共鳴リング
「よし。準備はいいか、ジュン」
「うん」
ジュンはブルモンとの心の繋がりを深くするため、様子を見計らって、共鳴リングを使うことにしたのだった。
共鳴リングは、ある程度の信頼関係を築いてから使った方がより深く共鳴するため、数日間ブルモンの世話をしながら、時期を見計らっていた。
「では、ブルモンの心音がよく聞こえる距離までリングを近づけなさい。心が通ってないと、これすらもモンスターには嫌がられるからな」
父さんに言われるとおり、ジュンは左手首にはめている共鳴リングをブルモンの胸近くまで近づけた。
「……近づけたよ」
「ブフー」
ブルモンはジュンが近づいても特に嫌な顔をせずこちらを向いている。
「よし。それくらいだ」
父さんは言った。
「その距離を保っていなさい。すでにジュンはブルモンへの世話の中でお互いの波長が合ってきている。しかし、まだ微かなズレがある。そのズレを、共鳴リングが修正し、波長を合わせてくれる。ほら、リングが光りだしだぞ」
確かに、共鳴リングは微かな光を発し始めた。
どのような原理なのかわからないが、お互いの波長を調節してくれているらしい。
少し待つと、すぐに光は収まった。
「ふう、これで共鳴は完了だ。この共鳴という操作は、人が所有しているモンスターを別の人間が強制メダルなどで強奪しようとするのを防ぐ効果もある。モンスターも自分の主人が誰であるかを強く意識しているから、別の人間の物になろうとするのを拒絶する力が強くなるんだ」
「なるほど」
「それだけじゃないぞ。お互いの心の結びつきが強くなると、相手が何を考え、どうしたいのか、がお互いわかるようになってくる。だから、このモンスターは今おなかがすいているのだなとか、何も食べたくないだとか、これが食べたいだとか、好みや性格などもわかってくるはずだ」
「まあ今回はこのくらいにしておこう。ブルモンも少し疲れたみたいだ。あぁ、私はブリーダーだから共鳴せずともこのくらいはわかるのだよ。朝飯前だ。ハッハッハ」
そういうと父さんはリビングへと戻っていった。
逆にジュンは、ぼーっとこちらを向いたまま立ちすくんで動かないブルモンを見て、本当に疲れてるのかな、なんて考えていたのだった。