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8 村

前回までのあらすじ

・ミーナとパーティを組んで

・ルベロス退治の依頼を受けて

・目的地の村に到着した

森を抜けた先には見渡す限りの草原が広がっており、直ぐそばには村があった。

予想していた通り、小さな田舎の村だった。数十軒の家といくつかの畑がある程度。

草原には羊が放されており、どうやら牧羊が行われているようだった。

その草原の一部と村の周りは柵で囲われていた。


馬車から降りると一人の男――三十代くらいで、畑仕事をしているからなのか、服の上からでも筋肉質であることが分かる――が近づいてくる。


「すいません、依頼を受けてギルドからやってきた冒険者ですが」


こちらから声をかける。


「おぉ。冒険者様でしたか、ありがとうございます。村長の家に案内しましょう」


「お願いします」


村では畑仕事していた人が手を止めてこちらを見ている。

大人から子供まで、男も女も、老若男女がこちらを見ている。

冒険者が珍しいのだろうか。


「ねぇ、すっごい見られてない?」


「こんな田舎の村だし、冒険者が珍しいんでしょう。ほら、堂々と歩きなさい」


「やっぱそうなのか」


それでも村人の目が気になったが、ミーナに言われたように堂々と歩くことにした。


「こちらが村長が家になります」


そういって男がドアを開けると、目の前に一人の老人が立っていた。整えられていない白髪と白髭、皺だらけの顔が、かなり高齢であることを表しいている。恐らく村長だろう。

村長はこぼれるような笑顔で俺たちを迎えた。


「村長、例の件で来てくださった冒険者様です」


「これはこれは冒険者様。この度は依頼を受けてくださりありがとうございます。どうぞ、中へお入りください」


村長がそう言って俺たちを家の中に案内しようとする。

しかし、それをミーナが呼び止める。


「いえ、いいわ!私たち急いでるの。早く仕事をして帰りたいのよ。だから今すぐに洞窟に案内してちょうだい」


「おい、折角持て成してくれようとしているのにそれは……。すいません、村長さん」


と、恐る恐る村長を見ると、彼の目はじっとミーナを見つめていた。その目に込められた感情は読み取れない。


「大丈夫ですよ。分かりました。今から村の者に案内しましょう」


怒ってはないのか……?ならいいが。

と、その時家の中から声がした。


「その役は私がやりましょう。村長は下がっておいてください」


「おぉ、キーランさん。よろしくお願いします」


村長と入れ替わりに家の中から若い男が出てきた。

その男は銀髪で、黒い瞳と切れ目のせいかクールでミステリアスな印象を与えられる。


「私はこの村で村長補佐をしております、キーラン・ハートと申します。この度はご依頼を受けて下さりありがとうございます。村の者全員が感謝しております」


そう言って男は頭を下げる。


「私はミーナよ。挨拶はいいから早く案内を」


「ハルと申します。おい、ミーナ、そんな焦ってると怪我するぞ」


俺は知っている。横暴だったり、自己中心的な人や一人で突っ走る人から死んでいくという『お決まり』を。

だから、ミーナに注意する。即席の仲間とはいえ、死んだりされると心が痛む。


「お急ぎのようですね。洞窟はここから歩いて15分ほどです。御案内しましょう」


そう言って、キーランは森の方へと歩き出した。

俺たち二人はキーランの三歩後ろを着いて歩く。


このキーランという人、森へ入るというのに何も持っていない。

村にルベロが出るということは、森にも魔物はいるはずだ。それなら槍や剣の一本くらい装備していてもおかしくない。むしろ何も持っていない方がおかしい。それとも武術を嗜んでいて、肉体が武器ですよとでも言うのだろうか。お世辞にもそんな身体には見えないが。


森は木々が生い茂っており、同じような光景が続く。


「よく道を覚えているわね。迷わないの?」


ミーナが先頭を歩くキーランに尋ねる。


「目印をつけてるんですよ。ほらこれ、これを辿っていけば洞窟にたどり着けます」


そういって、木の幹に半周ほど刻まれた傷を指さす。その傷は俺たちの進行方向と平行につけられており、逆に言えば、傷と平行に歩いていけば村か洞窟に辿り着けるという仕組みだ。


「ところで、お二人は魔法をお使いになられるのですか?」


今度はキーランが俺たちに尋ねてくる。


「私は火と水の最上級魔法を使えるわ!」


ミーナは胸を張りながら、俺にしたのと同じように自分の魔法を自慢をする。

それを聞いてキーランは瞠目する。


「二属性の最上級魔法を扱えるのですか……。そんな方が、ご依頼を受けてくださるとは」


キーランはとても驚いているようだ。ミーナはその反応が嬉しかったのか、へへへと喜びを頬に浮かべている。

なるほど、これが普通の反応なのか。勉強になるなぁ。


「それで、ハル様も魔法をお使いになられるのですか?」と、キーラン。


「ハルは転生者なのよ!しかもその能力が凄くて――」


「ミーナ!?」


ミーナが俺の能力を言いそうになるのを阻止する。

こいつ!さっき釘を指したばかりなのに直ぐに自慢しようとする!


俺の言いたいことを察したのかミーナは口を膨らませて黙る。

そして、キーランはというと驚くわけでもなく、俺のことをじっと見ていた。

な、なんだその反応。何か言ってくれよ。


「あ、あのー……」と、恐る恐る声をかける。


「すいません。まさか転生者だとは思わなくて、驚きのあまり固まってしまいました」


そう言って、キーランはハハハと笑った。


それからは特に何も話すことなく黙々と歩いた。


会話なく歩き始めて五分か十分といったところで洞窟の前に着いた。


「ここが、例の洞窟です。ルベロスの討伐、よろしくお願いします。それでは、くれぐれもお気をつけて」


それだけ言うと、キーランは足早に村へと戻っていった。

洞窟が怖いのだろうか。


……。


なんだ。何か変な感じがする。

何かが起きそうな感じがする。


「よし!ハル!行きましょう!」


ミーナは俺の不安をよそに、洞窟へと足を進めていた。

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