Exclusion
〖やっと昼飯の時間だ~〗
〖今日はあと聞くだけだから
気が楽だよなぁ〗
「……」
「課題やった?」
〖え、そんなんあったっけ〗
「見てない?連絡あったと思うけど」
〖連絡連絡…〗
〖確かにそうだわ〗
〖見た記憶だけはある〗
〖あとは行動に移せれば
俺は完璧なのに…〗
「この調子だと試験でも〖いやいや〗
「まじで危機感無さすぎでは」
〖こう見えて本番には強いんで〗
「そうか?」
「この先危ういなあ」
1
機械を起動する。
数字が表示されている。
〖そういえば〗
〖ちょっと前からやってる映画で
気になってるやつあんだけど〗
「うん」
〖その入場者特典がランダムでさ〗
〖コンプリート目指そうと思ってんだけど〗
〖割とかかりそうだから手伝って欲しいんだ〗
〖人多い方が早く集まるし〗
〖ま、2回目以降は無理にとは言わないけど〗
「全然いいよ」
「でも、ダブった人から貰えば
もっと早いと思う」
〖そこはさ…こう、あるじゃん〗
〖自分の手で掴み取りたい的なさ〗
「あ~」
「解らんでもない」
〖でしょう?〗
「じゃあ
俺に頼らない方が楽しいかもしれないな」
〖えっ〗
「…嘘嘘」
「なんなら今日 帰り寄ろうよ」
「俺も気になってはいたし」
〖まじですか〗
〖めちゃくちゃ助かります…〗
「そうと決まれば早速」
「いい時間帯のあるかな…」
「駅からの時間も考えないとだよな」
〖計画的だこの人〗
「当たり前でしょ」
画面を見る。
「?」
文字が表示されている。
「……」
「あ」
「ごめん」
〖?〗
「またいつものやつだ」
「放課後に来てくれって」
〖前のと一緒?〗
「そう」
「ほんとにごめん!誘ってくれたのに」
〖……〗
〖あぁいや 気にしないで!〗
〖ダメ元だったし〗
〖行く人数が多かれ少なかれ
俺はコンプするのみだから〗
〖…でもそれ、
どれくらい時間かかってんの?毎回〗
「どれくらい?」
「遅くはなる…か?」
「その後はそのまま帰るから」
〖最近多いな〗
〖塾?〗
「ではない」
〖ではない…〗
「前言ってた健康診断みたいなやつ」
〖入院してたからな…〗
〖にしても多くね?し過ぎでは〗
「まぁ確かに」
〖…大きな病気とか〗
「それはない」
「なんともなかったって言ったでしょ」
〖……〗
「言っておこうか」
「この日は予定埋まってるから
連絡しないでくれ~とか」
〖うーん…〗
〖緊急で連絡してくると思うし〗
〖俺からは強制できないけど〗
「……」
「(その辺相談してみようかな…)」
「あ、時間だ」
〖次あれか〗
〖寝れるやつ〗
「寝れるやつ…」
〖?〗
〖やばい〗
〖まだ準備してなかった〗
〖うわもうロッカーだし全部!!〗
〖よりにもよって!!〗
「急げよー…」
いつも通り
話を何度か聞いて
見慣れた時計の針の位置になった。
〖じゃ、呼び出し頑張って〗
「頑張ります」
「…また明日」
〖また明日〗
……
ここのところ
メンテナンスをしに
家と部屋を往復している
だけのような気がしている。
5の時も同じく
あまり変化が無ければ
もう見ている必要はないのではないか。
加えて
寝ていても身動き取れないのだから
此方が何かやるということもない。
6に来て見たものは
がっこうとびょういん、同じ服を着た人。
優れた要素が逆に枷となっている人。
この人と仲良くしている人。
…研究室はあまり変わっていなかった。
これが6の報告といった所か
今回も中に入った人の行動を
観察することしか出来なかったが
少しずつ環境が変わっていたことは確かだ。
帰ろう。
街に戻ってもう一度
考え直そう。
僕に分からなくても
エヌ達は別の考え方をして
何かが分かるかもしれないから。
「……」
「(またメンテナンスか…)」
「(終わったらまた
あの部屋にでも行ってみようかな)」
「(とりあえず家帰って荷物置いて…)」
「(何かあの子に
お菓子とか持っていってみようかな?)」
「(あと本とか?)」
「(家に遊べるものは…)」
「……」
「(そこまでするとあれか)」
「(特段仲が良いわけじゃないし)」
{…で、その本人はどちらに?}
『今は居ないんです』
『出掛けている…いや』
『移動している?みたいな感じで』
{ご不在ですか…}
『でもそのうち帰ってくると思います』
{うーん……}
{待たせていただいてもよろしいですか?}
『もちろんです』
「もういいですか?」
〖いいよー〗
〖あれ〗
〖また行くの?〗
「え」
〖バレてるよ〗
〖だってそっち出口と逆だもん〗
〖いいねぇ、引き続き仲良くしてやってね〗
「はい」
「(この部屋だっけ)」
「お邪魔しま…」
「?」
「(誰かの声がする)」
〖そうそう、これは一見
この式を使うように思うだろうけど〗
〖ちょっとひねらないと
出来ない問題になってるんだよね〗
〖なるほど〗
〖ではこのパターンはどう対処する?〗
〖そうですね…〗
「(勉強中か?)」
「(普通に邪魔じゃん俺)」
「(今日は帰るか)」
〖…は……なので、…〗
「(計算問題?)」
「(あ、でも…)」
「(この内容って明らかに
小学生がやってることではないよな…?)」
「(俺でも分かんないかもしれない内容…)」
「(もしかしてもう一人の?)」
「……」
「(ちょっと見てみたくはある…)」
「(確か部屋の奥の方の机だから)」
「(少し覗いてもバレないのでは…)」
「……」
「(白衣の…先生?と
椅子に座っている人がいる)」
「(あの子か)」
「……」
「(丁度 見えない位置に先生が立ってて
よく分からないな…)」
「(あ、動いた)」
「?」
「(よく見たら
後ろ姿に見覚えがあるような……)」
「(でもあの子とは別人だよな)」
「(うーん…?)」
〖何してんだ?〗
「うわっ」
「……」
「なんだ…」
〖なんだとはなんだ〗
〖覗きか?〗
〖…あんまり良くないぞ〗
「覗きってわけでは…」
「(いや…覗きか…)」
〖……〗
〖廊下に居ると目立つだろ〗
〖俺のとこにでも来るか?〗
「…行きます」
〖何見てたんだ?〗
「部屋によく来る…子?」
〖なんだそれ〗
「メンテナンス中によく来るんですよ」
「なんも喋んないですけど」
〖ほ~ん〗
「…」
〖気になってるのか?〗
「…」
「別の意味で」
〖別…?〗
〖ま、色々あるよな〗
〖わかるわかる〗
「……」
「俺、気になったんですよ」
〖?〗
「あの部屋に居た子…
2人居るんですけど」
「奥の方に座ってた子が
めっちゃ難しそうな勉強してて」
「手前側の机の子は全然序盤の勉強してて」
「こんなにレベルが離れてたら
普通 部屋分けませんか?」
「同じレベルで固まった方が
いいと思うんですよね…」
「二人同時に教えられてたら
気が散ると思うんですよ」
「特に奥の方の子なんて」
「そんなのは俺の勝手な意見ですけど」
〖2人…〗
〖えーと〗
〖あの部屋に居る子といえば…〗
〖確か、1人じゃなかったか?〗
「1人?」
「机が2つですよ?」
〖俺が知らないだけで
もう1人入ったのかもしれないが…〗
〖(基本、自分の研究だけしか見てないから)〗
〖(他の部屋で何が変わったなんてのは
どうも分からないんだよな…)〗
「今度また あの子が1人の時にでも
話しかけてみます」
{……}
{あれ?}
『?』
『ワイさんは?』
‘え、あれ’
‘何処かへ行っちゃいました…’
『もしかしてエルが戻ってきたのかな』
‘そうかもしれないですね’
“……”
『でもいつもなら
エルの中身だけ変わる感じだったから』
『来た人が急に消えるのはあんまりないかも…』
‘そうですよね…’
〔……〕
〔ワイさんは〕
〔エルの行った所とは
別の場所から来たんじゃないか?〕
『別の場所?』
“……?”
{もしもし、聞こえていますか?}
“…はい”
{あぁよかった!}
{今何故か
場所が元に戻って}
{自室に居る訳なんですが}
“自室?”
‘?’
{私の移動能力の限界でしょうか}
{また試しているんですが
なかなか其方に行くことが出来ないんですよ}
{何故でしょう…}
{不具合が出ましたかね?}
{(無理矢理行った感は否めないし…)}
{ま、少し原因を探ってみます}
“また来られますか?”
{そうですね…}
{とりあえず
其方の現状を知れたので良しとします}
{しばらくは正常に動かなさそうですし}
{大方エヌさんに教えてもらったので
ひとまずは}
{街の住人に
会いたい気持ちは山々なんですが}
{まずこの不具合?をなんとかしないと…}
{まだまだ私には
知っておかないといけないことが
沢山あるみたいです}
{もっと探索を
効率よくしないといけないし…
あとなんだ?うーん…}
{まぁそんなとこで}
{また行けたらお伺いします!}
{それではお元気で!}
{お邪魔しましたー!}
『…』
『A、何か聴こえてる?』
“あぁ、ワイ様からです”
‘ワイさん!?’
“能力の不具合かで
来られなくなっているようです”
『それは大変…』
‘あの’
‘ワイさん今、向こうに居るんですか?’
“そのようですね”
‘だったら逆に
あっちの方に何があるのか
聞いてもらえませんか?’
‘ワイさんが来た所が気になります’
“……”
“聞こえますか?ワイ様”
{……はい、何でしょう?}
“其方の環境を知りたいのですが”
{環境?}
“此方と其方の違いは何かと思いまして”
{うーん、そうですねー…}
{自室には……があって、
それから__の__の__が…}
{ま、これは……なんですけどね}
“…?”
{メイン……___}
{ }
“…ワイ様?”
{……}
“……”
“繋がらなくなりました”
‘……’
『……』
‘これも不具合…ですか?’
“分かりません”
‘行きはどうやって来たんでしょうか’
‘瞬間移動ですかね?’
“おそらく”
“その類いであることは間違いありません”
〔遠くから来た様子だったけどな〕
〔此処が瞬間移動で来れる範囲なのか…
他の能力なのか…〕
『距離が遠すぎるからってこと…?』
『でもワイさんが来る前は
聴こえてたんだよね……』
『あと、
僕達の能力に驚かなかったってことは』
『常日頃、そういうのが周りに溢れてて
慣れてるってことなのかな?』
『ワイさんの居る所って
どんな所なんだろう…』
「「あーやっと帰れた」」
「「正直つまんなかったね、エル?」」
「「何も出来ないのってさ」」
『あっ』
『帰ってきた』
ただいま。
『おかえり!』
『無事だね』
「「キズ1つないよ」」
‘フィンはどうでしたか?’
‘……ふむふむ’
“とにかく人数が多かった様ですね”
『え』
『一人暮らし…!?』
『すごいなあ』
〔……〕
〔(また聞こえない声で会話してるな…)〕
〔(慣れたもんだな、俺も)〕
『そうか…』
『移動したはいいものの』
『何か知りたい事の手掛かりみたいなのは
あんまり無かったってことだね?』
そういうことになる。
『これで6つ、全ての数字を見た訳だけど……』
「「別に何も」」
「「分かる分からないとかの
感じじゃなかったよね?」」
そうだな。
ただの移動でしかない ような気がしてきた。
『僕が考えるに』
『まだやってないことがある』
?
『この街の復元だよ』
街の?街ごと?
物ではなく?
『そう』
『これはエルが帰ってきてから
やろうと思っていたことなんだけど』
『街を戻しちゃえば
手掛かりなんて
ごろごろあると思うんだよ』
『原因もそこにあるはず』
『だって街だよ?』
『直接、根本の原因まで戻せるんだよ?』
街も戻せる対象に入るのか?
『まぁまぁ、もし出来たらってだけだから』
『やってみようよ』
『やるだけの価値はあると思う』
……
わかった。
街を復元しよう。
僕の記憶の手掛かりも
そこにあるかもしれない。
「「(ボクが存在する前の街か)」」
「「(どれくらい前に戻るんだろ…)」」
『復元』
『範囲を街ごとにして…』
『実行』