転生魔族の冒険者稼業 その2
「くっそー、これどういうことなんだよおお」
場所は薬草が生えていると言われている森。
その少し入った辺りで俺は『薬草採取』クエストの需要さを垣間見た気がした。
「同じような植物ばっかじゃん」
そう、俺たちが今探している薬草は殆んど雑草に近く、最初は大量に生えているからラッキーと思ったりもしたが実際にギルドカードを見てみると。
『達成率 10%』
って、表示されたんだ。
あの時はリリーと俺の時間が止まったね、確実に。
それから薬草と雑草との違いをギルドカードで見てみた。
なんでも薬草は葉の裏側に赤い点々があるようでそれがある程度均等なのが『薬草』なのだそうだ。
仕方がないから、今持っている物を仕分けすると。
背負い籠にあんなに入っていた植物が、今では手のひらに乗る程度。
……これ無理なんじゃね?
初級クエストの中でも特に嫌われているこの『薬草採取』
そりゃあ嫌われるわな……だって薬草と判断する基準が厳しすぎんだから。
そして現在。
俺たちは一つでもクエストをクリアすべく腰を常に下ろした状態で血眼になって探していた。
もう腰が痛い! ボクこの仕事嫌だァア、誰か変わってよぉお。
モンスターの一匹でも遭遇すれば気分転換になったかもしれないが、生憎と俺の莫大な魔力で生き物は近寄りすらしない。
ほんと、俺自然の生き物に嫌われてんなあ、とほほ。
日がもう地平線に接しようとした頃、ようやく一つのクエストが。
『達成率 100%』
と、表示された。
これもひとえにリリーが無心となって、職人技で目利きしたからだ。
マジでやばかったよ、俺の工程が 探す→見つける→確認する→籠or捨てる。だとしたら、リリーは『探す』と『確認する』の工程が無いいいんだよ。
やばくないですか? しかも全部薬草と判断される基準を満たしているというのがもう上司なのに頭が上がりませぬよ。
とまあ、そんな感じで今日の所はお開きとなるはずだったんだがこの森に入って初めて生き物の反応が見えた。
耳に神経を注ぎ込み把握する。
先頭に一人と、後ろから五人、かあ。
「はぁっは……はっ」と先頭の息の荒さからするとこれは追われていると把握できた。
空はもう星が輝き始め、辺りは真っ暗となっている。
魔物はにも昼間活動する奴と、夜行性の奴が居る。
強さとかは関係なく大抵の場合、夜行性の方が気性が荒いり
「これは助けたほうがよさそうだな」
と冷静に呟く。
ああ、俺は冷静さ、超クール。
「……隊長、今ものすごく嬉しそうですね」
「おっと」
どうやら顔に出ていたみたいだ、危ない危ない。
……この件前にもやらなかった?
まあ、そんなことより、今回は自然発生イベントなわけだ。
逃すとか論外だろ?
それに勇者以外の人間とも戦ってみたいしね。
「よし、そうと決まれば行動あるのみだぜ!」
俺は風よりも早く、現場に向かった。
草を掻き分け走る。
近い!
そう思ったその時――
目の前の草むらから少女が姿を現した。
金髪にドレス姿、ドレスはピンク色でフリルが付いている。
しかし、ドレスにもその可愛い顔も土が付いており、顔には玉のような汗を浮かべていた。
だがそれは後回し、俺はその後ろに居る連中に意識を集中させた。
まだ草むらで俺の姿は見えないはずだ。
一人目が姿を現す。
俺は地を思いっ切し蹴り、男の懐に潜り込む。
「んな! ――ごっふ!?」
俺の存在を確認したその時には既に溝をひじ打ちされている状態だった男はその場でうずくまる。
他の四人もできれば同じ手を使いたかったんだがそうもいかなかった。
しかしこんな暗がりだ。人間にとっては視界が悪いだろう。
魔族の視力で四人の位置を把握する。
右に二人、真正面に一人、最後の一人は左、か。
先ず一番距離が近い右の二人を脳裏にショックを与え片付ける。
「うがっ!」
「がはっ!」
「ど、どうした!」
先程まで真正面にいた男が異変に気づいたようで、腰に下げていたナイフを構える。
そろそろ視界が馴染む頃か、なら。
無詠唱の『シャットアウト・アイ』を使う。
「んな!?」
慣れてきたはずの視界が真っ暗になり焦り始める、追って二人。
すかさず手刀で後頭部を打つ。
ドサドサっと、二人が崩れ落ちる音がする。
「――へ?」
少女はこんなところに人がいたことに驚き、どうなっているのかという表情でこちらを見てくる。
このシチュエーションはまるで俺が異世界転生の主人公みたいだな。
「もう大丈夫、君を助けに来た」
そう言いながら俺は少女に手を差し伸べた。




