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とある引きこもりの卒業

「ハッハッハ我はもう自由だ! 我を拒むものなど誰もいない!」


 人間の言う魔物の森、魔族で言う魔王城までの警備区域。

 そんな場所で俺は大声でそう叫んだ。あ、勿論ポーズは決めてる。


「はぁ、こんな人に人間界の調査なんて出来るのでしょうか? ……リリーは心配です」

「ハッハッハ、何を言うリリーよそれでも貴様は我が妹か?」

「――? いえ、私は隊長の妹ではありませんが?」

「おっと、失言。なあに気にするな、報告はちゃんとするさ」


 俺は失言を誤魔化すように後付けで話を曲げた。

 いけないいけない、いつも思っていたことが中二病効果で声に出ちゃったよ。


「はあ、それならいいんですけど……」


 多分今まで引きこもっていた俺がいきなり外に出るから心配なんだろう。

 本当に妹みたいな存在だな。まるで出来損ないの兄を心配するみたいだ。


「まあまあ、な! 大丈夫さ」

「まあいいですけど」


 納得したのかしていないのか微妙な感じでこの話は終わった。


 幾ら魔族の間で警備区域と言っても知性の薄い魔物は殆んどが人型の俺とリリーを魔族か人間かは区別できない。それゆえにこうして森を歩いていると魔物は襲ってくる。――らしいが、俺の魔力のでかさと禍々しさを感知能力が低い魔物でさえも感じ取り今では気配すら感じられない。


 怯えられてるなー、俺。

 襲われないことはいいことなのだが、これはこれで寂しいものがある。


「んで、取り敢えず村じゃなくてこのまま大きな町にでも行こうと思っているんだけど」

「な、なんかいつもの隊長じゃないです。いつもなら近くの村で休もう! とか、もう歩きたくないからおんぶとか言ってきそうなのに」

「俺を何だと思っているの!?」

「引きこもり」


 ごもっとも! だが、それはもう『元』がつくぞリリー君。

 それに引きこもっていたのは人を襲いたくないという理由だったし、部屋から出るとバラキェール等がうるさいから出たくなかっただけだ。まあ、引きこもっても定期的にバラキェールは俺のところに来ていたけどな。

 あの顔は憎たらしすぎだろ! 勇者にならぶイケメンぶりじゃないか? 全く腹立たしい。なんで俺の周りにはイケメンしか居ないんだ!?

 あれか? 女の子がするっていう、格下の子を側に置いて自分を輝かせるっていうアレなのか!? それはたちが悪すぎですよ幹部バラキェールさん!


 と、まあそんな感じで森を抜けることができた。


「うおー、空が青いぞリリー!」

「何を当たり前のことを……」


 う、うるさい。何話したらいいのか分からなかったから言っただけだもん!


「それで、町までは空を飛ぶんですか?」


 リリーは翼を広げて訪ねてきた。


「いやいや、それは道中に目立つ恐れがあるからなしだ」

「では歩きですね。でも、目立つというなら私たちの角や翼は目立ちますね」

「フッフッ、気づいたかリリー。それはもう対処法を練ってある」

「……随分と準備がよろしいんですね」


 今までの俺とは思えない、もしかしたらこの人は病気なのか? といった感じの顔だなこれは。

 ま、否定はしない! 中二病という病にかかっているからな。


「ああ、この翼はだな。……こうして……(ブチッ)こうするんだ!」


 もいだ翼をリリーに見せる。

 その行為にリリーは若干引いていた。……若干かなこれ。


「な、なるほど。マゾヒストだったんですね隊長は」

「ち、違うから!? これ対処法だから!?」

「い、いえ大丈夫ですよ。……私は気にしてませんから」

「いやいや! なら一歩後ろに引くなよ! カモンベイベー!」


 それから説得と対処法の説明をするのに結構時間を使った。

 勿論、翼同様角もへし折ってやった。チートで無痛なのかと思ったがそうでもないらし。激痛が走ってめっちゃ痛かったよ。


「リリーは翼も角も小さいから目立たないよ。翼は服で隠せるし、角も髪をかき分けない限りバレないよ」

「な、なるほど。流石に私はもぐという行為はしたくなかったので……」


 だろうな。俺だって最初はしたくなかったけどまあ慣れたからな。


 転生したてのころを思い出す。

 あの時はこの翼とかがかっこよく見えたり、気持ち悪く見えたりしてもいだり回復魔法で戻したりしていたなあ。懐かしい思い出だ。


 んで、結局夜になってやっと村についた。

 ふひー疲れたぜ。

 ん? 町まで行くんじゃなかったのかって? そんなこと気にするもんじゃないぜ。

 さて、この世界で人と話すのは勇者パーティーくらいのものだったから楽しみだ。

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