」


 「そうよ。タオルは私が持ってるから心配ないわ。脱いだ靴は後ろに並べておくのよ」


 「わかりました!」


 神族は基本靴下を履かない。特に理由はないけど。エリーとマリアは靴を脱ぎ、湯に足をつけた。


 「はああー、気持ちい〜」


 「本当、気持ちいです。仕事の疲れが洗い流されていくみたい」


 ジト目でマリアの方を向くエリー。


 「な、なによ」


 「べつに〜、なんでもありませんよ〜」


 「仕事は帰ったらするから! 今はいいの!」


 「あー、『仕事』の疲れが癒される〜」


 「エリー! わかったから!」

 「今までごめんね、エリーにばかり仕事を仕事を押しつけちゃって」


 え、マリア様が謝ってる。

 

 「い、いえ。まあ、大変ですけど、その、」


 「これからもよろしくね!」


 謙遜しようとしたエリーが馬鹿だった! この駄m、、、マリア様まだエリーに仕事させるつもりだし。


 「なんでそうなるんですか! エリーの仕事じゃないのに!」


 ムーっとした顔をして、バシャバシャと足でしぶきを飛ばす。


 「じょ、冗談だよ! わかってるから! ちゃんとするって!」


 「約束ですからね!」


 「約束する! そろそろあがりましょう。お腹減ったわ」


 「私もそう思ってたところでした」


 2人は立ち上がり、濡れた足を拭いて靴を履き直す。


 気持ちよかった〜。お昼はどこで食べようかしら。あ、ここ良さそう。


 2人は料亭にお昼を食べにきた。


 「エリー、何か食べたいものとかある?」


 「んー、猪鍋を食べてみたいです!」

 

「いいわね!」


 注文をしてしばらく待つ。


 「懐かしいわ。シンたちと初めて食べたのが猪型の魔物のステーキだったのよ」


 懐かしいって、シン様達がおかえりになられてからまだ1ヶ月もたってませんよ。


 「そうなんですね。マリア様が作られたのですか?」


 「えぇ! ガッチリ胃袋掴んでやったわ! 」


 ガッツポーズを決めるマリア。


 「マリア様は料理が得意ですものね。」


 ふふん。と胸を張るマリア様。猪鍋が運ばれてきた。


 「おお! 美味しそう」


 「本当だ〜」


 思わずよだれが垂れてしまうエリー。それをみてマリアは笑う。


 「エリー、あんたやっぱ子どもね」


 ハッと、我に返るエリー。急いでよだれを拭いて、むすっとした表情でマリアの方を向く。


 「もー! 子供じゃありません!! 子供扱いしないでください!」


 「美味しそうな料理を見てよだれ垂らしてるんだもん、充分子どもよ」


 ははは、と笑続けるマリアに何か言い返してやろうと思ったが、なに一つ勝っているパーツがなく、なにも言い返せなかった。


 「ぐぬぬ、なんでそんなに大きいんですか。」


 マリアの胸を見て言う。


 「羨ましいんでしょ?」


 「べ、べつに羨ましくなんかありません!」


 「まあまあ、それよりあったかいうちに食べましょう」


 マリアが猪鍋を食べ始める。


 「美味し〜。お肉が柔らかくてとろける〜」


 エリーもマリアが食べるのをまねして食べ始める。

 

 「、、、美味しい。」


 とっても美味しい。こんなの食べたことない!


 「でしょ?! 早く食べないと私が全部食べちゃうわよ」


 「ああ! マリア様ずるいです! エリーにも残してください!」


 「魔族の世界では、これが当たり前なのだ!」


 「知りません! 私たちは神族ですよ!」


 2人が取り合いのようにして食べたため、猪鍋はすぐ無くなったが、大満足の2人だった。

お金を支払い店を出る。


 「は〜、お腹いっぱい」


 「本当に美味しかったですね!」


 「夜まで時間あるしなにする?」


 「夜何かあるんですか?」 


 首を傾ける。


 「今日は運よく花火が上がる日なのよ!」

 

 「へぇー、花火ですか。見たことないです」


 「楽しみにしとくといいわ! じゃあ、それまで街でも回りましょうか」


 街をある程度回った後、宿に戻った2人。


 「たのしかったわね〜」


 「はい! とても楽しかったです!」


 いつにも増して上機嫌なエリー。

 そんなに楽しかったのね。やっぱりまだまだ子供っぽいとこあるじゃない


 「花火見にいくから着替えないとね〜」


 そういって、マリアはエリーの服を脱がす。


 「ちょっ、ちょっと、やめてください!! きゃー!」


 マリアはエリーに花柄の浴衣を着せた。


 「ほら! やっぱり似合ってる!」


 「そ、そうですか? でもいきなり脱がすのはやめてください!」


 ちょっと顔が赤くなるエリー。


 「ええ! 天使みたいでかわいいわよ!」


 「本職の天使なんですけど。」


 「まあまあ、堅いことは言わずに!」


 マリアも浴衣に着替えて花火を見にいく準備をする。


 「どう? ちょっと胸がきついけど。」


 エリーは自分の胸と見比べる。圧倒的敗北感。


 「に、似合ってると思います。」


 「どうしたの? そんなに膨れた顔しちゃって」


 「な?! なんでもないです!!」


  胸が小さくて悔しいなんて言えない。


 「それじゃ、出発!」


 2人は花火がよく見える高台に登った。


 ヒューー、ドン!!

 大きな花火が打ち上がる。


 「「きれーーー」」


 思わず見惚れる2人。


花火も終わり、転移で宿に戻った。


 「とっても凄かったです! あんなおっきいのが打ち上がるんですね!!」


 表情がコロコロ変わり、花火でこんなにはしゃいでいる。本当に子供見たい。


 「本当ね! まだまだ後6日もあるんだし今日はもう寝ましょう」


 「はい!」


 2人の下界旅行初日が終わった。


TO BE CONTINUE・・・

御覧くださりありがとうございました。


総合ポイントが30超えて、評価も⭐️5をいただいて、本当に嬉しい限りです。これからもよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ