Sand
『…余韻は、返答を聞けないって言ってたけど』
『僕は透聴で返答できたよ』
「あくまで一般的な話だ。
相手側が透聴 その類の能力を持っていれば
いくらでも会話できる」
『(欠損を補うのか……)』
‘?’
‘(じゃあ、エヌさんとエル博士は
喋らなくても
話せるようになったということですか?)’
“(そうですね。
でも、私達も聞こうと思えば
内容を盗み聞きする事は容易いでしょうが)”
‘(盗み聞きはいけないですよ!)’
“(例えですよ、アイ様)”
「透聴と余韻とで比べると
伝達の役割は余韻の方が上だ」
『それに特化した感じになるのか』
「……」
511__ _
{戻り方、分かる?}
分からない。
「「……」」
{じゃあ、どうやってここに来たの?}
パズルのようなものが関係していると思う。
{パズルのようなもの?}
「「えーとねぇ」」
僕の手が近くの枝を掴み、
地面に絵を描き始めた。
「「こういうやつが光って、
押したらここに来た」」
{……}
分かってもらえただろうか。
{(画力…)}
{(いやいや、それは問題じゃない)}
{…まぁ、全部は分からないんだけど
移動させられたってことで良い?}
「「そうなんじゃない」」
{戻るんなら、同じ方法でやるとか?}
ここにも、パズルがあるのか?
{それは知らないけど……}
「「まずさ、ここって砂地に村があるから
ちょっとここだけ緑があっても森はないし」」
{…}
「「パズルがあった小屋も見渡す限りないし」」
{小屋…}
もし、ここのパズルから
僕の街に帰るんだとしたら
それは何処にあるというのか。
{私は村のこと特に見て回ってないからな…}
{(観光より商売だし…)}
{でも、狭い方だよね}
だったら、無いも等しいのか?
{あ、じゃあ凄くやけくそになるけど}
?
「「……」」
{お兄さんがここに来た
初期位置に戻ればいいとか?}
初期位置?
「「考えるのは後で。やるだけやろう」」
{うんうん}
もし、これで帰れたら
ワイと会うのはもう無いな。
{そうだねー…
これからの出会いを大切にね}
覚えておこう。
「「じゃあね」」
{気をつけて}
村の入り口付近だったか、そこまで行こう。
「「また あの愛想の良い人が居るね」」
そうか。
「「…」」
〖あら、休めましたか?〗
「はい」
「「(ここは肯定しとけばいいか)」」
〖それは良かった〗
〖では、お気をつけて〗
会釈。
砂地を歩き出す。
さすがに何度も声を掛けられたから
自ら会釈をするようになった。
「「結局、エルの声については
何も進展ないね」」
あぁ、口を動かすとかの話か。
「「ボクが手を動かせるって分かったのは
ここに来てからだし」」
そういえば、急に操られたな。
「「まぁ、ボクが何もしなかったら
ずっと何も出来ないでしょ?」」
反論は出来ないな。
この辺か?
「「位置までは覚えてないね」」
何も起きないな。
「「……」」
足りないものでもあるんだろうか。
それとも、まだ先なのかもしれない。
歩いているうちに ふと街に戻ると仮定して、
距離を気にせず歩くか。
じわじわと足元の影が濃くなっている。
なんとなく暑い?ような
視界がはっきりしなくなってきた。
それから時間をあけずに
僕は意識を失った。
〖はぁ〗
〖どうしたの?〗
〖…私達の役目って、ぶっちゃけ
入り口で挨拶くらいしかないじゃないですか〗
〖あなた、急に現実的ね〗
〖これやって村の何になるとか あるんですかね〗
〖…他の地域も同じ事やってると思うわ〗
〖休憩は人が通らない隙を見てだし、
もうなんか〗
〖この仕事いります?〗
〖いるわよ。じゃなきゃ…〗
〖あっ!あの旅人さん…!〗
〖え?〗
〖ほら、今さっき会った人が倒れてます!!〗
〖これは一大事だわ!!
すぐに宿へ連れていきましょう!!〗