003 状況を把握すること、自分を知ること
現実逃避しながらも徐々にこれが現実と受け入れる俺の頭。(受け入れたくはないけどね)
そういえば、俺の荷物?的なものはあるんだろうか。こんな場所に着の身着のまま、一文無し、宿無し、所持品なしなんて笑えない、全く笑えない。
足元を見ればあらまあ、本田………じゃない、本が一冊。それと手紙が一通。
これ、さっきまであったっけ?いや、やっぱりこれは夢か。突然物が出てくるなんてありえない。
………あ、これ俺の夢だった。
ここまで見た夢だし、最後まで見届けるか。ああ、今日のバイトは遅刻決定だな。親方、すいません。
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親愛なる愁くんへ
やあやあ、我こそは神様なり~!
ビックリした?ビックリしたよね⁉
むっふっふ~、そうだろう、ビックリしたd…(ビリッ
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おっと、つい力が。え?わざと?
いやあ、ついだよつい。≪つい≫って言いているだろう? ついうっかりさ。しつこいなあ。そういうことにしておいた方がいいことだって世の中にはいっぱいあるんだ。
さあ、気を取り直して続きを読もうじゃないか。
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実はねえ、いろーんなことがあって、いろーんな事情と重なってね。
それでね、それでね?地球の人口が一人溢れちゃったのよ。
そこでだなあ!一人だけ引っ越ししてもらうことにしたってわけ。
げんせーな審査の結果、君が選ばれたんだよ!おめでとう!!(パチパチパチッ!!
君の存在を消しても良かったんだけど、それはそれで申請が面倒でねー。
向こうではちゃんと死んじゃったことになってるから大丈夫!安心してよ。
家とか家具とか、地球で使っていたものは一切持っていけないってルールがあるけど…
地球の道具ってホント便利だよねー(持って行けないんだけどねー)
ま、魔法とかスキルとかあるから大丈夫でしょ。文明の利器に頼ってばかりじゃだめだぞ、青年。そう簡単には死なないはずだし、なんとかなるよ!
最悪、街とかもあるしね!一応、街の近く(たぶん)には落とせたと思うし。
その本は選別にあげるよ。
ちょー便利だから、ちゃんと持っててよ⁉
ゲームの攻略本みたいなやつで、念じれば見たい情報をページ学科手に検索かけてくれる、っていう優れモンだよーん。一人から始める君に新機能も搭載しておいたから!これで一人ぼっちでも大丈夫さっ!!
ボク様からのプレゼントさ。ありがた~く受け取りたまえよ!
じゃあまた!がんばれ、ニンゲン!
簡単に死ぬなよ?いくらなんでもボク様がつまらない。
良い異世界生活を楽しみたまえ!
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読んだよ。読んださ。
もう我慢しなくてもいいだろう?ついじゃなくてもいいよな?な?
なんだこのふざけた内容は。(ビリッ
なんだこのふざけた送り主は。(ビリッ
なんだこのふざけた態度は。(ビリッ
こんなのが神様やってていいのか。(ビリッ
俺の頭の中の神様像はどうなっているんだ。(ビリッ
人事課、仕事しろ。(ビリッ
人選ミスだろ、絶対。(ビリッ
神様が神様なら部下も部下ってか?人事課に訴えんぞ、おい。(ビリッ
とまあ、いろいろと考えたいことも言いたいことも山ほどあるが。
え?散々、言っていただろうって?ふざけんな、まだまだ足りんわ。手紙か?手紙なんてあったか?俺はこの紙屑しか最初から持っていないが。なにかと勘違いしたんじゃないか?
とりあえず、俺が一番言いたいのはこうだ。
「ここはどこだ?」
まあそう言ったところで答えてくれる人は残念ながらいないし、これからもきっと現れてはくれないと思う。なんせここは大草原のど真ん中、人っ子一人いやしない。
うん、悲しくなるからやめよう。
手掛かりとしては街が近くに(たぶん)あることだが、直な話、信用ならない。
となれば頼みの綱は現時点での俺の持ち物。
1:使えない、ふざけた手紙。
2:やたらと分厚い本が一冊。(海外の古い本っぽいやつ)
以上。
使い方もいまいちわからないし、本当に使えるのかもわからない。
あの紙っペラを信じるほかないのか…
本当に異世界というならファンタジーでもなんでもアリなんだろう。それこそ本で検索も可能に違いない。大いに疑わしいが目の前の大草原の説明もつかないので、仕方なく百歩、千歩…一万歩譲ってやろう。
………大変、不本意ではあるが背に腹は代えられない。
試しにこの本を使ってやろう。
念じるだけらしいし、何もしないよりはマシか。
「“索引_世界”」
ぽつりと唱えてみれば一瞬だけ本が光った。そこから数秒の沈黙。
「…やっぱりだまされた?」
やっぱり夢は夢かと本の表紙を開いた瞬間、閉じられていた本のページが勢いよく勝手にめくられていき、半分くらいのところで止まった。
その真っ新なページにジワリと文字が浮かび上がってくる。
【“世界”_ここは国名ヘストカブラ、地球から見た異世界である。服装や建物は中世ヨーロッパをイメージしてある。4つの大陸と島国で形成されている。】
「………まじか。」
できちゃったよ。ノリでやったらできたよ。これが魔法なんだ。
勝手に発光して勝手にページがめくられて、勝手に文字が出てきて。こんなに非現実的なことが起きたんだ。信じるなという方が難しいし、それこそ現実的じゃない。ここが異世界であって、あの手紙が神…さ、まからのものであると考えた方がいいだろう。
歯切れが悪いって?煩い、あんなのが神様とか認めたくないんだよ。往生際が悪いとか言うな。頭と心はン別だ、俺の心は全否定している最中だ。
ともかく、ここが魔法と剣で暴れる感じの世界なら昔やっていたRPGと同じはずだろう。マップとかステータスとかも見られる筈。
【“マップ”_本に記載済み。行った街や村、国にマーキングすればこの本を通してジャンプできる。】
【“ステータス”_ステータスオープンと念じれば現在の状態、パラメーター、スキル等見たい情報が確認できる。相手に見せることも隠蔽させることも可能。】
「………なるほどチートか。」
ジャンプとか、これってワープと同じ要領で考えていいんだよな?行ったことがあればいいとか、条件良すぎないか?俺、この世界で浮いた存在とかないよな?大丈夫だよな?
声に出さないで魔法使えるってことは…む、む、無詠唱?とか言ったか?それが普通であることもよくわからない。…ファイアーボール!!とか言いながら魔法を使うとか恥ずかしくて出来そうもない。これでも俺は22歳だ。高校生じゃないんだ。
「頼むから普通であってくれよ?」
【早めに諦めたほうがよろしいかと。】
「………………会話機能付きとか。」
一人ぼっちでも大丈夫だよ、ってこのことか⁉こんな大草原の真ん中だし?周りなんて木ばっかりの森だし?ありがたいけど、ありがたいけど!!余計に淋しく感じるのは気のせいなのか?ここに落としたのお前だよね?ね?
あー、なんか虚しくなってきたし、キャラ崩壊も激しくなってきたしやめよう。
とりあえずこの本の便利さはわかった。この本が盗られちゃいけないことも大いにわかった。
なにより、こいつがいないと俺の命が危ない。生きていけない。異世界怖い。無理、俺死んじゃう。
ステータスの方も確認しておくべきだか。
「念じる、念じる…(ステータスオープン)…おお!!」
ピコンという音と共に、iP○dサイズの半透明なボードが出てきた。SF映画とか未来系のあれだ。映画好きの俺としてはちょっと感激。機能はiP○dと同じで上下のスクロールが可能なようだ。
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名前:シュウ(笠原 愁) レベル:1
種族:人族 性別:男
年齢:22歳 職業:Bachelor ≪学士≫
パラメーター
体力:50 魔力:20
攻撃:5 防御:10
魔攻:15 魔防:20
スキル
炎魔法 Lv:1 水魔法 Lv:1 風魔法 Lv:1
土魔法 Lv:1 光魔法 Lv:1
職業スキル
鑑定 Lv:1 調薬 Lv:1 錬金 Lv:1
付加 Lv:1
ユニークスキル
索引 ブックマスター
称号
異世界からの移住者
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ふんふん。レベルが1なのはこれから上げていきなさいということだろうから仕方ないとしてし、このパラメーターって一般的にはどうなんだろうか。これ他の人に見せても大丈夫なやつ?
職業は…そのままか。前世では大学生だったし、それを考慮して職業スキルも付けてくれてるし。スキルの後ろに付いているのがスキルレベルか。これもこれから上げていくべきだろう。早めに上げていきたいところだけど、まずは魔法スキルか。その方が後々楽ができそう。
家とか、家とか、家とか。住むところを何とかしなければならん。衣食住、これ大事。
それにこのブックマスター?っていうのはなんなのだろうか。
【“ブックマスター”_ユニークスキルの一つ。魔獣・魔法・地図・アイテムetc…本に記録したものを取り出して使用できる。索引としての使用も兼ね備えたシュウ限定の固定スキル。本を失くしても戻ってくるし、シュウの許可が無い限り他人は使用できない。超便利、超レアなSSランクスキルである。】
「………………お、おう。」
最早勝手に検索しだす我スキル様。
便利だよ?便利なんだけどね、いきなりピカッ!!⇒パラパラパラパラッ!!はやめてくれ。まだ慣れてないから心臓に悪い。それに超とか言うな超とか。自分で言っちゃダメなやつだから。
ツッコミ所が多すぎて追い付かなくなってきた。
とりあえず、無詠唱で魔法っぽいのも使えたし満足…かな?