~未知に対する人のやり方~
宝探しの結果はクルダの様子を見る限り悪くはないようだった。拳銃と呼ばれるものの他に、書物が数冊と銀製と思われる短剣が1本。後は貴方には用途不明の者が多数。とりあえず、彼女が必要になるものと言うなら、それに間違いはない。
「さて、戻るわよ」
意気揚々とした足取りで、彼女が塔の出入り口の方向へ歩き出す。貴方も、それに従って後ろに付いていった。日は傾いていて、そろそろ夕方になるかならないかといった具合だ。戻ればちょうどいいぐらいの夕食時に帰れるだろう。
話を聞いていると、町の人間達にとってはこの場所は恐怖の対象なのは間違いなかった。入塔者がある日そこから帰ってこなくなる場所、それが親しい者だったならばと考えた時、クルダがそうならないことを願うしかなかった。
少なくとも、その恐ろしさの片鱗を知らない貴方にとって、今目の前に映る光景は穏やかな草原でしかない。最初に入塔した時に襲ってきた魔物がいたことだけが、貴方が脅威と認識している唯一のことだ。
その目の前の草原を見ていると、ぼんやりとここで過ごしたいという気持ちが沸いてきた。けれど、その気持ちを押し込める。街の人間は言っていた、遅かれ早かれ、塔に入る者はいずれ魅せられる。その塔そのものに。だから、入塔者はその内帰ってこないのだと。
もちろん、その中には魔物との戦闘によって命を落とした入塔者も確認されている。魅了されたというのも、塔の内情を知らない町を運営する人間が言っていたことだ。未知を理解しようとして、余計な恐怖を付加させているとも言える。だが、忘れた者である貴方にとっては、それでも貴重な情報ではあった。
それが余計な妄想だとしても、それは結局、町の人間が塔に対しての抱いている感情なのだと、理解できることだからだ。
「ヴェル、あんたまたボーッとしてたでしょ」
呆れた様子でいつの間にか離れていた彼女が貴方の元に近づいてくる。そして、左手を差し出してきた。
「見てなかったらこれだから、手でもつないでおかないと心配で仕方ないわよ」
ほら早くと催促されて、貴方はその手を握り返す。貴方は、まるで姉が弟を引率しているようだなと思い、そう思うことに疑問を感じる。だがそれでも、貴方を強く引き寄せる手の力によって、どこかへ四散していった。
貴方はその手から伝わる温もりに、安らぎを覚えている。人の手を握る機会がそう多いかは知らなくとも、クルダの手の温もりは当然として、その肌触りも心地よかった。奇妙なことかもしれないが、この手を握るということに好みがあるなら、貴方にとって彼女の手が一番だと思える。
クルダと塔を登る為組むようになってから、そこまでの時間が経った訳ではない。なのに、貴方は彼女の存在がなくてはならなくなっている。彼女もそうなのだろうかという疑問はある。
塔から出られる階段が見えてきて、日はもう夕方としてそこに存在していた。手は離れ、安らぎが消える。疑問は、そのまま残る。
「街中までずっと手を繋いでたら、ラクルが何いうかわかんないでしょ」
気まずそうに言う彼女の表情の意図は、貴方には何となくわかるような気がした。
いずれ交わるか、とわに平行か




