No worries
〖なあ、これって…〗
〖ん?……これも壊すんじゃないか?〗
〖一帯だぞ、まっさらにするんだよ〗
〖…〗
714__ _
「(町人の希望があれば、城下町のようにしても)」
「(それでは拡げる土地の意味があまり…)」
「(出来るものなら全てを使いたいところだ)」
〖エムさん、この辺りは片付きました〗
〖俺達、別の場所で再開しますんで〗
「分かった、私も後で行く」
「(随分広くなったな…)」
〖あっ来てくれたの?〗
「…(また子供か)」
「(今日も来るとは言っていたが)」
〖おねーさん、お仕事?〗
「そうだな」
〖そっか……何のお仕事?〗
「土地を拡げるんだ」
〖…?〗
「今君らが立っている所に、大きな建物が建つんだ」
〖へぇ!〗
〖どのくらい大きいの?〗
「この森ごと、位だ」
〖…それって、もしかして〗
「……?」
〖あ…〗
〖どうしたの〗
〖基地…秘密基地が無い…!〗
〖え…〗
「…」
〖何かの間違いだよ…森だし、道を間違えたんだよ〗
〖いや!確かに此処に目印があるし…〗
〖〖……〗〗
「……」
「すまないが、これから私は仕事に戻る」
〖……ねぇ、おねーさん〗
〖ぼくらの基地、知らない?〗
「…」
「…分からないな」
〖じゃあ、小屋は覚えてるよね〗
「(あったな)」
〖それごと無くなってるんだ〗
「……」
「…!」
「(ま、まさか)」
「(あれはまだ)」
「……」
〖知らない?〗
「し、知らない…(私には関係ない)」
〖……〗
「仲間が呼んでいる、…行かなければならない」
〖……〗
〖……〗
〖ひどい〗
〖お、エムさん〗
〖今日中にあっち側の奴らと
合流できるかもしれませ…〗
「……」
〖どうしました?〗
「…いや、続けてくれ」
「私は、一旦戻る」
「話し合いをしに…(気分が悪い…)」
〖あ、分かりました!〗
〖此方はなんとかやっておきます!〗
〖心配はいらないですよ〗
「…じゃあ」
「(私は、酷い事をしたのか)」
「(…ただ、言われた事を
私なりにやっているだけだ)」
「(それの何が悪い…)」
「(…こんなことで時間を無駄にしたくはない)」
「(考えないようにしよう)」
「(だが、無断で壊した小屋の持ち主がいれば、
どう説明をするかだけ……)」
「(聞いて回ろう)」
〖お姉さん、お姉さん〗
〖こんなもの、見たことあるかい?〗
〖これは世界に十個しかない物でね…〗
「聞きたいことがある」
〖!はい、何でしょう〗
〖この価値だったら本当は高いのだけど、特別に〗
「…森の方にある、小屋の持ち主は居るだろうか」
〖?…小屋。うーん、居たかねぇ〗
〖…ねぇ、あんた!森に小屋あったっけねぇ?〗
〖え、……知らないなぁ〗
〖あ、そこの人。森の小屋って分かる?〗
〖見たこともないな〗
〖……〗
〖分からないね、他を当たってみな〗
「…そうか」
〖じゃあこれ、買うかい?〗
「何故そうなる」
〖店の者に何か聞くんだったら、
何か買っていくのが礼儀ってもんじゃないのかい?〗
〖あたしらより、それは分かってるはずだよ〗
「欲しくないものを買わなければいけないのか」
〖欲しくないって…まだあるよ、
お姉さんが気に入りそうな物〗
「今、店に用は無い」
「他を当たる」
〖……〗
〖(前に買わせとけば良かったか)〗
〖(なんだ、今日は。気が強くなって)〗
〖(商売何年やってると思ってる)〗
〖(この町の人間にはお見通しさ)〗
〖(すーぐに一つや二つ買わせてしまうよ)〗
「あの森の小屋は知っているか」
〖いんや?それより見てほしいものが〗
「貴方、森にある小屋の持ち主を知らないか」
〖分からねぇな、この事聞き回ってるのか?〗
〖疲れるだろ、ちょっと寄っていきな〗
「心配いらない、手間取らせたな」
〖……〗
「(どいつもこいつも)」
「……」
「(大通りの端から端まで聞いてみたが
誰も知らなかった)」
「(これは、持ち主は居ないという事だよな)」
「……」
「(明日も何の心配なく取り壊しができる)」