表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

~在り方とこれから~


 光に包まれた貴方は何事もなかった、訳ではない。敵の爪がかすった左頬、そこが攻撃を受ける前と同じ綺麗な状態となっていた。些細なものとはいえ、攻撃から回復出来たのなら本来は喜ばしい事なのだが、その前に起きたことに関してが、今は問題となっている。


 貴方は村長の家に招かれていた。クルダは側にいない、本来の目的である食料の運搬を行う為だ。例の襲撃によるトラブルで、3人が村に戻ったのが夕刻。塔の中での夜の時間帯は、昼間はいない敵がうろつくこともあり、危険性が高くなる。一緒に居られても邪魔ということだった。


 出されたお茶を飲みながら、村長と向かい合わせに座っている。家の作りは、マリーの家と似たり寄ったりに貴方は見える。違うと言えるのは、本棚が多いことだろうか。


 向かいに座っている村長は、ローブを纏い、戦闘時に使っていた杖をテーブルに置いている。暗がりではっきり見えなかった顔つきだが、家の明かりに照らされて見えるのは、細目に温厚そうな笑みをたたえ、立派な顎髭を蓄えている。白髪交じりの髪や深く刻まれた皺を見れば、高齢であろうと貴方は想像した


「しかし…、不思議じゃのう。敵が光になり、お主を襲ったように見えたんじゃが」


 まじまじと、興味深そうな様子で見てくる村長に、貴方はいたたまれなさを感じている。なぜそんなことが起きたのかもわからないのに、関心を持たれる。以前にそういうことがあったのか、もちろん思い出せないが、少なくともいい気分ではない。


「そうじゃな、こう、光に包まれた前後で、例えばそう、倦怠感、高揚感、何でもよい。変わったところはないかの?」


 貴方はしばらくの間、自分の状態を考えて、変わりはないと答えた。襲ってきた敵、というよりあの場では2人の戦いを見ているのが精いっぱいで、自分の状態は気に出来る余裕はなかった。だから、どちらかと言えばわからないのが、正しいだろう。


「そうか…。ワシも王様までとは言わんが、ここに来て長い。その中で起きたこともないこともあってのう。ここにある書物にも該当するようなものもないし、興味深いことじゃ」


 そう聞いて、貴方は自分を知ることを含めて、珍しい事なのかと尋ねた。村長はその答えを用意する為、しばし思案するよう首を傾げた後、珍しくもあり、珍しくもない。と答えた。


 疑問を浮かべる貴方に、村長は簡単に説明する。今回起きた事象については類を見ない。しかし、類をないことが当然のように起きるのが、この場所だいうことだ。貴方はなぜだかその言葉に納得して、そのままの流れで、貴方は村長の素性を聞く。


「ワシか。名前は覚えておったが、もはやここでのワシは村長で長年通っているからの。その方が落ち着く。覚えておるのは、森の奥で生活していたことぐらいじゃな。恐らく、世捨て人のたぐいだったのじゃろうて」


 自分のことにも関わらず、他人事のように言えるのは、ここにいる人間らしい事なのかもしれない。自分という器はあって、その中身を確認できない。時と場合によっては、中身すらわからない貴方のような存在もいる。その部分で、わずかとはいえ自分を覚えている村長が、貴方は羨ましかった。


 貴方がそう思っているのを知ってか知らずか、村長は今後の為にとこの塔の内部について説明を始める。塔の内部は常に変化していて、以前訪れた場所が違う場所になるのはザラということだ。その場合について思いつく疑問を、貴方は口にした。


「この村の位置も変わるかか、答えはワシ等がいる内は変わらんというものじゃな」


 変化が起きない条件は、その場所に人間がいること。人間がいる周囲に変化は起こらない、というのを逆手に取りこの塔の内部で村として領地を確保している。可能であれば塔の内部に、人を満遍なく配置すれば変化も起きず階層ごと制圧することもできるのではないか、という発想もできる。


 しかし、そうはうまくいかなかった。先ほど触れられているが、塔内部の夜間はかなりの危険性が伴う。昼間はうろつかない敵が夜にはうろつくことや、塔の規模を考えると今いる人間だけでは足りない。塔の外壁に近づいた者すらいないほどに、あまりにもこの中は広い。


「さて、夜も更ける。私の後ろ奥にある部屋が客人用の部屋だ。そこでゆっくり休むとよい」


慣れない戦いに疲れていた貴方は、その言葉に甘える。今後がどうなっていくかの不安を抱きながら、貴方はとりあえず目だけを閉じた。

起きる事象に。


歪はない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ