Lie
この声、この話し方は
違う。聞いたことがない。
『うん、そうだね』
嬢って何だ?
『女性を指す言葉だね』
208__ _
『まだ残っている… って何のことだろう?』
『食べ物が一種類ずつ 減っているのとは関係あるのかな?』
『それとも、僕らがまだ
この村に居るって言っているのかな?』
分からない。
急に聞かれても。
『あっ ごめんね…』
『今って この声の主、何処に居るんだろうね?』
そう言って エヌが隅に目をやった。
何かあるのか?
『エル、この村中』
『何処にも』
『誰一人として見つけられなかったよね』
『しかも、四方八方から音がした』
『人が居ないのに常に音が散っている』
『そこで、気付いたことなんだけど』
『核としている音は ある一点に 留まっていたんだ』
…よく分からない。
『つまり、本人はずっと此処に居て』
『外の音はフェイクだったんだ』
「…」
『はい、そこに居るんだよね』
『姿なんて消しても 僕には意味がなかった』
空間が静かになった。
最初から静かだが。
『…さっきから君の音が聞こえているんだけど?』
『前のようには 逃がせないな』
「…?」
『…』
『選択させてあげようか?』
『一つは姿を現してくれること』
『もう一つは…』
『何が待っているんだろうね??』
ふふ、とエヌが嬉しそうな声をあげた。
きっと 僕の聞き間違いだろう。
‘ごっ ご、ごめんなさい!!’
エヌの視線の先に、
先程追いかけた 髪の長い人が立っていた。