男子学生たちの僥倖(ぎょうこう)④
男子学生たちが何を喋っているかはさっぱり聞こえなかったが、こちらをチラチラと何度も見ながら、ものすごい熱い論議がなされてるということだけは伝わってきた。
「…篤郎さん!? どうしたんですか…? 何かあったんですかー? 一人でうんうんと悩まずに私に言ってくださいよ! 何でも解決しますよ! 何でもですよっ!!」
彩芽が篤朗の両肩をむずっと掴んで揺さぶりながら、顔を近づけてきて、本当に心配しているのに何でですか!? というような切実かつ深刻な表情で篤郎の目をじっと、きっと見つめた。数秒間を置いて、すぐに表情を崩し笑顔になり、篤郎の返答を待った。
男子学生たちはあっと驚きの表情を見せた。彩芽が篤朗の両肩を掴んで顔を近づけたのでまさかと思ったらしくざわめいた。
「…いや、何でもないよ。彩芽ちゃんは学食で食べられたの?」
彩芽のおふざけを薄目をつぶりながら受けていた篤朗はなで肩モードにしているところにかけられた彩芽の両の手の手首をつまんで下にするっと下ろしながら聞いた。
「はいっ、おかげさまでちゃんと食べられましたよ。篤朗さんは家で寝ていたんですね…。気づかずに出てきてしまって、すみませんでした…。お昼何食べるんですか? ちゃんと食べられそうですか?」
彩芽は少し申し訳なさそうに心配しているのが伺える笑顔でそう言った。
「ふふん、ほら、見てよ! 起きて彩に電話した後、直ぐに頑張って諦めないで購買までダッシュしたら『ビッグ焼きそばパン』と『フキおにぎり』買えちゃったから全然心配しなくても大丈夫だよ~♪ やっぱり最後まで諦めないって大事だよね~。今ならそう自信を持って言えるな。彩芽ちゃんも何があっても絶対に夢を諦めないでね!!」
篤朗は姿勢も元通りに正し、彩芽の心配を打ち消すように明るい表情で、手に提げていた袋を見せた。
「わわっ!! おぉーっと!! これは…!! 購買の幻の人気メニュートップ1,2の『ビッグ焼きそばパン』と『フキおにぎり』じゃないですかー!! 篤郎さんっ!! ほんとについてますねー!! このトップ2を独占している人を初めて見ましたよ!!
やっぱり昨日お誕生日だったし、あれほどのことが起きた後だ…その勢いがまだ残っているんですねっ! 良かったー、篤郎さんがまだ寝ているとあたしたちが気付かなかったせいで午前中の講義には出られず、昼食も取れないかもとあおいさんからラインがきてて…そう思ったら何だか申し訳なくて…。でも昼食は申し分ない感じですね!