Ordinary human
“そういえば”
“エヌ様、透聴の不具合はどうなりましたか?”
「………」
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『あー…うーん、おかしいところは直ったような?』
『でも、これって不具合じゃなくて
能力の出来る上限だったりして』
“確か、私の透聴より性能が悪いようでしたが”
『じゃあそれだね…そこまでだ』
「(変わった話をするのだな)」
『やっぱり僕の場合、
遠く離れると人の声は聞こえなくなるよ』
『時々聴こえるのは偶然かな』
『(それが人間としての普通、通常な訳だけど)』
『(普通な人が居ないと
どうにもカーストを感じる…)』
「(離れれば聞こえない。
それ以前に気にかけた事など無い)」
「(おかしな人だ)」
“《ですが》”
“《折角このような手段を
手にされているのですから、有効に使えそうですよ》”
『……』
『うん』
『(一方通行にしか伝えられないのか…)』
〖……なんて、それは自分の心持ちの問題ですよね〗
「…」
〖ささ、体調を崩さないよう
早めの休息をおすすめしますよ〗
「はい、そうします…」
また、眠れもしない部屋に行くことになった。
〖道、案内しましょうか?〗
「今度は一人で行きます」
〖はーい〗
別れて歩き出す。
だんだん建物に慣れてきた。
「「これ、エムに害って出るのかな」」
害?
「「ボクら、寝ないし」」
「「疲弊もあるようだし」」
「「あんまり休んでないことになるんじゃない?」」
そうか。なら、エルに戻るべきか。
「「エルになるには、外に出ないといけない」」
「「でも、人の目をかいくぐるのは
二回目になると厳しいかも」」
エムが寝ていると思われる間、
部屋で過ごしていようか。
〖……〗
〖入れ〗
〖…失礼します〗
〖お前は、これからどうすべきだと思う?〗
〖…そうですね、安定して続けるか〗
〖または規模を拡大して
より細かい調整が出来るようにする〗
〖の、二択ではないでしょうか〗
〖なるほど〗
〖今は一人だが、データを取るのには多い方が良い〗
〖参考にさせて貰おう〗
〖はい〗
〖用は以上だ〗
〖…失礼します〗
〖……〗
〖(近い内に、土地を広げるか)〗
〖(町から人を集めて続行か)〗
〖(落ち着いたら、エムにも聞いておこう)〗
暇だ。
「「まぁ」」
やりたいことがやれないのは暇だ。
「「……」」
「「暇じゃない時は?」」
何か夢中になることをしているんじゃないか。
「「時間ってさ、長いね」」
?
「「パズルは」」
「「直ぐに移動しているんだろうから
一瞬で済むけど」」
「「来てからが長いなんて初めて知ったよ」」
「「本当はずっと長い時間の中で
人が活動したりして」」
「「今は寝てるんだな…」」
……
眠れないというのは、暇だな。
「「……うん」」
眠れる人、が、普通の人だったとしたら
僕は普通、ではない。ということになる。
そうだ、エヌ以外は普通ではなかった。
だが、一緒に居た限り
エヌが寝ている所は見たことがない。




