Adjustment
研究室。
することもなく待機している。
「……」
「……?」
部屋の向こうで何かが動いた。
人が通ったのだろうか?
5
「……」
長いものが揺れる。
それは此方を見ている。
「……」
長い髪の少女が
此方を見ている。
「……」
「…君は?」
〖………〗
少女はじっと此方を見ている。
「…」
「(どうすれば良いんだ)」
「……」
白衣が居る部屋の方を見る。
数人が集まっている。
そこにもう2人白衣が合流して
何か話している。
死角から音がする。
「(メンテナンスって)」
「(病院の検査で何かあったのか?)」
「(どっか悪い所が?)」
「…」
「!」
気付くと少女が隣に座っていた。
「…」
〖……〗
「……」
「君は…」
〖……〗
「此処の…?」
〖……?〗
首を傾げる。
「……」
暫く沈黙の時間が流れる。
「(この時間って一体…)」
〖……〗
少女は何も話さずに
近くに座っている。
扉が開く。
〖あ〗
〖なんか懐かれてるね〗
「え?懐かれてる?」
「俺が?」
〖うん〗
「懐かれてるっていうか」
「なんも喋りませんけど…」
〖そういう子〗
〖基本的にはね〗
〖たまに人格変わるけど〗
「はあ」
白衣が本を持ってきた。
少女に渡す。
〖君のちょっと後に
此処に来た子なんだよ〗
「そうなんですか」
「……」
少女は本を開いて読み始める。
「それだいぶ前ですよね」
〖うん〗
「……」
「知らなかった…」
「(何で今まで気付かなかったんだろう)」
〖まぁ…この子があんまり
部屋の外に出ないからってのと〗
〖君は別の家で暮らしてるから〗
〖うまい具合に
遭遇してなかっただけじゃない?〗
〖してたとしても
気に留めてなかっただろうし〗
「……」
〖とりあえず〗
〖これからは会ったら仲良くしてやって〗
「……」
〖準備できましたー〗
〖はーい〗
〖じゃあこれからやってくから〗
〖雑談でもしててよ〗
〖そんなにかからないとは思うけど〗
「……」
白衣の人は別の部屋に入っていった。
「……」
〖……〗
始まっているのか?
この部屋は何も変わっていない。
この人自身にも何も起こっていない。
「(本当に何もしなくて良いんだ)」
「(機械とか使うのかと思ってたけど)」
「(だったら逆に何をしてるんだ?)」
「(…じゃなくて)」
「(なんでくっついてきてるんだよ)」
「(俺は壁か?)」
「(この短時間で懐くって)」
〖……〗
「(距離感おかしくないか…?)」
「……」
「(今何時…)」
小型の機械を取り出す。
画面には数字が表示されている。
「(どんくらいかかるんだろ)」
「(あ、なんかきてた)」
機械をいじり出す。
〖……〗
少女が覗いてくる。
「……」
〖終わったよー〗
白衣が入ってきた。
「はぁ…」
確かにそれ程 時間はかからなかったが
この人にとっては
長かったのかもしれない。
「……」
「帰って良いですか?」
〖もう遅いか〗
〖そうだね〗
〖また明日も来れる?〗
「…一応空いてますけど」
「まだ何かあるんですか?」
〖あるんですよー〗
〖いい?〗
〖こういうのは
1日で終わるものじゃないんだよ〗
「……」
〖明日1日過ごしてみて〗
〖変化とか異常あったら報告してね〗
「?」
「分かりました…」
〖どう?あの子と何か喋った?〗
「全く」
「…被験者ですか?」
〖そうだよ〗
〖君と同じようなことをされた子〗
「俺と?」
「…小さい頃のことは覚えてないんですけど?」
〖そうだったね〗