Volunteer
何処を切り取っても都市だな。
「「そりゃあそうでしょ」」
広さや夜の明るさは
村や町とは比べ物にならない。
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この様子じゃ、此処全域を歩き回る頃には
針が1周してしまうだろう。
歩いていると、裏道に光が見えた。
行き当たりばったりだが、気になったので
光の出処に 誘われるように奥に進み、
少し広い所に出た。
そこには1人の女性が座っていた。
他には誰も居ない。
1人で何をしているんだろうか。
{こんばんは}
声をかけられた。
「…こんばんは」
小さな机。
「こんな所で、一体何を?」
女性は暫くの沈黙の後、
{人の役に立つことを}と言った。
見ると、周りには
僕の知らない道具が幾つも置いてあった。
人の役に立つこととは。
「「(こんな目立たない所に
人が来るのかな)」」
{…迷惑でなければ}
「?」
{貴方の持っている、その四角い物体を
使いやすい形状に加工しましょうか?}
?
四角い物体。
今持っているのはパーツとパズル。
建物に入る前に、
僕…美形の人の服に入れておいたものだ。
だから、普通の人には見えない。
この人は透視を持っているんだろう。
「あの」
{勿論お代は要りません}
{私はあくまでボランティアですから}
「「(金、とらないんだ)」」
「…」
何かしてくれるらしい。
「じゃあ、お願いしてもいいですか」
2つの物体を渡す。
{承りました}
「「(大丈夫なのかな)」」
これには時間がかかるので、
また後で来て下さいと言われた。
針も4時になろうとしていたのもあり、
帰ることにした。
「「(…あの人の名前を聞いてなかったな)」」
建物に近付くと体が重くなる。
しかしまだ自由がきいている。
僕が寝ているからか。
…でも、何故体が重くなるんだろうか?
寝ている間に僕らが動いていたことは
秘密にしなければいけない気がする。
元の場所に戻って、
あたかも寝ていたように振舞っておく。
〖ね、4時だよー〗
「……?」
〖あたし、ちょっと出てくるから〗
〖2度寝すんなよなー〗
「あ、あぁ…」
だるそうに、起き上がる。
「(寝た気がしない)」
「(疲れが取れていないどころか、
上乗せだ…)」
「……」
僕は、白衣に着替えて部屋を出て行く。
今日は15件。とは何の数字なんだ。
そのまま大通りのような
広い渡り廊下を歩く。
その先に、建物があった。
「「(建物の中に建物があるって
どういうことだよ)」」
そこは町のように見える。
〖あっ!研究所の人だ〗
〖なあなあ、今は何の研究してるんだ?〗
僕を見つけて子供が何人か走ってきた。
「…そうだね」
「今の暮らしをもっと円滑に、
更に便利にしていく為の研究だよ」
〖よく分かんないけど、凄いね!〗
「ありがとう」
〖あとさあとさ、もし暇になったらさ〗
「うん」
〖願い事叶えてよ〗
「願い事?」
〖誰かが言ってたんだ〗
〖研究所の人はなんでも出来るからって〗
「…そうか」
「「(無垢だなぁ)」」
「きっと出来ると思うよ」
「私はこれからやることがあってね」
「何かあったら、他の人に言ってくれるかな」
〖うん〗
〖そうなんだ、頑張ってね〗
〖ばいばーい!〗
「……」
軽く手を振り、笑顔で立ち去った。
また長い廊下を歩いていると、
曲がり角で長い髪の女性に会った。
〖あそこ、通ってきたのか?〗
「あぁ」
〖つっきらなくてもいいのだが〗
〖近道があるだろう?〗
〖そんなわざわざ…〗
「運動も兼ねて。気分転換だよ」
〖そうか〗
それだけの会話をして、
僕は奥へ奥へと進んで行った。




