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あれ妹さん?へーえ似てないわねぇ

 三週間後、コロンがやってきてヒコザに来訪者の存在を伝えた。

 聞くと数人の汎人が精霊の支配域に近付くのだが、人払いのまじないで迂回していくのだそうだ。

 身なりから聖都の保護局員のようだと分かったのでヒコザが向かい、話をして転露の国で落ち合うよう手配した。

 一応一ヶ月と決めた検疫期間だが、保護局はもう充分と判断したそうで、すぐにでも聖都に向かいたいとのこと。彼らは異邦人三人の健在を知ると、皆さんは両方の世界のウイルスに打ち勝った、それこそ健康体の証である、と太鼓判を押した。実を言うとヒコザ達は何度か謎の瓶詰め飲料を支給されていて、それがこの世界の万能ワクチンだった可能性に気付いていた。無味無臭のあれの出所が、例えばキューブだとすると、なんとなく彼らの態度に納得できるのである。何故ならヒコザ達先遣隊は着陸直後に(AIの記録までも)空白の時間が存在し、この世界をキューブのお咎め無しで歩き回り、そしてこれといった病気にもなって居ないからである。


 ヒコザと他のテララ人三人は一応、感染の配慮から族長に直接会うのは遠慮し、深い感謝の意と、くれぐれもよろしくと重鎮達に伝え、すっかり馴染んでしまったテント村を後にした。例の練習に使った沼の辺りで送ってくれたコロンとナバロン、そして護衛官のアールシュに礼をし、別れを告げた。



 転露の国はあいも変わらず珍妙な建物が所狭しと並んでおり、目を飽きさせない。三人はしきりに町や建物、歩く人々に視線を纏わせていた。この町の住人は汎人だ。久々に見た同類に人心地つけるというものだろう。温泉街なので多くはないが、彼らは特に商店に興味を惹かれていた。ヒコザは戦術ゴーグルやその他情報機器を持っておらず、翻訳辞書を渡せなかったので、彼らの言語の習得は進まず、殆どの言葉は理解できていない。結果、都度ヒコザが翻訳する事になるのだが、それぞれ存在しない単語がそこそこあり、あまりうまく説明できなかった。


 保護局員は領事館で待つとのことで、適当な定食屋で昼を済ませ、歩いて向かった。

 対応してくれたのはカマルという役人で、今回の使節団のまとめ役だそうだ。

 詳しい話はおいおいと、とつまりは先延ばしのようだ。確かにお互い何も分かっていない現在、重要な決め事を協議するのは良くないし、そもそも言葉が通じない。一日の猶予を設け、明後日出発するとのこと。


 ヒコザは領事館でハガキ大のカードを百枚程用立てて貰うと、思いつくままに上半分にエイトゥーラ、つまりこちらの言葉で単語を一つ、下半分に銀河標準語でそれに対応する単語を一つ書いて行き、取り敢えず五十枚作った。残った分は翻訳を頼まれた単語で作っていけば良いだろう。

 これで日常生活に足りるとは思えないが、仮にヒコザが居なくとも数日は凌げるだろう。



 翌日、ヒコザは用事を済ませる為単独行動とした。つもりだったがパトリシアが同行を求めてきた。他の二人はそれぞれ計画があるらしく、別行動となった。用事と言っても大したものではないので、ヒコザはパトリシアの同行を許可した。まず向かったのはジェガン師の屋敷だ。ジェガンは喜んでヒコザを迎え、これまでの事、特に精霊族について聞きたがった。


 所々質問を挟みつつ一通り説明を終えるとジェガンはふっと表情を消し、先日ヒコザの休暇を伝えに来たマヤの事に触れた。


「で、何で女帝がうちに来るわけ?」

「おや」

「おやじゃない。俺は一応宮廷魔道士だったんだ。あの拝謁を忘れるものか」


 ジェガンは王都の魔道士なので聖都の女帝とは接点が無いだろうと高を括って居たのだが、どうもそんな機会が有ったらしい。


「ビビったわ。まじで。うちの応接室に”レブナント”が居るんだから。私服で仮面も着けてないの。これは消されると思ったね」

「良く見破りましたね師匠」

「魔道士だからな。なんか波を感じたんだ。何万本もの光の針で突かれるような。良く見れば背格好もそんな感じだし、あと声だな」

「はぁ、流石です」

「どういう知り合いなんだ。あ、いや解った気がする」

「向こうが一方的に絡んでくるんですよ。僕をエンドラだと言って聞かないんです」

「まだそんな言い逃れが通じると思ってるのか。腹を括って聖都で祭り上げられろよ」

「他人事だと思って!」


 ヒコザの隣ではパトリシアがニコニコしながら話に耳を傾けている。言葉は通じていない筈だが、雰囲気で解るのだろう。


「師匠、この子も魔法の才能が有ると思うんですけど、どうでしょう」

「どうって、まぁ、その気があるなら工房で雇ってもいいぞ」

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。この後工房を見学しても?」


 ジェガンの屋敷を後にすると、ヒコザは下宿へ向かい大家さんに長期間留守にすることを改めて告げた。家賃は既にマヤが入れてくれたそうだが、そこへ更に追加で入れておいた。一応部屋の様子も見ておく。見ると掃除が済んでおり、食料品などは処分されていた。マヤがやってくれたのだろう。聖都で会ったら礼を言おうと思った。その後はパトリシアの買い物に付き合って領事館へ戻った。

拉致されていたのでエドモンドとパトリシアは情報端末を持って居ません。

リエンは持って居ましたがヒコザに預けるのを拒否し、その後充電切れで文鎮となりました。

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