First kiss
校舎の裏。夕暮れ時だ。
サッカー部の歓声が聞こえる。
ボールを蹴ったあとの、弧を描く様が目に浮かぶ。
愛加里は目をつぶる。
……なぜこんなにもドキドキするのだろう。
夕焼けは頬を照らす。温かくて熱い。
蒼汰の優しい息遣いが近づいてくる。
制服のスカートがそよ風ではためく。
ボックスプリーツのヒダが足にまとわりついた。
初めてのキス。
誰にも見られてない。二人だけの世界だ。
「可愛い……。」
唇が離れると、蒼汰は愛加里を真っ直ぐ見つめながら、そっと呟いた。
愛加里の頬が更に熱くなる。
グラウンドの歓声が一段と高くなった。
涙がひとしずく落ちそうになったのは、なぜだろう。