A merchant
『いや、エルだよ。顔といい外見といい顔といい』
❲審査基準 ほぼ顔じゃねぇか❳
❲よく見ろ。……エルだな❳
‘(自ら納得しないで下さいよ……)’
「……?」
“私からすると、声色がエル様と
異なっているように感じます”
‘そうですね’
‘というかいつも
表音のエルさんの声しか聞こえませんけど’
“外見上、エル様は話していませんでしたが
透聴で声色は確認済みです”
「??」
415__ _
❲お前、何者だ?❳
‘……’ “……” 『……』
「名乗る程の者ではない。僕は旅人であり商人だ」
❲………そうか❳
❲名乗れ❳
『(強制するんだね)』
「……」
❲…………❳
「ケイ」
『……?』
「僕はケイという」
❲ケイか。何者だ?❳
『…(さっき言ったじゃん!!
聞いてなかったの??)』
「…忙しい身なんだ。今すぐ此処を離れる」
❲何処から来た?❳
「何処から、というより此処は何処だ?答えろ」
‘………’
❲エルの街だ❳
「エル?人名か?誰だそれは」
“………”
「…お前らの中で
フィンという村の行き先を知っているか」
❲フィン?何処だそこは❳
‘……’
“……”
『知らない。ここら周辺にその土地はないよ』
「……」
「もうここに用はない」
‘行っちゃいましたね’
“はい”
❲ったく、あいつ 誰なんだよ……❳
『……(旅人であり商人だって言ってたよ)』
❲…あいつ何者なんだよ❳
『……(頭もおじさんになったのかなぁ)』
『まぁ、あの人
明らかにエルだったよね?そっくりだよね?』
❲だな❳
‘もしかしてドッペルなんちゃらとかなんですかね’
“アイ様、ドッペルゲンガーです”
『うん、かもね。
あれ絶対ドッペルなんちゃらだよ』
❲……エヌの頭を共有した結果か❳
‘そのドッペルゲンガーと出会うと
何かが起きるとか起きないとかあるんですよね?’
『うん。多分 何かが起きるとか起きないんだよ』
❲ちょっと何言ってるか分かんねぇな❳
“……出会ってしまえば、その人は帰らぬ人となります”
‘えっじゃあ……’
『僕達死ぬの!?』
‘…………’
『………』
“…………”
“死去するのは同じ顔の人ですよ”
『そ、そうか』
‘良かっ……?’
『エル!!』
‘エルさん!!’
『おじさん!エルが危ない!!』
‘A!エルさんが、エルさんが……!!’
❲……はぁ❳
“………”
‘そういえば、A’
‘商人って物を売る人のことですよね’
“そうですね”
‘何を売っているんでしょう?’
“透視で所持品を見ましたが、
よく分からないものばかりでした”
‘食べ物とかありましたか?’
“いいえ。全く持っていないようです”
「(これは災難だな)」
「何処だよ、此処」
「さっきまでフィンに居たはずなのに」
「飛ばされたか?」