Existence
〔よし〕
〔これで全部だな〕
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「「母親を覚えてないってことは」」
「「父親も?」」
いや
確か、エヌの父親は
『覚えてるよ』
『父さんの外見は知らないけど
どんな職業で、どんな人だったかは知ってる』
「「結局どっちも姿知らずか」」
『…』
『僕の親事情はそんなところ』
‘困りましたね…’
『?』
‘あんまり人の事言えないんですが’
‘顔くらいは覚えておきたいですよね’
‘どんな親であれ’
…仮保護者。
‘?’
エヌが博士を仮保護者だと言っていた。
『(覚えてたんだ…)』
「「親居ないんだったらそりゃ」」
「「代わりにだってなるでしょ」」
“エヌ様の母像が一貫しないのであれば”
“博士に聞いてみましょうよ”
‘そうですね‘
‘それが手っ取り早いです’
‘もしかしたら両親のことが
判るかもしれませんし’
博士が帰ってきた。
〔エヌ〕
〔準備が出来た〕
〔ランク上げるぞ〕
『…』
〔?〕
『ランクを上げたら』
『記憶も戻せるのかな?』
〔……〕
〔そんなんは上げてから言え〕
‘博士さん’
〔?〕
‘エヌさんの両親について
何か知ってることってありますか?’
〔え?エヌの親?〕
〔………〕
〔知らねぇな〕
‘…そうですか’
‘(意外とあっさり返ってきた)’
〔どうだ?〕
『うん、上がったみたい』
『普通のアビと違って これは2段階らしい』
‘だとすると今、
いわばレベルMAX状態なんですね’
『そうだね』
『考えようによれば』
『あらゆる物が戻せる状態』
〔(これ上げて良かったのか…?)〕
『大丈夫だよ』
『悪用とかしないから』
〔………〕
〔(ま、お前に限って
そういうのは無いと思うが)〕
『じゃあ、いくよ』
『………』
『(僕の記憶…)』
『(戻れ)』
『……』
『(見たことない景色が頭に浮かんでくる)』
『(研究室?何処だ、家?)』
『(…この人はよく
僕に優しくしてくれているみたいだ)』
『(ご飯の時間?)』
『………』
『(この料理…)』
“何か見えましたか?”
『見えた』
『僕の全く知らないものが』
〖どうだ〗
〖完成はまだ遠いか?〗
〖あ、いや〗
〖問題ありません〗
〖直ぐに追加出来ます〗
〖そうか〗
〖急に悪かったな〗
〖とんでもないです〗
〖ところで〗
〖五感の方は大丈夫でしたか?〗
〖今のところは問題ない〗
〖それは良かった〗
〖…では〗
〖皆、彼は仕事が早い〗
〖え〗
〖もう完成したんですか〗
〖あぁ〗
〖これが言語の能力だ〗
〖はぁー凄いですね〗
〖その人才能あるんじゃないですか?〗
〖早いし、正確だし〗
〖馬鹿ね〗
〖才能ある奴しか此処には居ないのよ〗
〖早速追加します〗
〖…これら揃って
ようやくスタート地点、ってことですね〗
〖あんた意味分からないこと言うのやめて〗
〖え〗
〖………〗
〖…喋れるか?〗
〖……〗
〖只今、言語機能に不具合ございません〗
〖お、おぉ…〗
〖喋れている…〗
〖これで必要なのは全部揃いましたね〗
〖他に発声すべき言語は必要ですか?〗
〖でもなんか…〗
〖言語使用の誤り等があれば訂正して下さい〗
〖やけに機械的……〗
〖(滑舌良…)〗
〖……〗
〖人間って感じじゃないな〗
〖どのようにすれば人間らしさが出ますか〗
〖そうだな…〗
〖もう少しくだけても良いんじゃないか〗
〖砕ける?〗
〖自爆しろと仰っているのですか?〗
〖申し訳ありませんが、
私にそのような事は出来かねます〗
〖(違う)〗
〖あぁ…〗
〖駄目ですねエムさん〗
〖喋れてもまた課題が…〗
〖………〗
〖教育だ〗
〖この人工知能のような子を
教育して柔軟にする〗
〖これは先が長そうだ…〗
〖だね…〗
〖まあ、スタート地点というのは
ここからが本番ってことですからね…〗
〖本当あんた今日
意味分からないことしか言わないね〗
〖それで通せると思ってんの?〗
〖当たりがきついですね…いつにも増して〗
『…僕のお母さんは』
『料理が、…下手だった…?』
〔……〕
『(その子供である僕の料理が
てんで駄目なのも辻褄が合う)』
……
〔……〕
〔それは〕
〔違う〕
『?』
〔エヌの親は〕
〔…居ないんだ〕
『もう居ないのは分かってるよ』
〔そうじゃない〕
〔エヌの親ってのは
初めから居なかったんだよ〕
『………え』
『だって、…』
『父さんのこと』
『おじさんが教えてくれたから』
『知ってるんでしょ?』
〔俺が代わりだから
本当の父親は居るとかそういうんじゃない〕
『でも』
〔とにかく〕
〔居ないものは居ないんだ〕
〔……〕
〔あれは嘘だったと思ってくれ〕
『……』
『意味が分からないよ…』