Old shop
〖ちなみに、名を聞いても?〗
「「(それ、最重要項目でしょ…
普通名乗らない奴を認めるかな)」」
〖はい、ケイです〗
〖ほう、ケイか。じゃあ娘を宜しくな〗
〖はい!〗
「「(焦らしのない家族になりそう)」」
610__ _
僕は
ケイという名に聞き覚えがある。
商人という役職の男だ。
だが、さすがに同一人物ではないよな。
〖で、彼女が娘のエスだ〗
〖エスさんですね、任せて下さい!〗
〖頼もしいな~〗
ちらっと顔を見る。
「……」
〖?〗
本人だな。
気付かなかったが、本人だ。
〖仕事は何を?〗
〖旅をしながら商人やってます〗
〖(商人……)〗
〖すると、定期的に移り住むなんてことは〗
〖あっいや!それは相談して決めます〗
〖おぉ…尊重性が豊かだなぁ(?)〗
「「(鏡で見たときは真顔だったけど
今は笑ってるし)」」
「「(ケイも老けたなぁ)」」
「「(ってどの立場から……)」」
〖では、今日はこれで失礼します〗
〖また後日お伺いします〗
〖あぁ〗
戸が閉まる。
〖(丁寧な青年だったな)〗
〖(エスには幸せになってもらわないと…)〗
〖(これから充分あたたかい家庭を…
おっと忘れていた)〗
二人だけ残された。
〖準備やら何やらで
これから忙しくなるぞ……エス!〗
嬉しそうだ。
〖まずは家を見つけないとだな。
あれ(野外系家畜パラダイス)を知られたら
どうなるか分からない。
二人暮らしの…もっと大きい方がいいか〗
自覚あるんだな。
「「(じゃあどうして
今までそうしてこなかった)」」
「「(父親、天然か?)」」
〖(考えはエスからも聞いた方がいいな)〗
〖エスは何処に住みたい?〗
「……」
〖急だったか、すまない〗
〖…〗
〖考える前に、これから住む場所を
現地へ行って決めようではないか〗
「「(まだ除去できてない急があるよ)」」
〖…心配するな。町の長は
権力、権利、……(思いつかない)が凄いのだ〗
〖なので即決でも問題ないのだ〗
「「(威張らせておこう)」」
〖手続きは後でも出来るから、何処でもいいぞ〗
長、親の理想像だな(?)
〖ただし、人が住んでいない所に限るが……〗
そこは理解できている。
説明は不要だ。
「「(うん…)」」
「「(望まないルームシェアは誰もが御免だよ)」」
出来るだけ、エス本人が
馴染めるような所にした方がいいよな。
「「(一番良いのは、ここでエスになってもらって
決めてもらうことだよね…)」」
「「(でも、相当小屋から離れてるから
決めるしかないのか)」」
最善策は、
エスが決める事だよな。
「「……」」
「「(もし、エスに決めてもらうとして)」」
「「(今小屋に行ったら
そこに住むのか、よし、いいぞの流れ
分かってるからなぁ)」」
「「(しょうがないか)」」
〖何処がいい?〗
「……」
〖候補のいくつかを案内しよう〗
〖ほら、見てくれ
最近出来た建物だ。まだ誰も住んでいないらしい〗
「……」
〖綺麗な所だぞ〗
〖あ、エス
ここも新築の一軒家だ。
今の二人には丁度いいだろう〗
「……」
〖広すぎず、狭すぎず、
お互いのプライベートも守れるぞ〗
「「(なんで物件に詳しいんだ)」」
〖ここは……(いいか)〗
此処は、だいぶ古びているが、
僕がケイの時に来た店だ。
「「(そう聞くと、そうかも)」」
「「(飲食店だったっけ、今はやってないな)」」
「「(思い出があるといえば
あるような。ケイが)」」
「「(僕らが街に戻った後、
エスに話をするんだろうなと思うと)」」
「此処がいいです」
〖え、此処?〗
「はい」
〖(まさかこんな年数のある所を選ぶとは……)〗
〖ううむ、(反対する理由もないか)
エスの考えを尊重しよう〗
「「(無事に住む場所は確保された)」」
〖あとはゆっくりしていてくれ〗
「はい」
〖まだ此方でやる事があるから、続きは後で話そう〗
「……」
一段落ついたか。
「「そうだね」」
ここで役目を終了した方が まだ混乱は少ないよな。
「「家が決まった時点で
大問題かもしれないけどね」」
「「多分、エスは家畜小屋に帰ると思う」」
毎日帰っているからな。
「「だからさ、ちょっと目印作ってから帰ろう」」
いい発案だ。
「「(前段階で誉めてくれるんだね)」」