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Nothing
街から人が消えたのは
いつからだったのだろう
僕は毎日のように
ここを見渡している
感覚は
何年も前からあるもの
意識は
数時間前に始まったばかりのもの
今日はどんなことをして遊ぼうか
何を探し求めて
どこで終わりを迎えようか
朝も夜も無くなった
見慣れた街路を歩くだけの
僕の時間は
それ以外には使えない
000__ _
一番最初に見たもの
街。
そこには沢山の人と動物がいた。
賑やかな暮らし。
豊富にあった食料。
僕は 家族皆に愛されていた。
街中は幸せに溢れていた。
…本当にそうだったのか。
家族って何だろう 幸せってどんなもの
記憶が曖昧で
あの時見た光景が
本物だったのか 確信が持てない。
目を開ける
有り余るほどの 寂しげな建物は
ただでさえ信じがたいことを
ねじ伏せ 否定しているように思える。
…ほとんど覚えていないことは
思い出そうとすると
もっと忘れてしまう気がして
また非現実な現実に戻る。
考える。
僕は独りだ。
でも、何も感じたことはない。
僕は始めから何かを失ったまま
ここまで生きてきたのかもしれない。
それを、探せば
その何か__ さえ分かれば
今までの記憶が
僕の存在意義が
少しでも。