転生魔族の冒険者稼業 その1
よくよく考えると、俺のチートの中に語源解析魔法があるのを忘れていた。
これは所謂、猫型ロボットのあのこんにゃくと同じ効果があり、自身以外にも他人にも魔法をかければ効果は発揮される。
いやぁ、魔法チートは結構あるから忘れてたよ。
「す、凄いです! ちゃんと文字が読めます!」
リリーは町の看板をずっと読み回っている。
ほんと図書館の時間マジで無駄だったね。……いや、俺は一ついい収穫があったかな?
「さて、今度こそクエストを受けるぞ!」
「了解です!」
冒険者ギルドは今日も今日とて騒がしいことこのうえなかった。
初日のようにギャハハハハと笑う声、美味しそうな食べ物の臭い。
コイツら何時働いてんだ? と、本気で思ってしまう程である。
入ってから一番左の壁に巨大なコルクボードが掛けられておりそこに依頼用紙がピンで押されていた。
コルクボードはいくつかに分かれていて、その枠ごとに難易度が別れている。
俺たちはまだ新米なので一番左の初級クエストだ。
えっとなになに、『薬草採取』に『薬草採取』、そしてそして『薬草採集』に『薬草採集』っと。
「薬草ってそんなに需要があるんでしょうか?」
あほらしいと静かに思った俺の隣でリリーは苦笑いしながら訪ねてくる。
それは俺が聞きたいわ!
とはいえ、薬草なんてそこらで取れそうなイメージだ。それがなんこんなにも同じクエストがあるのか。
「まあ、クエストが受けれれば問題ないか」
極論的にお金が入れば問題ないのだから、理由を考えちゃダメだよな、うん。
俺は受注可能なのか調べるため『薬草採取』の中から報酬がいいのを二つ剥ぎ取ってカウンターへともっていく。
確か二つまでなら大丈夫って言っていたはずだ。
「すみません。これの二つをお願いします」
「かしこまりました」
受付の女性は変わらずの営業スマイルでの対応でテキパキと仕事をこなす。
「では、ギルドカードをこのプレートにかざしてください」
そう言って、取り出したプレートに俺とリリーはスマ――ギルドカードをかざす。
すると、ギルドカードの『現在受けているクエスト』が更新され。
『薬草採取 達成率0』
『薬草採取 達成率0』
と表示された。
おっ、結構異世界と元の世界が混じっていて面白いじゃん。
そんなことを思い、俺はギルドカードをポケットにしまう。
「このクエストは期限が共に三日間となります。それ以降ですと未達成となり報酬はお渡しできませんのでお気をつください」
「わかりました。では」
「いってらっしゃいませ」
ギルドを出た俺たちは、薬草が生えているという森へ向かう。
スマ――ギルドカードの機能は実に便利で、過去に同じようなクエストを他者がクリアしているとその情報が『現在受けているクエスト』と一緒に登録されるようになる。
それは薬草の形に、森のどの辺りなのかなどもわかるようになっていた。
多分この『薬草採取』は最も多くの回数をこなされてきたクエストだから詳細がよりくわしいのだろう。
全く、これを作った人マジ天才!
ゲームがあったら神と崇めちゃう!
と、そんなことを考えていたら森の入口に到着していた。
一見普通の森だし、ギルドカードで確認する限り普通だ。
「さて、それじゃあ。お仕事を開始しますか」
「それ隊長が言うと違和感が……」
失礼すぎるでしょ。
いや、否定はしないけど……