転生魔族の人狩りいこうぜ!
少なくとも三十人は待機していことは把握してある。あとは連中をフルボッコにするだけ、一狩りしてくるぜ!
俺は闇魔法『魂を食らう大鎌』を作り両手で握る。こんな大層な名前だが実際は意識をかるだけのなんともない魔法だ。更に言うなら発動者が握りながらじゃないと効果がでないといういわくつき。
「ハハ、聞けば聞くほどめんどくさい魔法だよな」
それでもこの魔法を気に入っているのは名前通りの闇魔力で形成された大鎌が出てくるからだ。カッコいいんだぞ、この刃のしなり具合いといったらなんとも。
そうこう考えているうちに森を抜けた。まず目に入った連中三人を大鎌を大振りに構えて横薙する。魔力で生成されたそれは体を通り抜け意識だけをかった。
「三人撃破! ふっ、これでは簡単に終わってしまいそうだな。だがまあ、この我が蹂躙する! これもまた良きかな!」
大声を上げた俺に気づいた連中の仲間がこちらに向かってくる。
「なんともまあ悲しい奴らよ、己自らこの我に命(意識をかるだけです)を捧げることになるとはな!」
すかさず上段に構えた大鎌を振り落としその勢いで縦に回転しもう一度違う相手に鎌を振り落とす。バタバタと倒れていく仲間を見た連中は足がすくみ後退し始める。
「フハハハハ、我を恐れているのか? この『魂を食らう大鎌』を目にして帰れるとでも?」
「ヒッ!」
誰の声かわからないがこれを相図に連中は逃げ始めた。
だが、俺は連中を狩る、狩る、狩る、狩る、もはや一狩りではない人狩りだが。討伐ではなく捕獲に専念しているので勘弁して欲しい。
バッタバッタと倒れていく野郎どもを横目で見ながら次の野郎を(意識を)狩る。
人は殺さない主義だ。が、意識を狩るだけなら目覚めそうだ。
と、気づけばもう既に全員がノックアウトになっていた。
「まったく根性がない。気合いで意識を保ってみせろよ」
そう言いつつも、俺の魔法の効果は絶大すぎる事に反省をする。
だって魔王も寝ちゃう程の魔法だよ? これ反則でしょ!
「よし、あの子を迎えに行くとするか」
真っ暗な夜に、真っ暗な森、そんな中一人で待つのは心細いだろう。リリーも置いてきてしまったし。
……リリーにはなんて説明しようか、下手な事を言ったら殺されるかもしれんな、この体は死にはしないが。
「お、終わりましたの?」
急いで走った俺を見てですわ少女は問いかけてくる。
相変わらず手で押さえつけられているその胸はむにゅっと押しつぶされていた。
だからそのポーズは反則ですよ? と言いたくとも言えるわけもなく喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「ええ、終わりましたよ」
「そ、そうですの。ふう」
緊張が解けたのか、胸にあった手はぶらりと垂れる。それと共にお胸の方もぷるんと……は、ならなかった、非常に残念だ。
「たいちょーう、どこにいるんですかー」
「お、ちょうど来たか。ここだリリー!」
はぐれたリリーが丁度現れた。
いや、マジ俺の妹! 何処でも一緒だぜ!
「って! その女は誰ですか! ま、まさ、まさか隊長の、彼女さんだったり……」
「おいおい、そんなわけなかろうが」
「そ、そうですわ! た、確かにこの方は私の勇者様ではありますがまだそういった関係では……」
「「まだ!?」」
その発言に俺とリリーは驚き、リリーは食ってかかる。
「ほら! やっぱり、隊長はたらしだ! 今しがた会ったばかりの女性をはべらかすなんて! ええ、分かってました。分かっていましたとも。魔王さ――んん――!?」
魔王というワードに咄嗟に反応した俺はリリーの口を手で塞ぐ。魔王なんて禁句に等しい、そんな言葉を使ってしまうほど取り乱しているリリーはいったいどうしてしまったのだ。思春期か、思春期なのか?
しかし、俺は小声でリリーに注意する。
「お前、魔王とかいっちゃあかんだろう!」
「んん――、ぷっはー、そ、そうでした。リリーうっかりです」
「うむ、今後気をつけるがよい」
「えへへへー」
その流れでついリリーの頭を撫でてしまった。が、まあこれで機嫌が直るなら安いものだろう。
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし。お二人はどういったご関係で?」
「それは兄妹――もとい、冒険者パーティーのパーティーメンバーです」
人間界上の設定ではこれが無難だろう。
でもリリーよ、なぜいじける? 機嫌直しておくれやーい。
「そうですよね、分かっていましたよ。もういいですよ、今度濃密魔法をかけてやりますから。ええ、そうですね。先ずは既成事実を……ふふふふふふ」
なんかリリーがどんどん暗く腐っていっているような気がする。というより濃密魔法って危険な臭いしかしないよ?
「と、取り敢えず森の外の連中も倒したことだし。俺たちが取っている町の宿に移ろう」
話はそこからだ。
さあって、ですわお嬢様よ根ほり葉ほり聞いちゃうぞ?