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『最初のふくしゅう』

 それから数日たったある日。


 滝藤が学校の見回り番である日の夕方。


 滝藤は非常にムシャクシャしていた。

 理由としては単純明快、未だに弘明が高校をやめない、といのもそうだが、学校をやめろと言った日から弘明に影で笑われているように感じて仕方が無いのだ。


 何回も八つ当たりしたものの、それに対する弘明の反応はいつもと変わらず、不気味な程に黙ったまま。


 何かおかしなことでも考えてはいないだろうか……。


 彼のストレスは溜まっていくばかりであった。

 そんな調子で見回りをしていた。


 この時の彼の予感は当たっていた。

 しかし、彼は、その厄災が自分に降り注ぐことになるなど考えてもいなかったのである。



「なんだこれは……」


 見回りの終盤のことである。

 先ほどとは一変、滝藤の顔が真っ青になっていた。

 自分の教室まで帰ってきたのだが、なんと自分の教室の黒板にびっしりと、大小様々な大きさの写真が貼られていたのだ。


 さらに悪いことに、それらが表すものは、自分のしてきた罪。

 浮気、暴力、覗きなど1枚でもバレればタダでは済まされないような瞬間の写真ばかりである。


 それが黒板いっぱいに。


 何故バレた、いつどこで撮られた、と自分に問いかけ続け、頬をつねるも現実は変わらない。


 そう。


 そこに貼ってある写真には誰が見てもわかるほど露骨に、滝藤が写っていたのだ。


「写真、気に入ってもらえました?」


 後ろから愉快そうな声が聞こえた。


 滝藤が後ろを振り返ると、そこにはいつも真っ先に帰るはずの弘明の姿があった。

 窓近くのロッカーの上で携帯をいじりながら紛れもなく笑っている。


「どうですか?上手に取れてますよね?ブレたりするのでこれだけの写真集めて加工するのに苦労しましたよ」


弘明の声はいつになく楽しそうである。


「弘明……この写真はお前が全部やったのか」

「はい」

「この……ッ!!」


 この弘明の軽い返事で、ついに滝藤はキレた。

が、弘明の持っているスマートフォンによってまた冷静に戻されてしまった。

 戻されざるを得なかったのだ。

 そこには有名SNSサイトの投稿画面と一枚の写真が写っていた。


「はいストップー。

 この写真うちの学校の生徒と先生が手繋いでる写真ですよね。

 インターネットに投稿してもいいんですか?」


 小馬鹿にした言い方で弘明は続ける。


「面倒くさいので単刀直入にいいます。

 僕に土下座してください。僕を侮蔑し続けてきたことにね。

 そしたら、今この教室にある写真はばらしませんよ。」

「くっ……、誰がお前なんかに!」

「じゃあこの写真ばらまくしかないですね。」


彼のスマホに手をかけた。


「ま、待った!わかったわかった!土下座……する…から…!」


 滝藤は苦し紛れに言った。

 すると弘明は満面の笑みで続ける。


「仕方ないですね、じゃあここで今すぐ土下座してくださいねー」

「くっ……!」


 渾身の力で持って滝藤は弘明を睨みつける。


 滝藤は人生で土下座など絶対にしないと思っていた。

 それほどまでに彼のプライドと自尊心は高かった。

 だからいろんな女を手玉にとってきた。


 しかし彼がこれから潰されるのは、彼のプライドどころではない、人生の光すら失うことがら。


「ささ、早くしてくださいよ。」


 滝藤はこんな状況でなければ怒りに身を任せて弘明を殴っていた。ボコボコになるまで殴っていたであろう。


 そんな気持ちを抑えて弘明に土下座をした。


 それを見た弘明はパシャパシャとスマホで写真を撮り、高らかに笑った。


 その後、


「では教室の写真とか自由にしていいですよ。あと写真とかもネットとかにあげないんで。じゃ、お先でーす」


 と言い残し、早々と教室から去っていった。

 滝藤の静かな怒りはピークに達した。


 まずはこの写真を全て燃やさないと。

 そしてあの弘明には今よりももっと酷い状態にしてやってあげるのだ。

 この俺が明日から弘明君もっとをいい方向に持っていってあげないとな。

 滝藤は静かに思った。


 写真を全て始末した後、滝藤は職員室に戻っていった。

 するといつも定時で帰る校長が、珍しく職員室に残っていた。

 なにやら深刻な顔をしている。


「どうしたんです?校長先生」


と、滝藤は尋ねてみた。


「ああ、滝藤君か。君に尋ねたいことがあるんだが」

「私に?何をですか?」


 校長は1枚の写真を取り出した。

 滝藤は心臓を掴まれたような気がした。

 その写真は見覚えがあった。それを見た滝藤はまた青ざめることとなった。


「この写真が匿名で送られてきたんだよ。僕のところにね。どういうことか説明、してもらえるかな?」


校長の手には、この学校の制服を着た女子生徒と、今にもホテルに入ろうとしている滝藤がいた。



「俺は、『今この教室にある写真』としか言ってないからな」


 ニヒルな笑みを浮かべた弘明は自室にて、おもむろにノートを取り出した。


「まずは1人」


 弘明のノートに書いてある沢山の名前のうちの滝藤の名前に横線が引っ張られた。


~滝藤、削除~

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