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~無知ゆえの探求心と過失~


 久しぶりの塔に、貴方は自信と緊張が織り交じった感覚を覚えた。クルダから教えてもらった剣技は、それこそ護身程度のもの。それでも戦い方を知っている、その事実だけでも初めに塔へ入った時とは気分は違うものだった。


「いーい? 調子に乗ってあたしから離れるんじゃないわよ!」


 貴方の様子を知ってか知らずか、母親、というより世話好きで口うるさい姉のような態度で忠告する。心配してくれた事に貴方が礼を言うと、やっぱりヴェルは変わっているとこぼしながらそっぽを向かれた。照れ隠しなのはわかったものの、貴方は少し寂しく感じた。


 今いる場所は塔の1階層に広がる草原。そこに眠る宝物探し、それが今回の目的と言ったところだ。


 宝物、それはこの塔の中そのものが緩やかに変化することで起きる現象なのだが、今までなかったものがある日突然そこに転がっているのだ。それこそ、いろいろなものが。


 資源がない浮島の住人にとって、それらで確保できるものはまさしく宝物。特に塔の攻略に不可欠な装備品を作るための鉱物類や、それこそ武具や道具も重宝される。


 だからこそのデメリットが、この間遭遇したあの異形の存在だ。そういった物が出現するのであれば、それらが存在する理由も説明がつくというのが、浮島に暮らす人々の意見だ。


「さて、探すわよ」


 回収した宝物は、持ってきた入塔者に一部得る権利がある。そのこともあって、クルダが張り切っていた。この宝物探しは許可制で、勝手にしてはいけない。宝物を得るにはあえて塔内部の変化を促す必要があり、人がいないところでそれは起こるもの。つまり、誰かが勝手に宝物を探す為に闇雲に塔内を探索すると、定期的に得られなくなってしまうことになる。


 1階層はもうすでに浮島の人々が行き来する程度に管理が進んでいるところでもあり、そのこともあって許可がないにも関わらず宝物探しをするのはご法度となっている。


 とはいえ、それは人々が行き来できる階層に限っての話であり、上の階層になればほとんど関係ない話ではある。なぜなら自由に行き来できる訳ではないからだ。


 貴方は彼女から離れないように、周囲を探す。今いるところは、それこそ平原で、右手奥に林らしき一帯がある。足元は踝程度まで雑草が伸び、時折花が顔を出している。道具類なら気づくこともできても、重要と言われた鉱物類を見つけられるか不安だった貴方だったが、少なくともこの場所なら判断はつきそうな気がした。


 ただ、2人では広大と言える場所を当てもなく地面を見ながら歩くというのは、なかなか骨が折れるもので、徐々に首が痛くなってくる。気分を変えようと塔内の空を見上げながら身体を伸ばすと、カチャというこの場所ではしない音が足元からした。


 慌てて再度地面を見ると、そこには黒い物体が転がっていた。手にとってよく確認すると、L字型になっていて、指を引っ掛けるところがある。先端らしき場所には穴が開いている。


「ば…! それこっちに渡しなさい!」


 貴方に気づいたクルダは、本当に慌てた様子で持っているものを渡せと右手を出してくる。


「その引くところ、絶対に指をかけちゃだめだからね!」


 鬼気迫る様子に、貴方は慎重に手に取ったその道具を手渡す。受け取ってから、あまり慣れない様子でその道具から何かを抜き出す。抜き出された部分には、金属の部品がいくつか詰まっているように貴方は見える。


「これ、拳銃って言うらしいわ。弓矢よりも強力な遠距離武器。この中にあるのが弾で、入った状態でここの場所を引くと、ここの穴から飛び出して攻撃できるの。下手したら、あんた、自殺するところだったわよ」


 知らないっていうのはやっぱり恐ろしいわねと、ホッとした彼女の表情に、貴方もいろいろな意味でホッとしてから、少しだけゾッとしたのだった。

ありとあらゆるものがあるなら


ありとあらゆるものは知らない

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