Make all your pain happy
「(おかしい。
これは、こんなのはおかしい)」
「(いや、どう捉えたら正解かよく考えて…)」
「(見回りに行って確かめよう。
きっとあの人達はまだ)」
〖エスさん、おめでとう〗
〖おめでとう〗
〖……〗
〖幸せになってねぇ〗
〖俺達のエス様が……〗
「(皆どうかしたの?
それとも、全員給料増しで?)」
「(いや、理由がわからない)」
「(これじゃあ痛めつけるより、祝福だ)」
「(私の感覚が狂ってしまったのか?)」
「(これを私が嫌がる事が目的なのか?)」
614__ _
「(そ、そうだあの集団を訪ねれば)」
〖う…うぐっ……〗
〖エス様…すいませんでした…〗
〖これからはどうかお幸せに…〗
〖本当にごめんなさい……〗
「(泣いている。見たことがなかった)」
「(涙とは縁の無い集団だと思っていたが)」
「そこまでしてくれるんだね…」
〖はい…〗
〖泣いても泣き足りませんよぉぉぉ〗
「どれだけ貰ったの?」
〖…え?〗
「皆、どのくらい貰っているの?」
〖…何言ってるんですか、0ですよ〗
「(それはそれは、まぁケチって)」
「(タダでこれだけの演技をさせる程、
長の権力は強かったっけ?)」
〖金なんて、貰いたくありません〗
「……」
〖差し出されても、受け取りません〗
「……」
「(もう金はやらんが
頑張ってくれとか言われたのか?)」
〖それよりも先に、今までの失態をお許し下さい〗
「……」
「(さっきから、何……?)」
「(夢、夢だよね)」
「(2回変な所に行ったから、私が、
あるいは此処がおかしくなったんだよね?)」
「(そうに違いない)」
「(ほ、ほら、
何処かで読んだ本にも書いてあった)」
〖これからは、以前のような
あたたかな町になることでしょう…〗
〖俺ら、やっと戻ると思うと、嬉しくて…っ…〗
〖……っ…〗
〖どうか、
今までの苦痛が 全て幸福になりますように……〗
「(話にならない)」
「(これで確信した。此処がおかしくなっている)」
〖エスさーーん!〗
「(また来た。
こいつを中心に変になっているんだ)」
「貴方、何様のつもり?」
〖?〗
「これだけ町を狂わせておいて、満足かしら」
〖狂…?〗
「今までの町の努力を踏みにじらないで!!」
〖……エスさん…?〗
「(信じられない)」
「全部、嘘ですよね」
「お父様」
〖エスの気持ちは分かる〗
「……」
〖経緯を話そう〗
〖覚えていること、覚えていなさそうなこと
ひっくるめて話す〗
〖エスが集団に暴力を受けそうになった日、
ケイという商人が止めに入ったそうだ〗
「(そこからか。記憶がない)」
〖此方としては、エスの言う通りの発注だったが
彼方は本当にエスが巻き込まれていると
勘違いしてしまった〗
「(だから部外者は厄介…)」
〖それで、エスに
失礼な事をしてしまったお詫びとして
家まで謝りに来てくれた〗
「(失礼な事って何)」
〖エスを助けてくれた事が分かると、
なんて頼もしいんだと思った〗
「(感想は要らない)」
〖そのとても勇気があり、危険を恐れず
人を守るという人の鏡のような行動に感心して
褒美をやる事にした〗
「(大袈裟な)」
「(町の財産の無駄使いをするな)」
〖何が欲しいかと聞くと〗
「(金だろう。
商人だと言ってたし、人一倍必要だ)」
〖娘を下さいと言った〗
「」
〖勿論構わない、いや、
どうかずっと幸せにしてやってくれと思った〗
「……」
〖エスは、町の為と言って
これまで数々の苦労、痛み、敗北感、虚無感を
一人で背負い、希望を失って
「正常」を自ら塗り替えてしまっていた〗
〖父親として、とても大きな罪悪感を〗
〖町の長として、極々小さな達成感を〗
〖ずっと、この制度は間違っていると感じていた〗
〖町民だってそうだった。
偽りの空間で偽りの態度を
エスに向けているのが苦しそうだった〗
〖だが、エスは止めようとせず、
もっと強化していくべきだと言ってきた〗
〖どうしようもないとも思えたが、
娘が望むなら仕方がないと思った〗
〖そんな時に救いを差しのべるかのように、
ケイは現れ〗
「(何の説明…これ)」
〖このような事、
集団の暴力の事等を無くして欲しいと言ったんだ〗
〖感動した〗
〖はっきり悪いことは悪いと言えるのが〗
〖心から〗
〖だから、待たせたな、エス〗
〖もう、酷い仕打ちは受けなくていい〗
「何それ」
「(誰もがおかしくなっている)」
「(まるで分からない、何もかも)」
「そうしたら、何度も言うけど」
〖それは問題ない。エスが結婚すると同時に
エスに向けられていたものは
全て罪人に向けられることが分かっている〗
「今まで」
〖弱かったのに?それはエスが相手だったからだ〗
〖もう、この町は警備が甘くない〗
〖エスから皆、学んだんだ〗
〖これからは、きちんと処罰もするし、処刑もする〗
〖町は一つになったんだ〗
〖これは、エスとケイのおかげだと思っている〗
〖だから、何の心配も要らないんだ。エス〗
「………」