リレー小説③ 成仏致しませ★美少女幽霊 風香ちゃん お次はニムルさん。……頑張って☆
リレー小説三作目です!
その一とその二は下にURL貼っときますので是非!
一作目 赤城 きいろ様
http://ncode.syosetu.com/n4442ee/
二作目 兎狼狼様
http://ncode.syosetu.com/n4968ee/
「さて……と」
ただでさえ迷ってた上に、踵を返して元来た道だと思ってる方へと進んだら、更にズブズブと迷子の深みへ嵌っていくのは自明の理だった。
「どうしよ……」
道もわからなければ、ここが何処かも分からない。分かるのはかなりの距離を歩いてきたということくらいだ。ていうか、なんか童謡であったよなこんなこんな歌。何を聞いても分からないちょっとオツムがパーの仔猫ちゃんの歌。
「って、そんな事はどうでもいいんだ」
解決策を考えねばならない。どうにかして風香ちゃんともう一度合流する方法を編み出すんだ。
私は、ウロウロと歩き回った疲労のせいで絞りカスみたいな状態になった脳みそを更に絞り上げた。
「風香ちゃんは幽霊で、私以外には見えてないみたいだから『この辺でこんな美少女見かけませんでしたか?』なんで聞き込み出来ないし、やったとしても『ただ白昼堂々と現れたレズの変態ストーカー』にしか見えないだろうし……」
さらに絞る。
「スマホで連絡とろうにも彼女幽霊だから携帯さえ無い始末だし……あ、そうだ。私にはスマホがあるじゃん!」
急に大声をあげた私の方を何人かが怪訝な目で見てくるが、ここは人間砂漠の東京、すぐに何事もなかったかのように去っていく。
「そうだよ、まだ私には相棒たる文明の利器が残されている!」
私はすぐに地図アプリを立ち上げ、現在位置を確認する。
「うっわー……二駅分くらい歩いてるよ……」
私は自分の歩いた距離に軽く引いた。
「さて、自分の場所が分かったところで振り出しに戻りますか」
大体、友人と逸れて連絡がつかない場合は、最初の待ち合わせ場所や私たちが逸れた場所まで戻ればいいのだ。方向音痴の私は経験則でそれを知っていた。
私は軽く伸びをして気合を入れ、最初に降りた駅の方へと足を向けた。
駅の近くまで行くと、駅入り口付近でふわふわと浮いている人影を見つけた。風香ちゃんだ。
「みっけ」
私は風香ちゃんの方を見ながら手を振りつつそちらへと向かっていった。
ある程度の距離まで近づくと、向こうも私の存在に気が付いたのか、素早く空中から私の目の前まで降りてきた。
「あ!流さん!どこのコンビニまで行ってたんですか!?この辺のどこのコンビニにもいなかったから心配したんですよ!?」
降りてくるなり物凄い剣幕の風香ちゃん。まあ当然か。
「いやー、ごめんごめん。最初はコンビニ探して歩いてたんだけど、迷っちゃって。おまけに迷った先で気になる物を見ちゃってね。近くでみようと思ってフラフラと歩いてたらさらに迷っちゃって、二駅向こうまで行ってた」
私が軽く事情を説明すると、風香ちゃんはなぜか哀れみの表情でこちらを見てきた。
「……あの、流さんのスマホってバッテリー切れだったりします?」
そして皮肉を言われた。
「ううん?充電はまだ半分くらい残ってるけど?」
「じゃあただ流さんが充電切れなだけですか。そうですか」
「充電切れって……他に言い方が……あっ」
私はここで周囲から向けられるヤク中を見る目に気がつく。それもそうだ、風香ちゃんは幽霊だから他の人からすると私は虚空に向けて語りかけている奴にしか見えないのだ。そんな奴ヤバイ奴?としか言いようがない。全く、風香ちゃんにメール機能で話せばいいとアドバイスを受けたのはついさっきの事だというのに。
「えへへ……じゃあそういうことで!」
私は駆け出した。どうしようもなく居た堪れない空気になっていたのだ、私の元いた場所の周囲が。どこか遠い所へ、私はさらにスピードを一段上げた。
五分程駆けると、東京のくせに全然人気のない公園があったので、そこのベンチに腰を下ろす。
私がベンチで呼吸を整えていると、風香ちゃんがふわふわと漂ってきた。そして、また降りてくるなりすごい剣幕で怒られた。
「全く流さんは何考えて生きてるんですか!私、電車の中でメールの機能を使ってと言いましたよね!?見ました?あの周囲の『うわあ……』って感じの目!そもそも流さんは……」
「はい、そこまで。反省してます、これ以上はこの炉が折れるのでやめてください。自分より年下の女の子に説教されて私は死にそうなんです」
辺りに人がいないのをいいことに、私は声を出して風香ちゃんのお説教を止めた。
「で、何か分かった?風香ちゃん。自分自身について」
「露骨に話題を逸らしましたね……まあ、いいです。続きはお家でします」
どうやら私はお説教を止めたのではなく延期したらしい。無くならないのかよ、ちくせう。
私が軽く落ち込んでいる間に、風香ちゃんのお話が始まった。
「私の元いた家には、何もありませんでした。家財道具一式は元々備え付けの家に住んでいたのでそれは残っていたのですが……私の父は転勤が多かったので、それでどこかへ行ってしまったのかも知れません」
「つまり……手がかりは無し、分かったことはもう元の家に家族はいないって事だけ?」
「そうなりますね。ところで流さんは先程駅で気になる物を見たと言ってましたけど、具体的にはなんなんですか?」
ああ、それね、と私は相槌を打って話し始める。
「なんかやたらゴージャスな花束を持った人、ちょっと遠くてよく分かんなかったんだけど年齢は多分四十絡みだと思う。で、その人がなんか高級そうな黒塗りの車から降りてきて病院に入っていったんだよ。確か名前は……」
私はそこで一旦目を瞑り、必死に看板に書かれていた緑色の文字を思い出す。
「確か、継萩総合病院だったかなあ……なんか、少し物珍しい光景が目に留まったから気になっただけなんだけどね。確か、夜中に病院巡って手がかりを探すんでしょ?自分が生霊か否かを確かめる。良かったらそこの病院見てみなよ」
「つぎはぎ、そうごうびょういん……って、あそこですか!?なんか入り口が重厚な感じで常に救急車が一、二台停まってるあそこですか!?」
いきなり風香ちゃんは興奮し始めた。
「救急車が停まってたかどうかなんて覚えてないけど……うん、重厚な感じの入り口ではあったよ。それに、そんな珍しい名前の病院、全国に二つと無いと思うんだけど……」
「ですね」
ちなみに、と、風香ちゃんは言葉を継ぐ。
「そこの病院、私の生前のかかりつけでした。さらに先程のゴージャスな花束を持った目を引く男性……今晩はまず最初に継萩総合病院に行くことにします」
風香ちゃんは何か思い当たる節があるのか、彼女の目には決意と期待がないまぜになったような色が浮かべられていた。
では次は術平 ニムルさん、あなたの番です!
……後は……頼…………ん…だ(三塁側へ悪送球)