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サバが好き?僕はツナ

 南海のダイビングでイルカとコンタクト出来る気がしてそれを伝えると、研究施設は小さくも暖かなパーティーを開いてヒコザ達を送り出してくれた。

 所属は宇宙軍に移され、階級は伍長。ティファラも一緒だ。


 探査チームが決まるまで長くは掛からなかった。メンバーは三人。航空宇宙局から空尉が一人。それと部隊トップのサイキック、ティファラとヒコザ。

 基地局になっている巨大な軌道ステーションで彼らは落ち合った。現れた空尉は先日のダイビングで話をした女性スタッフだった。元々彼女はこの作戦において空軍側責任者として派遣されており、この度指揮官として正式に任命されたそうだ。


 彼女はオスカルと名乗った。オスカルは男性名の筈なので偽名だろう。ヒコザはなんとなくその由来に気づいたが口をつぐんでいた。実際、軍では呼びやすく覚えやすい名前を名乗る事が多い。ヒコザも正確には本名ではない。階級こそ高いがオスカルは学者畑の人間で、サイキックも無く戦闘訓練も受けていないので、今回は学術調査と指揮統率だけの参加となる。


「よろしくね。私は南フランスから。でも英語とスペイン語も話せるの。すごいでしょ」

「良いですね。改めましてヒコザです。FEAの極東から来ました。就学中に徴兵されました」


 出生地など資料で当然知っているとは思うが、ヒコザは一応、礼儀として添えた。


「ボクはティファラ。生まれはサモアだよ。ここにはもう四年いるよ」

「サモア!フランスとは駅の端っこ同士だね」


 フランスはEUから離脱して長らく孤高を保っていたが、シルクロード特急(パリ、モスクワ、ティンプー、ホーチミン、フクオカ)の停車駅を得ると多国籍化を免れず、ラセアンに加盟し、同時に統合軍にも参加している。シルクロード特急はFEAのフクオカで環太平洋水中列車に乗り換える事が出来る。合衆国がTPP問題以降多国籍経済同盟に参加していないので、貿易を主な目的とする水中列車は環太平洋とは言っても実際は太平洋の南西だけに留まっている。実はフィジーが終着駅でサモアには行かないのだが、この際置いておこう。


 三人は挨拶が済むと準備中の船に向かった。

 船は揚陸艇を改造したものが選ばれた。チトセと名付けられたそれは複合装甲を備えた立派な戦闘艇だった。これは自動艦で、航法や操船はマザーAIが立案し搭乗員が承認すれば実行される。ちょっとした自己改修も可能だ。なので運用に必要な人員はたったの一名。

ヒコザとティファラは手動でセルンの防御圏を抜ける訓練を受けており、合わせて艦にも航空機が燃料を使用していた時代の操縦系統や旧式のレーダーエコーが追加されていた。


「こんばんは。良い星空です」


 艦橋室へ入ると合成音声らしく微妙なエコーが掛かった女性の声が迎えてくれた。もちろん船のマザーAIだ。エコーが掛かっているのはロボット法に拠るもので、これは完全な人間の複製を禁じていた。


「やぁ、僕はヒコザ。背の高い女性がキャプテンオスカル、男の子みたいなのがティファラだ」


 ヒコザはつい返事をしてしまったが、ここはリーダーが発言する機会だったと気づいた。そっと様子を伺うと、オスカル空尉は既に着座し、ヘッドセットの調節を始めていた。うつむき加減のその表情は、ヒコザからは見えなかった。


 戦闘艇の艦橋室は狭い。少なくとも海上船のキャビンには全く似ておらず、どちらかと言うと地上戦車に近い。この船の場合、チタンのロールバーに覆われた席が六座有り、それぞれが一メートル以上離れている。その隙間は本来生活空間であったり衝撃吸収ゾーンであったりするのだが、今は床が見えないほど調査機材で埋め尽くされていた。機材には直接アルミのグリップとステップが取り付けられており、有重力下ではそれを使う事になる。

 ティファラの様子を見ると、こちらも思いの他落ち着いており、手馴れた様子でモニターのリストをチェックしていた。 彼らはこの後、たった二週間の短い最終訓練を受け、セルンに飛び立つことになる。

中尉と宙尉でややこしくなるため空尉にしましたが、作者が軍隊や階級に詳しくないので雰囲気だけで許して下さい。

この時代のAIは現代の物と違い、もっとヒトっぽさに溢れており、付けられた名前を大切にし、育んだ人格を自己としています。これは軍用の為ネット依存をしない設計の為でもあります。もちろん繋がるのであればネットも武器として使用できます。

チトセは揚陸艦ですがドローンや歩兵ロボを運ぶための艦なので、現代と比べるとかなり小型です。対艦ミサイル等大型の兵器は搭載していませんが、前線に出る為装甲が厚く丈夫です。


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