当たる事のなかった光
これは僕がまだあの人に出会う前の微かな記憶。
「いつか一緒に旅行に行きたいねだって、お前まだそんなに付き合って長くないくせに考えすぎだよ。」
やめてくれ.....。
「お前やっぱり重いって、なんでこんなのと付き合えあてんの?凄いね~彼女さんも。」
本当にやめてくれ.....。
「マジ笑えるわ、彼女さんもそう思うっしょ?」
「そうかもね、これはちょっと...。」
なんで君もそんな目で僕を見るんだ...。
「ヤベェやつだよなぁ、こいつと一緒にいて大丈夫なの?」
「もうちょっと考えて発言しろよ、だからいつまでたっても童貞なんだよ。」
「そうだ童貞。」
「ちょっと...やめなよ...。」
彼女は止めながらも、僕の方を見て苦笑していた。
ああ、そうか、僕は知らない間に彼女を困らせていたのか。最低な男だな...。
僕はそこからの記憶がほとんど無かった。
気が付いた頃には自分の暗い部屋の布団にこもっていた。
僕は自分を心底恨んだ。
僕の言葉が彼女の負担になっていることに気づいてしまったから。
結局、僕は彼女と別れてしまった。
それから一年がたつのは早く感じた気がする。
僕は彼女と別れて以来、他人を自分の言葉で困らせないようにと、前より人を避けて距離を置くようにして生活していた。
そんな僕の日の当たる事のなかった生活は、あの日を境に一変することになる。