とある引きこもりの一日 その3
「フハハッハ! 我は無敵なーり」
「フハハッハ! 淫魔なーり」
もう暇すぎて、テンションがおかしいです。
だれかーだれかー、エマージェンシーコール!!
ってなわけで、今日も一日頑張りましょう。
「あ、因みに私淫魔ですけど未経験なんですよ」
「……いや、聞いてねえよ」
「は、初めてはそ、その大切な人に捧げたいなあと思って」
「だから聞いてねえよ」
なに妹的存在から未経験報告貰わにゃならんのだ。お、おい、そんなキラキラした目でこっち見んな! 勘違いしてしまうだろ!
リリーの目が眩しすぎる。もじもじしながら期待したような目で見てくる。これあれか? 良い人紹介してくださいみたいな流れなのか? 俺今引き隠りだから分からねえよ。
「あー、なんだ、そのお、良い人が見つかるといいな」
「え? もう居ますけど?」
ええー居んのかよー、マジかー。別に狙ってたわけじゃないけどショックー。
べ、別に狙ってなんかいないんだからね!
まあ、リリーは可愛いし人気が有りそうって言えばありそうだけどね。
俺の世話して何時デートとかしているのだろうか? 気になる所だ。
「なあ、リリーが好きな人ってどんな人なんだ?」
「そうですねー、怠け屋さんで直ぐにわがままを言ったりかっこつけたりする人ですかね」
「ええー、それのどこがいいの? 全然ダメじゃなかー」
「ふふふ、でも強いんですよ? それにやるときはやるんです」
それなら、うーん、いいのか?
正直聞く限りではダメな人間にしか思えない。おっと、人間じゃなかったな、失敬。魔族だ。
そのダメな魔族を特定するためには俺は必然的に部屋を出なければならない。
………………うん、やめよう。
外には出たいが、魔王城内をウロウロするのはめんどくさい。
色々と理由はあるが、まあ部下じゃないリリーの同期とかが俺をからかってくるのだ。正直それだけでも疲れるっていうのに。魔王室に近づくと、魔王から王位継承者はおぬじゃ! と、うるさい。
よって、この件はなかったものとする。
はい、しゅーりょー。
「本当に強いんですよ。えへへ」
っく、滅茶苦茶気になるではないか!?
もう、いっそ聞いちゃうか? そうするか、そうだな、それがいい!
半ば緊張しながら俺はリリーに好きな人の名前を聞くことにした。
「リリーお前の好きな人の名前教えてくれ!」
「ええ! 嫌ですよ!」
「たのむ! そこを何とか!」
兄として把握しておきたいんだ!
俺は土下座する思い出で、膝をついて両手とおデコを地面に着けた。
「頼むぅうううう!」
「うぅ、誰にも言いません?」
「ああ、誰にも言わない! 約束だ!」
「絶対ですよ?」
「ああ、絶対だ!」
ようやく、ようやく聞ける。
俺は心臓をバクバクさせながら耳を澄ませた。
「私の好きな人は、よ――「また来たぞ、魔族! 今度こそ――「うるせーよ! ゴラァ!!」」」
昨日の倍くらいの強さで勇者を殴てやった。
勇者は鼻を潰され後方へぶっ飛ぶ、壁を一枚、二枚、三枚、四枚、一枚足らない、という冗談は置いておいて、かなりエグイ距離に飛ばせれていった。
慈悲は無いと思えよ勇者! さっきのはお前が悪いのだから……って、もうブルドックどころじゃない!?
俺は焦りながら、他のメンバーを(ナイトメアー)でおやすみさせ急いで遠距離回復魔法を使う。なんで近づかないかって? しれたこと、我が動きたくないからさ! あと、なかなかにグロいから近くで見たくなかった。
「よし、これで心置きなく聞ける。さあ! リリー教えてくれ!」
「すみません! やっぱり恥ずかしくて言えません! それじゃあ、勇者パーティーを村に運んできます!」
そう言うとリリーはそそくさとロープで勇者達を纏めて逃げるように外に出ていった。
クッソー、許すまじかな勇者よ。
今度(明日)会ったら、どうなるか覚えておけ。
必ず貴様を地獄へ叩き落としてやろうぞ!
あ、今俺すっげー悪魔っぽくね?