トンボめがねの超絶美少女②
その男子学生は慌てふためいていた。緊張しているらしい。
「…あっ、パン…おにぎり…ですか…。…今日はもう売り切れてしまったんです…ほんとに…ほんとに、すみません…」
さっきまで“売り切れで~す!”と軽い調子で言っていたのが、ほんとうに申し訳ないという感じで恭しくバイトの男子学生がその女の子と視線もまともに合わせられずに答えた。
「…あんなに…棚があるのに…? …そうですか…。…ありがとうございます…」
本当に? と驚きながら、そう言うと女の子はどうしようかとまた周囲を見回した。周りには彼女見たさに人だかりができていたが、なるほど売り切れはすごい混雑だからか、とすぐに納得し、階下へと歩いて行った。
階段ですれ違う学生たちもあまりにもキラキラとしている涼しげな彼女を二度見したりしていた。
「いや~もう遅いかな~。パンかおにぎりのどっちかはゲットしたいな」
「…もう、どっちも売り切れてます…」
階段を登ってきた男子学生2人がそう言いながら登って来ていたが、彼女は階段です少し立ち止まり二人に教えた。
「…えっ? そうなんですか? …やっぱりか~…でも教えてくれて、ありがとうございます…♥」
二人の男子学生は女の子を驚きの表情でじっと見つめて照れながらお礼を言った。
目が合って少しするといえっ、と小さく言って、女の子は軽く会釈するとまたスタスタと階段を下りていった。
「…か、かっわい~…♥ …とんぼメガネ…あれが噂に聞く3年の里村さんかな? …一般人のレベルを遥かに超えてね? …パン、おにぎりはないみたいだけど、来てよかったわ~♥」
二人は興奮を抑えきれない感じで女の子が去っていくのをしばらく眺めた。
購買のレジバイトの男子学生は他の男子学生にすっかり取り囲まれていた。
「どんな感じだった? どんな感じ…? 可愛かった? おいっ! どうだったんだよ…?」
「…いや…あまりきちんとは見られなかったんですけど…。…なんか今にも泣き出しそうなくらいに目がうるうるしていて…少し目を合わせただけなのに…なんか、こう、どうしようもなく切ない気持ちに…」
そこに階段を上ってきた、話しかけられていた男子学生2人も囲まれ、質問攻めにされ始めた。
彼女が去った購買は、しばらく騒ぎが収まらなかった。
女の子は学食の入口に戻ってくると、ふーっとため息をつき、すこし残念そうな表情をして立ち止まった。彼女の存在に気づいた周囲の学生たちがやはり彼女に注目しだしている。女の子は気を取り直し、連絡通路に向かって颯爽と歩き始めた。
すれ違う人、すれ違う人が彼女をちらちらと見ていた。ぼーっと見つめている学生もいる。すれ違ったあとに歩みを止め友達とヒソヒソと話しながら振り返って女の子を見る学生が多かった。
彼女はそういう視線を送られているのは分かっていたが、慣れているらしくやはり特に気に止めずに、校舎へと通じる連絡通路へとすこし足早に向かった。




